とても小さな変化
執筆:Damien Smith(ダミアン・スミス)
【画像】マクラーレンのハイブリッドマシン【アルトゥーラ、P1、スピードテールを写真で見る】 全95枚
翻訳:Takuya Hayashi(林 汰久也)
気候変動の危機が迫る中、モーターレースの存続を正当化しようとする動きは少々厄介なもので、他のスポーツと比べても「偽善」と片付けられやすい。
その一方で、モータースポーツ関係者は、新技術への投資と、速く走りたいという飽くなき探究心から、F1は世界に通用する持続可能な解決策を生み出す土壌になっていると主張する。
2030年までに炭素排出量ゼロを達成するというF1の目標を受け、マクラーレンは「すべての人にメリットがある」というグリーン・テクノロジーをモータースポーツに導入した。
1つは、先日のイギリスGPでランド・ノリスが背中を預けたシート、もう1つは、チームのピットウォールスタンドとエンジニア用のデスクだ。
大したことない?確かにそれ単体で見れば、環境への影響力など取るに足らないものだろう。しかし、持続可能な素材がレーシングカーに広く応用されるための第一歩と考えれば、大きな意味を持つはずだ。
走りに影響はないのか
ノリスが座った新しいシートは、天然繊維の複合材で作られており、ライフサイクル分析によると、従来のカーボンファイバー構造に比べてCO2排出量を85%削減することができるという。これは、スイスのBcomp社との協力によるもので、「ampliTex」という素材と「powerRibs」と呼ばれる構造を採用している。
Bcomp社のCEO兼共同設立者であるクリスチャン・フィッシャーは、次のように語っている。
「原材料の生産や製造工程での排出を考慮しても、すべての炭素繊維プライをampliTexとpowerRibsのレイアップに置き換えることで、大部分を削減することができます」
「シートを交換する場合も、すべて天然繊維でできていることから、シートに蓄積されたエネルギーの約80%を再生可能エネルギーに変えることができます」
この技術は以前から開発されていたようだが、最近のF1ではドライバーのサーキット走行時間が相対的に不足しているため、マクラーレンは導入に慎重になっていたという。
マクラーレンF1のデザイン・エンジニアであるスコット・ベインは次のように述べている。
「サーキットでの走行時間が少ないため、レース本番から新しいシートの使用を余儀なくされます。ドライバーが快適でなければ、自信を失い、最終的には自身とマシンのパフォーマンスを最大限に引き出すことができなくなります」
「特に今年はランドが好調なので、この点は非常に意識しています。わたし達は、彼のパフォーマンスを低下させるような変更はしたくありませんでした」
始めなければいけないこと
新しいシートは、ノリスの古いシートと同じ型で製造されている。ベインによると、21歳のノリスからは「何のフィードバックもない」そうだが、これは良いことである。彼には違いがわからず、つまりは認められたということだ。
新しいピットウォールスタンドとガレージデスクについては、天然繊維複合材を使用することで3450kgの軽量化を実現した。20台のマシンと何千人ものスタッフを、年間23回のレースのために世界中で輸送することを考えれば、これもまた大したことではない。
しかし、マクラーレンもライバルたちも、どこかから始めなければならない。このようなプロジェクトは、モータースポーツ関係者が自分たちの直面している存亡の危機に目覚め、「何かしたほうがいい」と考えていることの証明でもある。
モータースポーツの正当性がこれほどまでに問われている時代はないが、戦いはすでに始まっているのだ。
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