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過去と未来が交差する特別な1本が登場──カシオ EDIFICE×ホンダ F1初優勝60周年記念コラボレーションモデル<前編>

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過去と未来が交差する特別な1本が登場──カシオ EDIFICE×ホンダ F1初優勝60周年記念コラボレーションモデル<前編>

ホンダとEDIFICEの出会い──コラボレーションの原点と進化

2025年、HondaがF1(フォーミュラ1)で初めて優勝を果たしてから60年という節目の年を迎えた。HondaがF1で初優勝したのは1965年のこと。そして2026年、新型パワーユニット「RA626H」を携えて再びF1の舞台に戻ってきた。
過去の栄光と未来への挑戦が重なるこのタイミングで、カシオのEDIFICE(エディフィス)からHondaF1初優勝60周年記念コラボレーションモデル「ECB-2300HR」が3月13日に登場する。
HondaとEDIFICEはこれまで9つのコラボレーションモデルをつくってきた。その経緯と10作目となるF1初優勝60周年コラボレーションモデル「ECB-2300HR」について、カシオ計算機 ブランドコミュニケーション本部 時計宣伝部 第二ブランドグループ リーダーの髙橋保之さん、デザイン開発統轄部 プロダクトデザイン部 プレミアムリストデザイン室 リーダーの田代篤史さん、デザイン開発統轄部 プロダクトデザイン部 Gデザイン室の神戸佑介さん、そして本田技研工業 コーポレート戦略本部経営企画統括部経営企画部モータースポーツ課の冨沢潤さんが取材に応じてくれた。
日本を代表する企業が時計というプロダクトを通じて語る、ものづくりへの情熱の物語を2回にわたり、綴っていきたい。今回はその前編をお届けする。

伝説のホンダF1マシン、RA272が内包する熱量を現代に<span>──</span>カシオ EDIFICE×Honda F1初優勝60周年記念コラボレーションモデル<後編>


「EDIFICE」とは「Speed & Intelligence」の追求

髙橋保之さんはEDIFICEのコンセプトを「『Speed & Intelligence(スピード&インテリジェンス)』です。Speedではスピードを感じさせるダイナミック(動的)なデザインを、Intelligenceではカシオならではの技術の進化を指しており、当社ならではのレーシングウォッチやドライビングウォッチのかたちを模索しています。ターゲットはモータースポーツファンが中心。メタルケースのアナログウォッチを基本としながら、これまで独自の進化を遂げてきています」と説明する。


髙橋さんが言うところの「技術の進化」とは、計測の精密さにある。
EDIFICEに搭載されるストップウォッチ機能は2004年の1分の1秒の計測から始まり、2009年に100分の1秒、2010年には1000分の1秒へと進化を続けてきた。ツインストップウオッチや200本のラップメモリーなど、計測の可能性を広げ、2014年にはBluetoothと連携し、スマホにタイムを送信できるモデルを発表。計測から管理まで一元化したモデルを登場させている。
このスピードとテクノロジーを表現するのに、スピードと技術の最高峰であるF1以上の舞台は考えられない。だからこそEDIFICEはF1とのスポンサーシップという道を選んだのである。
最初に白羽の矢を立てたのがデビッド・クルサード(1971-)である。2008年、クルサードとの契約から始まったF1との関わりは、彼の同年引退という形で新たな局面を迎えることになる。
「次のドライバーを探していた時、思い浮かんだのが富士スピードウェイの雨のレースでマーク・ウェバー(1976-)に追突して泣いていた若きセバスチャン・ベッテル(1987-)の姿だったんです。その後、ベッテルがイタリアグランプリでポールtoウィンを達成したことを受けて、次は彼と決めて社内でプレゼンしました。資料ではいろいろなドライバーを一緒に紹介しましたが、彼を心持ち大きめに扱いましたけど(笑)」


2017年の鈴鹿サーキット、すべてはここから始まった

2017年、Hondaがエンジンをスクーデリア・トロ・ロッソへ供給するとのニュースが流れた。それを受けて髙橋さんは「Hondaさんにコンタクトを取りたい」と、“ツテ”を探し始めた。知人に相談したところ、驚くべきことにHonda側からも同じ人物に「カシオへの“ツテ”はないか」という相談が来ていたというのである。
その人物の仲介により、2017年の鈴鹿でカシオとHondaは出会う。後で聞いた話では、トロ・ロッソのチーム代表フランツ・トストから「日本企業同士で一緒に何かやったら面白いんじゃないの」という提言があったとのことだから、まさに必然的な出会いと言っても過言ではないだろう。
しかしその後のHondaの本気は、カシオの想像を超えるものだった。
HondaはF1の本質を理解してもらうべく、EDIFICE担当者を本田技術研究所四輪R&Dセンター、HRD Sakura(現在のHRC Sakura)に招いた。そこでは手厚いプログラムが組まれ、F1エンジンを見学し、技術者から直接話を聞く機会が設けられたのである。
この出会いは2018年に登場するファーストモデル「EQS-800HR」に結実するのだが、その前にもHondaの本気があった。Honda主催のイベントへの参加である。


それが2018年3月17日に行われた、F1開幕前イベント「Red Bull Toro Rosso Honda DAY in Tokyo 2018」である。当時、EDIFICEではトロ・ロッソとのコラボモデルを発表していたが、そのモデルを使ってのカウントダウン映像を作成し、会場で使ってくれただけでなく、イベント中のドライバーたちへ、時計の質問を盛り込んでくれたのである。しかも会場にはカシオのブースも置かせてもらえたという。イベントの名前を読めばわかるとおり、カシオの名前は入っていない。つまりドライバーがスポンサーの時計を装着することは当たり前としても、時計を紹介する義理はないのである。
映像制作も、ブースの設置も、ドライバーへの時計の質問も、すべてはHondaの厚意によるもの。髙橋さんは「なんでこんなに親切にしていただけるんだろうって、思っていました」と当時を振り返るが、Hondaとカシオの関係はF1ファンに認知されることになる。こうして同年秋に発売されたHondaとのファーストコラボモデルは「バカ売れ」という結果をもたらした。


チタンアルミナイドという難題

翌年、2作目で挑んだのはチタンアルミナイドという素材である。実はこの素材を紹介してくれたのもHondaだった。HRD Sakuraにて「こんな素材がある」と紹介されたのだ。
チタンアルミナイドはF1エンジンのバルブに使われる軽くて非常に硬い金属だ。F1のレギュレーションでは、バルブにのみ使用が可能と定められている特殊な素材であり、「それをベゼルにしよう」というカシオの挑戦が始まった。ちなみに開発の際の素材提供はもちろんHondaである。
しかしすぐに問題が発生する。「チタンアルミナイドという素材が硬すぎて切削が非常に難しく、刃がいくつもダメになったと聞いています」と田代篤史さん。これではあまりにも歩留まりが悪すぎると頭を抱えたという。そこでHondaに相談すると、切削を行っているサプライヤーを紹介され、これによりようやく製品化の目処が立つことになった。ここでもHondaのサポートがモデル完成に結実するのである。


このチタンアルミナイドモデル「EQB-1000HRS」は、鈴鹿サーキットで行われたF1の日本グランプリで発売されることになった。結果としてこのモデルは2日間で売り切れてしまい、決勝レースが行われる日曜日には1本もなかったというから、ファンは相当がっかりしたに違いない。


チャンピオンシップホワイトという転機

しかし、その後のモデルは順調とはいいがたく、コンセプトを明確に打ち出したモデル作りが求められた。そこで改めて、「コラボモデルが明確にすべきは、さらにHondaという最強のパートナーが持つコンテンツを活かすこと」という姿勢を明確にする。
そこで選ばれたのが「チャンピオンシップホワイト」である。
「チャンピオンシップホワイト」とは、1964年のF1世界選手権に出場したF1の原点である「RA271」をルーツとする色で、特徴は単なる白ではなくアイボリーがかったホワイトだ。この色はHondaのスピリッツを受け継ぐ色として、F1で初優勝した「RA272」でも採用され、1992年に登場したNSX-Rも纏う。いまはHondaの究極のスポーツモデルを継承する「TYPE R」のボディカラーである。


1965年10月24日、メキシコグランプリでチェッカーフラッグを受けた「RA272」。エンジンからシャシーまでHondaが自社開発した1.5リッターV型12気筒エンジンの純日本製のF1マシンだ。Honda陣営は高地での開催となったメキシコでの最終戦に臨み、F1計画を初期から推進してきた中村良夫がチーム監督に復帰した。
「実はレースが行われた1965年は市販車開発に注力せよとの社命で、中村さんは現場から距離を置いていました。ですが長い苦戦を受けて、その脱却のために監督復帰を志願したそうです。中村さんはHondaへの入社前は中島飛行機のエンジニアだったこともあり、高地でのエンジン調整は得意技だったんですね。チーム全員が早めに現地入りし、主催者と交渉してHondaチームだけ2日前からテストを繰り返し実施、チームの士気を上げて勝利をつかんだと聞いています」(Honda 冨沢さん)。
Honda F1 初優勝60周年の特別サイト
https://global.honda/jp/F1/60th/
TYPE Rについてのサイト
https://global.honda/jp/stories/048.html


ここでもHondaから実車で使用されているTYPE Rの専用塗料「チャンピオンシップホワイト」が提供され、時計のパーツに使用する挑戦が始まった。何しろクルマと時計では同じ塗料でも同じ効果が得られるというものではないからだ。
田代さんは「インナーベゼルで使おうということになりましたが、車用の塗料を時計用の小さく薄いパーツに使うと、塗料が硬化した際にパーツが歪んでしまうという問題が発生しました。これ以外のさまざまな問題をクリアするため、ベースモデルからパーツの素材や構成を変えることを繰り返し、ようやく実現しました」と説明する。
インナーベゼルは本来プラスチック製だが、これを金属とプラスチックの二層にし、金属に塗布することで歪みを抑えるという方法を採用。しかも量産品という性格上、膜厚の管理も厳密に行う必要があった。試行錯誤の連続だったが、実現にこぎつけ、しかも「このときに得られた塗料のクセや塗布する際のノウハウといった情報が最新作で活かされています」と田代さん。


TYPE Rモデル、空前の大ヒットへ

そして2023年、TYPE Rエディション「ECB-2200HTR」が登場する。このモデルでカシオがこだわったのは、歴代全てのTYPE Rの型式をベルトに入れることだった。


「TYPE Rブランドとしてのコラボレーションなので、歴代の車種は全部網羅すべきと考えました。全車種を調べ、スペックやデザインを洗い出し、使える要素を探した結果として、型式を採用することにしました」(田代さん)
TYPE Rといった歴史あるクルマにはその系統のなかで人気車種が生まれるのは必然だろう。そんななかでコラボモデルを作るとなれば、「売れる」人気車種に偏ったデザインにすることもある。だが「ECB-2200HTR」ではすべての型式をストラップに刻むことを選択した。
もうひとつ、チャンピオンシップホワイトと同様に重要なのが真っ赤な「Hマーク」のエンブレムだ。「TYPE R」のシンボルであるこの赤バッジをつくる際も妥協することはなかった。表面がラウンドした形状はもちろん、エンブレムのエッジ部分の形状にも注目していただきたい。小さいパーツながら実車さながらの凝りようだ。また赤とシルバーの表現にも徹底的にこだわり、結果的に時計としては汎用性のない作り方を採用したという。
鈴鹿サーキットで開催されたF1日本 グランプリでの発売前のお披露目の際には、パーツよりもストラップに記した型式に注目が集まり、好評だった。
「ファンの方が型式を見て、『オレの車種が入ってる!』と嬉しそうに話しているんです。TYPE R好きの琴線に触れたのは、自分の愛車と時計の接点があったことでした。パーツの作り込みはもちろんですが、こうしたつながりが重要なんですよね。この声はEDIFICEがTYPE Rを理解していることへの評価と思う一方で、改めてファンの声をダイレクトに聞くことの重要さを実感しました」(髙橋さん)
そして2023年11月13日0時、予約受付が開始された。特設サイトに加えて、全EDIFICE流通店でも一斉に販売が始まったのだが、0時ちょうどにアクセスした人すら買えない状況になった。
「あまりのアクセス数にサーバーがフリーズし、エラーも出てしまう事態になりました」(髙橋さん)。
嬉しい悲鳴とはこのことだろう。


歴代のTYPE Rは以下の通り。
1992年NSX-R(NA1)、1995年インテグラTYPE R(DC2/DB8)、1997年シビック TYPE R(EK9)、2001年インテグラ TYPE R(DC5)、2001年シビックTYPE R(EP3)、2002年NSX-R(NA2)、2007年シビック TYPE R(FD2)、2009年シビックTYPE R ユーロ(FN2)、2015年シビックTYPE R(FK2)、2017年シビックTYPE R(FK8)、2022年シビックTYPE R(FL5)
>>>後編につづく>>>

文:くるくら

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