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初PPをドライタイヤで掴んだ大津。2セット目の新品ウエットで3番手に滑り込んだ野尻の分岐点【第6戦もてぎ予選】

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初PPをドライタイヤで掴んだ大津。2セット目の新品ウエットで3番手に滑り込んだ野尻の分岐点【第6戦もてぎ予選】

 ツインリンクもてぎで開催されている2021年シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権。第6戦の公式予選は、天候に翻弄される大波乱の展開となり、有力候補とされるドライバーたちが続々とノックアウトされるなか、初のポールポジションを勝ち取ったのが大津弘樹(Red Bull MUGEN Team Goh)だ。

 公式予選Q2 A組では、ウエットタイヤに履き替えるドライバーがいるなか、大津はスリックタイヤでタイム更新を目指し、最後のチェッカーラップで平川亮(carenex TEAM IMPUL)を0.6秒上回り、4番手でQ2突破を果たした。

大津弘樹、ただ1人“スリック”で挑んだQ3で自身初ポールポジションを獲得【第6戦もてぎ予選レポート】

 予選セッションを振り返った大津は、このQ2でのアタックが大きなターニングポイントだったと語った。

「Q2の段階では、尋常じゃなく滑っていて『スリックで行くのは無理!』と言ったのですけど、チームは『ステイアウト!』と言ったので、そのままいきました。Q2の最後のアタックでは、周りがウエットを履いているのはわかっていたので、逆になぜ僕がQ3に上がれたのかが、未だにわかっていません。ただ、僕と同じくスリックを履いていた福住(仁嶺)選手が、1コーナーでコースオフして、前が開けたのも大きかったですし、彼よりは僕の方がグリップしている感じがあったので、ミスなく攻められたのが良かったです」

「Q3になって、みんながウエットタイヤを選んだなか、僕だけスリックで走り始めましたけど、Q2と比べれば、グリップしているなと思いましたし、雨量もQ2ほどではなさそうだったので、『これはいけるな』と思って、そのままステイアウトの判断をしました」

 大津の担当エンジニアであるライアン・ディングル氏も、Q2を突破できたことと、Q3をスリックタイヤで行く判断ができたことが、ターニングポイントだったと語り、大津の好判断を評価していた。

「タイヤの選択はすごく悩みました。伊沢拓也アドバイザーとも相談をしましたけど、僕たち15号車はチャンピオンシップに絡んでいるわけではないから、リスクを伴って行っても、逆にそれがメリットになる部分もあるのかなと思っていました」

「Q2では平川選手の前を走っていたので、もしかしたらウエットタイヤに交換してもギリギリでタイムアタックに間に合ったかもしれないですけど(タイヤ交換をする)時間が十分はないという判断で、ドライバーには申し訳ないけど、そのままスリックで行ってもらいました。Q3では、スリックでアウトラップに行って、ドライバーに最後は判断してもらいましたけど、そこで大津選手が良い判断をしたと思います。今回はQ2、Q3ともに彼の素晴らしい才能に助けられました」

 終わってみれば、2番手に昨年の王者である山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)、3番手には今季のタイトルに王手をかけた野尻智紀(TEAM MUGEN)がつけているが、大津は初優勝を飾るためにも、まずはスタートを決めたいと力強く語っていた。

「明日はポールからのレースになりますし、僕はスタートは得意としているので、まずは1コーナーをトップで通過するというのが絶対条件だと思います。そのなかでうまく戦って、優勝できるように頑張ります」

 一方、今回の結果次第で最終戦を待たずにシリーズチャンピオンに決まる可能性のある野尻智紀(TEAM MUGEN)。Q1では2カ月前に自身が樹立したコースレコードを0.3秒上回る1分29秒757をマークし、本人もこのままの流れでいければと期待していた部分もあったようだが、Q2から降り出した雨に慌ただしく対応しながらタイムを出していた印象だった。

 そのなかでも周りに起きている状況を分析して、冷静に対処していったことで、予選ポイント獲得につながった。

「Q2のA組で平川選手と福住選手がノックアウトされるのを見ていたので『(流れが)大崩れしないようにだけはしないといけない』と思っていました。特に平川選手はスリックタイヤで温めていって、途中でウエットタイヤに交換して、結局アタックできないまま終わっていました。あれを僕たちは見て、どのタイミングだったらタイヤ交換しても間に合わないかがわかった上でアタックにいけたので、良かったです」

 こうして、野尻はQ2ではスリックタイヤを履いてピットアウトするが、雨の量や路面状況を見て、すぐにウエットタイヤへの交換を決めた。これが功を奏し、1分41秒056で2番手通過を果たした。

 続くQ3では、ただひとりだけセッション途中に新品のウエットタイヤに交換する判断を下した。このときについて、16号車担当の一瀬敏浩エンジニアが、こう振り返った。

「実はQ3でも、直前までスリックタイヤを装着していました。ただ、ほかのクルマを見るとウエットタイヤを付けていたので、チャンピオンシップを考えたら『ここはウエットだな』という判断になりました」

「もしかしたらスリックで行けたかもしれないですけど、そこはリスクコントロールというか“周りに合わせていく”という判断だったのですが、セクタータイムが思ったほど上がらなくて『これはまずいかな?』と思ったのですけど、そのときに野尻選手は『もう1セット、ウエットタイヤ履けるの?』と無線がきて『その手があったか!』と。すぐに残り時間の計算したらギリギリ間に合うことがわかったので、すぐにタイヤ交換をしました」

「タイヤを交換しなかったほかのチームは、後半苦労していた部分があったと思いますけど、僕たちはあのタイミングで新品のウエットをもう1セット入れられたのが良かったです。かなりドタバタしましたけど、この位置に来られたのは御の字だと思います」

 もともとQ1からQ3まで1セットずつウエットタイヤを使う予定で、すぐに交換できるようにタイヤを準備していたという一瀬エンジニア。こういった迅速なチームの対応が、最終的に3番手獲得につながったと、野尻は語る。

「Q3でも、新品のウエットタイヤに替えるときも、90度コーナーで判断してピットインしたのですが、その時点でちゃんと新しいタイヤが用意され、メカニックがスタンバイしている状態でした。本当に素晴らしいなと思いました。そういう時って、バタバタとしてしまいがちですけど、そこまで予測して、準備をしているチームはなかなかいないと思います。最後はそういう部分も力になりました」

 野尻とTEAM MUGENの底力を垣間見た予選だったが、それを見せられたことに、またひとつ自信を深めていた様子が印象的だった。

「今回の予選は難しいところはありましたけど、うまくやれて良かったなと思います。3位なので大それたことは言えないですけど、僕たちの強さみたいなものは、しっかりと表すことができたのではないかなと思います。“転んでも、この位置だよ”というのは、ひとつ出せたのかなと思います」

 ここまで積み上げてきた流れが、いつ離れていってしまってもおかしくない状況だったが、それをつなぎとめた16号車陣営。悲願のタイトル獲得の瞬間に、また一歩近づいた予選日となった。

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