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ホンダの最新安全技術最前線

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ホンダの最新安全技術最前線

ホンダは2019年7月18日に、軽自動車ハイトワゴンの新型「N-WGN」を発表したが、N-WGNにはホンダが開発した最新の安全技術が採用されている。その最新安全技術をホンダの栃木研究所でメディア向けに紹介した。

軽自動車に対するユーザーの安全性能重視の傾向は高まっている

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新型N-WGNは、Nシリーズの中でも最新の安全技術が投入されているのは、モデルチェンジのタイミングとうまくマッチしたからだ。その一方でN-BOXのユーザー調査では、以前に比べ予防安全や衝突安全に対する意識が高まり、購入時に安全性能を重視する傾向は格段に高まっている。

データを見れば明らかだが、N-BOXのようなスーパーハイトワゴンを購入するユーザー層は、室内の広さや居住性を最重視するのは当然だが、2015年の調査データに比べ、予防安全や衝突安全性能に対する重視度は大幅に高まっていることがわかる。

そのため、現在では軽自動車には普通乗用車の安全性能と同等のレベルが求められているのだ。今回の栃木研究所での安全技術のプレゼンテーションは、その事実を裏付ける内容になっていた。

屋内全天候型全方位衝突試験

まずは栃木研究所にある「屋内全天候型全方位衝突実験場」での、衝突実験のデモンストレーションだ。この実車の衝突実験施設は、屋内なので天候に左右されず、0度から180度の衝突まで、つまり全方位実車での衝突実験ができる施設で、2000年に完成した当時は世界初の屋内型衝突実験場だった。

今回、衝突実験を行なうのはN-BOXと、小型ハイブリッドカーのインサイト。つまり軽自動車と、より車両重量の大きいクルマとの車両同士の衝突実験だ。一般的に各国のNCAP(新型車安全評価テスト)では、衝突安全性能の評価はバリヤ(コンクリート+ハニカム材で作られた壁)衝突によって行なわれる。そのため、こうした安全性能評価で好成績を出すためには同様の試験方法で実験する必要がある。

しかし、ホンダは以前から、安全性能評価基準を前提とはせず、リアルワールドでのクルマ対クルマの事故を想定し、しかも衝突相手のクルマは様々なサイズを想定している。この異なるサイズ同士での衝突における相互の安全性能の両立、つまり「コンパティビリティ(自車の乗員保護性能と相手車両の被害低減を両立させること)」の思想を全面的に採用しており、安全性能評価試験で好成績を収めることだけを考えているわけではないからだ。

N-BOX対インサイト

今回の実験は、N-BOXとインサイトの正面衝突でラップ率は50%(ボディの全幅半分がずれた状態で衝突)。N-BOXとインサイトはそれぞれ50km/hでけん引され、衝突時の相対速度100km/hで衝突する。車両同士が衝突した時、衝突エネルギーの吸収量は車両重量に反比例する。N-BOXの車両重量を1とするとインサイトの車両重量は1.5となることから、重量比は1:1.5となり、したがってN-BOXが吸収する衝突エネルギーは60km/hに相当し、インサイトはは40km/hに相当する。

衝突ではより軽量なN-BOXは衝撃で跳ね上がるが、両車のエンジンルームはきれいに潰れている。そして、フロント・エアバッグ、カーテン・エアバッグがきれいに展開し、乗っているダミー人形の着座位置もずれていない。

そして重要な点は、相互のAピラー以降のキャビンは変形せず、ドアも正常に開閉できることだ。つまり衝突しても乗員の居住スペースは圧迫されず、ドアを開けての救出も問題なく行なうことができる点が確認できた。特にN-BOXはフロント・ドアだけでなくリヤのスライドドアも問題なく開閉できていた。

このように両車の正面衝突では軽量なN-BOXの方が、より大きな衝突エネルギーを受けているが、衝突安全性能は小型車と同等以上であることがわかる。これは、N-BOXも新型N-WGNも、もともとコンパティビリティを意識してフロント・サイドフレームを上下2本構造としていること、キャビンのAピラーやBピラー部は、軽自動車では異例の、現在で最高水準の強度を持つ熱間成形の超高張力鋼板を使用した高強度ボディ骨格としていることが大きな効果を発揮しているのだ。

歩行者安全には独自のダミーも製作

またこの「屋内全天候型全方位衝突実験場」で、ホンダが独自に開発している歩行者ダミーの展示も行なわれた。歩行者ダミーは、歩行者と車両との衝突による歩行者の傷害を検証するダミーだ。

ホンダは1998年に歩行者ダミー「POLAR I」を世界で初めて開発した。2000年には傷害値の計測が可能な「POLAR II」、2008年には広範囲にわたって詳細な解析が可能な「POLAR III」へと歩行者ダミーを進化させ衝突実験を行なっている。

POLAR IIIでは、SUVやミニバンなど販売台数の多い車両で損傷を受けやすい腰部や大腿部の傷害低減を目指し、人体模型の精度を向上させている。

実は各国のNCAPテストでは歩行者ダミーは使用せず、頭部や、脚部など独立した個別のモデルを車両に衝突させて歩行者の傷害度を計測しているが、この点でもホンダは安全基準テストの方式ではなく独自の、よりリアルワールドに近い歩行者ダミーを使用して、歩行者に対する安全性能を高める研究を続けている。

余談になるが、ホンダは2019年6月、オランダで開催された国際自動車安全技術学会「ESV2019」で「交通弱者保護エアバッグ」を将来技術として発表している。これは歩行者と車両が衝突した場合に歩行者の脳が受ける障害指標を半分以下へと低減させることができるとされ、これも歩行者ダミーを使用しての研究から生まれている。

新型N-WGNに採用された進化版「ホンダ・センシング」

新型N-WGNは、これまでのNシリーズと同様に安全・運転支援システム「ホンダ・センシング」を全車標準装備としている。そのホンダ・センシングの機能も今回から一段とグレードアップされている。

新型N-WGNは、これまでの各機能に加えてホンダ初の機能として従来から装備する「オートハイビーム」の仕様を変更し、始動すると常に機能がONとなる方式に変更。そして衝突被害軽減ブレーキ「CMBS」の機能に、夜間歩行者認識機能、横断自転車認識機能を追加した最新スペックとなっている。

夜間への対応も進化

この夜間の歩行者や横断自転車の認識機能は「予防安全性能アセスメント」のテスト条件がさらに厳しくなり、「夜間の街灯あり」の条件に「夜間で街灯なし」の条件も追加される方針に対応しており、横断する自転車に対する対応も、今後のユーロNCAPに採用される要件なのだ。

ホンダ・センシングはボッシュ製の単眼カメラ+ミリ波レーダーで構成されるシステムだが、画像認識のソフトウエアのバージョンアップにより、夜間の暗い状態での歩行者の認識、横断する自転車、つまり横方向に動く自転車を認識できるようになったのだ。これは、見通しの効かない交差点などでの出会い頭の事故を抑制する効果がある。

今回は、車両が30km/hで走行中に自車からみて右側から90度、で横断してくる自転車(15km/hで走行)を検知して、CMBSの衝突被害軽減ブレーキ機能により衝突せずに停止するデモンストレーションが行なわれた。ちなみにこの機能は全ホンダ車でも初で、他の軽自動車と比べても初の機能だ。

踏み間違い事故防止体験

夜間の歩行者の認識とCMBSの作動デモンストレーションは、残念ながら天候が悪化し、実施できなかった。その代りに、後退時のペダル踏み間違いによる誤発進抑制機能は体験できた。




これはバックする時、後方に壁がある状態で、ブレーキペダルを踏むべきところを、誤ってアクセルペダルを踏んだという想定でのテストで、アクセルを全開に踏み込んでも、警報が鳴ると同時にエンジン出力が自動的に抑制され、車両は車止めを乗り越えることができず、したがって壁にも衝突しないという機能を体験できた。

このように、現在では普通乗用車はもちろん、軽自動車でもトップレベルの安全システム、ドライバー支援システムがラインアップされている。

ドイツの自動車メーカーのエンジニアは、日本では軽自動車でも衝突防止・被害軽減ブレーキや、アダプティブクルーズコントロールがごく当たり前に装備されていることを知らされて唖然としたという。実際、これから軽自動車を購入する人々にとって、こうした安全技術やドライバー支援システムの有無は最重要チェックポイントになることは間違いない。

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