日本の5ナンバーサイズに収まる小さなBEV
2022年に、12年ぶりに日本再上陸を果たした韓国の自動車ブランド・ヒョンデ。日本市場向けはBEV(電気自動車)と燃料電池車のみのラインナップという大胆な戦略を掲げていますが、先ごろBEVの第3弾モデルとして「インスター(INSTER)」が上陸しました。
【画像】「えっ!…」日本の都市にジャストな選択肢!? これがヒョンデのコンパクトBEV「インスター」です(30枚以上)
その特徴は「まるで日本市場のために開発されたかのようなモデル」であること。日本は他の国よりBEVの普及スピードが遅いとされていますが、BEVの選択肢は着実に増え始めています。ただし、そのラインナップはシティコミューターと中・大型のSUVばかり。「取り回しのいいサイズ感」や「1台でまかなえそうな350~400kmくらいの航続距離」、そして、「エンジン車から買い替えやすい価格設定」をバランスさせたモデルは、意外に選択肢がありません。「インスター」はそんな空白地帯に“直球勝負”を挑んだ1台といえます。
筆者(山本シンヤ)は以前、韓国で本国仕様の「インスター」に試乗済みですが、今回は日本仕様を日本の道でドライブしました。日本仕様は右ハンドル化されているのみならず、パワートレインやフットワークなども日本市場に最適化されているとのことなので期待大です。
「インスター」のエクステリアはクロスオーバー風のスクエアなデザインで、スズキの「ハスラー」や「クロスビー」、往年のモデルでは日産「ラシーン」に似ている感じですが、前後のライト回りに「アイオニック5」で採用されたポリゴンデザインを応用することで、先進的な雰囲気もプラスされています。
そんな「インスター」で注目したいのがボディサイズ。全長3830mm、全幅1610mm、全高1615mmと、日本の5ナンバーに収まります。全幅を日本の5ナンバーモデルのように目いっぱい(=1695mm)使っていない理由は、「キャスパー」という韓国の軽自動車規格(全長3600mm以下、全幅1600mm以下、全高2000mm以下)のモデルをベースに、BEV化に合わせてボディを拡大したためです。
「インスター」のインテリアは、奇をてらわないオーソドックスなインパネレイアウトを採用しています。質感はクラス相応でスイッチ類が煩雑なレイアウトとなっているのが気になりますが、フル液晶メーター、ナビゲーション搭載のタッチスクリーン、運転支援機構(アダプティブクルーズコントロール+ステアリング制御)、パドルシフト(回生量コントロール)、電子パーキングブレーキ&ホールド機能、ステアリングヒーター、シートヒーター&ベンチレーション、ワイヤレス充電機能など、上級者顔負けの装備レベルです。
全幅が狭いので、左右席間の“カップルディスタンス”はそれなり。そんななか、2580mmという長めのホイールベースを活かし、後席乗員の足元スペースは、このクラスで容積効率に優れるホンダ「フィット」も顔負けの広さとなっています。また、後席にはスライド機構が備わっているので、ラゲッジスペースとのバランスも調整可能です。
パワートレインのラインナップは2種類。ベーシックグレードの「カジュアル」は97ps/147Nmのモーター+42kWhのバッテリーを、上級グレードの「ヴォヤージュ」と「ラウンジ」は115ps/147Nmのモーター+49kWhのバッテリーを搭載しています。
気になる航続距離は、「カジュアル」は申請中とのことで未公表ですが、上級グレードの2モデルは458kmと、長距離走行も許容できるレベルです。
ちなみにパワートレインのチューニングは日本仕様専用のもので、本国仕様に対して「ノーマル」モードはおだやか、「スポーツ」モードは俊敏なセットになっています。
●パワートレインや足回りは日本仕様専用の仕立て
今回の試乗車は、3グレードあるうちの最上級仕様「ラウンジ」でした。
BEVということで、アクセル操作に対する反応がいいのはいうまでもありませんが、本国仕様と比べると日常域での加速の立ち上がりはジェントルで、微細なコントロールもしやすい特性になっています。
逆にアクセルペダルをドンと踏み込むと、本国仕様は頭打ちになる印象があるのに対し、伸びのある加速を見せるなど、エンジン車っぽい特性に仕上がっているように感じました。
気になる電費は、高速7割/一般道3割くらいのルートを走らせて8.5~9.0km/kWhを記録。走行前に表示されていた航続可能距離とトリップメーター+残りの航続可能距離との誤差も小さかったので、実際の航続距離はカタログ値に限りなく近いはずです。
フットワークは、エンジン車用の“ヒョンデK1プラットフォーム”をベースに、駆動用バッテリー搭載に合わせて床下にフロアメンバーを追加するなどBEVに最適化されたもの。サスペンションはフロントがストラット式、リアがトーションビーム式と、このクラスでは定番の組み合わせですが、ダンパーには名門のザックス製をおごっています。なおタイヤ&ホイールのサイズは、「カジュアル」と「ヴォヤージュ」が185/65R15、「ラウンジ」が205/45R17となっています。
パワートレインと同様、フットワークのチューニングも日本仕様専用のものとなっています。
EPS(電動パワーステアリング)は、取り回しのよさを重視した制御。サスペンションは、日本の道路事情、いわば首都高速への対策が施されるとともに、日本人の志向に合わせたやわらかめの味つけとなっています。ちなみに足回りは、バネ、スタビ、ブッシュは各仕向け地向けから最適なものを選択。ダンパーは日本専用品を採用しています。
17インチ車は本国仕様のセットアップでよかったかも
日本仕様の「インスター」の走りは、コンパクトモデルであることを感じさせないドシっとしたものではありますが、本国仕様より軽めのステアリング設定により、日常域での取り回しは楽々である一方、直進安定性はちょっと頼りなさが残る感じです。
コーナリング時にスポーティやワクワクといった過度な演出はありませんが、ドライバーがステアリングを操作した分だけ素直に曲がってくれる、至極真っ当なハンドリングに仕上がっています。
加えて、トレッドが拡大されたかのような安定感は「フィット」以上で、BEVながら車両重量を感じさせないキビキビとした動きのバランスはトヨタ「ヤリス」以上。思わず「日本車、もっと頑張れ」といいたくなってしまう走行フィールは、いろんな意味で脅威です。
日本仕様の「インスター」の乗り心地は、入力の優しさやストロークで吸収する減衰などにより、日常域ではサイドウォールが薄い偏平タイヤのネガを抑えた優れた快適性を実感できます。
そんななか残念なのは、高速走行時に本国仕様以上にバネ上が落ち着かない印象があること。シティコミューターと割り切って乗るならいいのですが、ロングドライブも許容できるモデルであることを考えると、個人的には「17インチ仕様は本国仕様のセットアップのままでよかったのでは?」と思いました。
運転支援デバイスは上級モデルと変わらず、ほぼフルスペックといっていい装備内容の「インスター」ですが、ステアリング制御(HAD)やナビ協調ACC(NSCC)のカーブ区間の速度制御などは日本の道路事情に合わせたセットアップになっています。実際に使ってみても違和感のない自然な制御でしたが、短時間では分からないこともあるので、近々、長距離を走って試してみたいと思います。
韓国車というと、さまざまな感情を抱く人がいますが、少なくとも「インスター」は、クルマの仕上がりに関しては日本車もウカウカしていられないレベルなのは事実です。
また、このカテゴリーのモデルが日本車の中から出てこないことは残念でなりません。「インスター」の価格(消費税込)は284万9000円~357万5000円ですが、国のCEV補助金(56万2000円)を使えば、現実的な価格帯であることが分かるはずです。
●世界のクルマのプロがその実力を認めた
そんな「インスター」は、筆者が選考委員に名を連ねるアワード「ワールド・カー・アワード(World Car Awards)」において、2025年の「World Electric Vehicle賞」を獲得しました。同賞は世界各国のクルマのプロが平等かつ公平に評価するものですが、世界は「インスター」の実力をすでに認めているというわけです。
この受賞に対し、ヒョンデ・モーターカンパニーのホセ・ムニョス社長兼CEOは次のようにコメントしています。
「『インスター』は発売以来、お客さまから高い評価をいただいています。魅力的なデザイン、航続距離、快適なドライビング特性、直感的なインフォテインメント、そしてお客さまに高く評価されるテクノロジーの組み合わせは、ヒョンデが『お客さまに卓越した価値を提供する』という姿勢を象徴しています。ワールド・カー・アワードでも高い評価をいただき、大変うれしく思っています」
ちなみに現在のところ、オンラインでのダイレクト販売が基本となるヒョンデ車ですが、「インスター」の発売に伴い、インポーターのヒョンデモビリティジャパンは各地にショールーム(Hyundai Citystore)や試乗拠点(Hyundai Driving Spot)の拡充を進めています。
新しい「インスター」は、そうした拠点で実際に見て・触って・乗って実力を確かめる価値のある1台といえそうです。
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