タイヤメーカー、ピレリによる「ピレリカレンダー 2026」が公開された。チェコ・プラハで行われた発表会を小川フミオがレポートする。
多士済済
ボッテガ・ヴェネタの「香りのイントレチャート」をテーマにした新フレグランスコレクション
いま、カレンダーのニーズってどのぐらいあるんだろう。毎年、アイドルとかのカレンダーは出ているし、町場のお店でも美しい写真を使ったカレンダーが並ぶから、好きなひとは少なくないんだろう。
なかでも白眉は、ピレリが手がける、いわゆる「ピレリ・カレンダー」だ。ひとことで言うと、アートブックのような仕上がり。著名なファッション写真家と、第一線の俳優やモデルを起用している。
ピレリカレンダーの2026年版が、2025年11月14日に発表された。いつも各界の著名人を招待して、おおがかりな舞台装置をしつらえるのもピレリカレンダーの特徴で、今回はプラハの「市民会館」で開催された。
これって、英語だとMuncipal Houseの直訳で、日本の市民会館のイメージとはだいぶ違う。20世紀初頭に建てられた壮麗な建築。内部はアールヌーボー様式で、天井部分にはアルフォンス・ミュシャの美しい絵が使われていたりする。
ピレリがゲストを招待したのは、建物の核といえるスメタナホール。ご存知のように『わが祖国』の作者で、なかでも「ヴルタヴァ」を耳にしたことがない、ってひとはいないんじゃないだろうか。
日本だと「モルダウ」で知られているが、私が、現地で「この川ってモルダウだよね」と言ったとき、プラハのひとに「は?」と聞き返された。あれはドイツ語で、地元ではヴルタヴァでないと通じないのだ。
今回で52回めの発行となるピレリ・カレンダー。選ばれた写真家はノルウェイのソルベ・スンズボー(Sølve Sundsbø)。私はこのひとが2010年にザ・ニューヨーク・タイムズのために撮ってエミー賞を獲得した「14 Actors Acting」などとても好きだ。
カレンダー全体のテーマは「エレメンツ」。ご存知のとおり、この言葉は通常、火、土、風、水の4大要素を意味していて、物事を構成する基本要素とされる。西欧では、星座とともに、人間の性格の分析に用いたりしている。
「人間と自然のつながりをあらわすのがコンセプト」だったと、スンズボーは、少数のメディアを集めてのインタビューで解説。11人のモデルが4つの要素のどれかを当てはめて表現される。
たとえば、チェコ出身のスーパーモデルで、女優としても活躍するエヴァ・ヘルツィゴヴァは「水」。水の流れをよりよく感じさせるコスチュームをまとって、水中で撮影されている。
「自然っていうテーマで撮影することになったとき、もっとも最小限の単位に還元したら、と考えてエレメンツというコンセプトを思いつきました。いっぽうで、自分にしか出来ない表現方法もさぐって、それが今回の作品になりました」
スンズボーは上記のように語る。
スンズボーらしくポスプロで凝った仕上げをした写真も多いが、モデルにテーマがうまく伝わっただろうか。
「撮影の趣旨を聞いたときはどうなるかと思ったけれど、ピレリカレンダーに出演するのは、ずっと願っていたことでしたから。やってみたら、ソルベ(スンズボー)のコンセプトはいいじゃないって、すぐ共感できるようになって楽しめました」
ロシア出身のモデルでテレビタレントでもあるイリーナ・シェイクは、インタビューでそう答えてくれた。
モデルになったのは下記のひとたち。
ティルダ・スウィントン(俳優)、グウェンドリン・クリスティー(俳優)、FKAツイッグス(シンガー・ソングライター)、イザベラ・ロッセリーニ(俳優)、ビーナス・ウィリアムズ(テニスプレイヤー)、スージー・ケイブ(ファッションデザイナー/モデル)、ルイザ・ラニエリ(俳優)、イリーナ・シェイク(モデル)、杜鵑(ドゥ・ジュアン、モデル/俳優)、エヴァ・ヘルツィゴヴァ(モデル)、アドリア・アルホナ(俳優)。
選ばれているのは全員女性。そこにはいかなる意図があったのだろう。スンズボーに尋ねた。
「今回はテーマがエレメンツと、ちょっと入り組んだコンセプトでした。私は、幅広い年齢を対象にしつつ、かつ、これまで一緒に仕事をして気心の知れているひとたちに声をかけました。女性にしたのは、ピレリカレンダーの“伝統”にのっとったからです」
女性という人選について、ピレリのマルコ・トロンケッティ・プロベラCEOは「大地とか自然というテーマだと女性のほうが、私にはしっくり来るんですよ。ラテン系の言葉で自然に関するものは、海とか大地とか、女性名詞が多いし」と微笑みながら、感想を述べた。
最後に、デジタルの時代に紙のカレンダーを作ることにどれだけの意味がありますか、とスンズボーに訊いた。
「すばらしいモノを作るというこだわりです。印刷、素材、大きさ。制作と真剣に討議して決めました。デジタルの表現はたしかに好きですが、物理的な存在感っていいですよね」
あいにく、2026年版も非売品。市販化を待ちたいものだ。
文・小川フミオ 写真・Pirelli 編集・岩田桂視(GQ)
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