現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > オファーを受けて急きょ動いた宮田のF2参戦計画。新局面に入ったトヨタのドライバー育成プログラム

ここから本文です

オファーを受けて急きょ動いた宮田のF2参戦計画。新局面に入ったトヨタのドライバー育成プログラム

掲載 6
オファーを受けて急きょ動いた宮田のF2参戦計画。新局面に入ったトヨタのドライバー育成プログラム

 スーパーフォーミュラ、スーパーGTのふたつのカテゴリーで今季のチャンピオンに輝いた宮田莉朋が来季、FIA F2とELMS(ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ)の両カテゴリーに参戦することがToyota Gazoo Racing(TGR)の2024年体制発表会で明らかになった。事前の噂はほとんどなく、サプライズとなったその経緯はどのようなものだったのか。宮田本人に聞くとともに、この挑戦がWECチャレンジプログラムの一環であることについて、中嶋一貴TGR-E副会長、そして小林可夢偉WECチーム代表兼ドライバーに発表会後のカコミ取材で聞いた。

「チーム名はまだ答えられませんけど、今、ほぼほぼチャレンジできる状況になって来ています。経緯としては、本当に彼がダブルタイトルを獲ったということが非常に大きいと思っています。話があったタイミングも、それでおおよそ想像がついて頂けると思います」と、まずはサプライズとなった今回のFIA F2参戦の経緯について話す中嶋一貴TGR-E副会長。

“異例のリザーブ就任”宮田莉朋に「時代が変わった」と可夢偉チーム代表。F2オファー以前はLMGT3参戦を計画

「話があった」という言葉のとおり、宮田のF2参戦は宮田やTGR側から画策したものではなかった。時系列的にはスーパーGT最終戦もてぎで宮田莉朋が坪井翔と共にau TOM'S GR Supraでタイトルを獲得した直後で、その後の決断は早かった。関係者によると、オファーから2~3日後にはトップのモリゾウ氏、そしてTGR-E会長にしてトヨタ自動車社長でもある佐藤恒治氏、そして高橋智也Gazoo Racing Companyプレジデントの承認を得て、宮田のF2参戦が決まったという。

 宮田が、そのオファーとTGRの決定を受けた際の心境を振り返る。

「本当に突然の形だったので、正直、想像もしていなかった。一貴さんをはじめ、TGRのみなさんと来年に向けていろいろ話をして準備をしていた中で、まったく想像していない形で、FIA F2という挑戦が決まった。今もまだF2の件でバタバタはしているのですけど、本当にうれしい出来事です。僕としてやるべきことはTGRという名前を背負って、そしてモリゾウさんやTGRへの感謝の気持ちを忘れずに、しっかり来年も頑張るだけかなと思っています」と宮田。

 FIA F2は来季、F1が開催されるサーキットと同時開催で年間14ラウンドが予定されていることから、宮田の来季の国内参戦の可能性はなくなった。気になるのはF2が14戦、そして年間6戦が予定されているELMSのふたつの海外シリーズの優先順位だが、この件については中嶋一貴副代表が答えた。

「基本的にF2を全戦出場する。ただ、ELMSとは1戦しかバッティングしない予定なので、バッティングするときはF2を優先するということになりますけど、それ以外はELMSを戦っていくということになります」

 FIA F2への参戦が急きょ決まったことで、宮田の周辺は現在進行形で慌ただしくなっている。気になる所属チームについては、11月29日からアブダビで開催されるF2のシーズンオフテスト前には発表される模様。ちなみに、このテストでは宮田もそのチームから参加することが明言された。

「はい、テストに行って乗る予定です。それがF2の最初の仕事になります。シミュレーターはしていません、一般的にもF2(マシン)はシミュレーターにはないので、想像の中でやります(苦笑)」と宮田。

 FIA F2はF1への登竜門カテゴリーとして知られている。当然、宮田もFIA F2に参戦することが最終目的ではないが、F1についてはどのような意識でいるのだろうか。

「当然、活躍できればそれが道筋として開けてくると思います。とはいえ、今僕がやっているのはWECチャレンジプログラム。F2に参戦しつつELMSという耐久レースにも参戦できるので、僕はヨーロッパでのレースの経験がないので、そういった意味でヨーロッパのいろいなコースや文化を経験したいですが、もちろんそれだけではない。ドライバーは結果を残すことが第一ですので、その先に開けた道ができれば、そこに向かうだけかなと思っています」と宮田。

 そのFIA F2というカテゴリーの印象についても宮田は答えた。

「今年、リアム・ローソン選手がスーパーフォーミュラに来て、彼は(2022年)F2でランキング3位で終えて、今年日本に来たので、彼のパフォーマンスを見てもレベルの高いシリーズだというのはよくわかりますし、F2に来ているドライバーは当然、F1を目指しているドライバーもいますし、WECでハイパーカーに乗りたいというドライバーもいます。そういう意味でも全体的にレベルが高いカテゴリーだというのはわかっています。ただ、僕はスーパーフォーミュラでチャンピオンを獲ったドライバーのひとりとして、恥ずかしくないパフォーマンスをするだけかなと思っています」と宮田。

「スーパーフォーミュラはいったん、出なくなりますけど、今年リアム選手と戦っていろいろなことが経験できました。スーパーフォーミュラとF2のクルマの違いを見れるというのは自分にとってすごくいい機会なので、本当に楽しみです。当然、スーパーフォーミュラはレベルが高いですが、僕がF2で結果を残さないとそれも証明できないので、しっかり結果を残してスーパーフォーミュラのレベルの高さを証明したいなと思います」と、楽しみとともに日本を代表する大きな役割を担うことを自覚している宮田。

 その宮田のF2参戦は、あくまでWECチャレンジプログラムの一環だ。WECとフォーミュラカーレースはレースフォーマット、そして使用されるマシンの特性などまったく異なる点が多いが、今回の件でこのプログラムが大きく拡大進化したことが中嶋一貴副代表の言葉から明らかになった。

「ドライバーからすると、本当にドライバーとしてのキャリアのパスの選択肢がより増えて、より様々な経験ができるようになる。そういう機会をモリゾウさんが後押ししてくださったのはありがたいと思います。僕自信、WECチャレンジプログラムという名前の中で、どうしても耐久レースだけに頭が寄っていたところが、今回、F2への挑戦という形で莉朋がチャレンジできるというのは、本当に自分が想像していなかった以上のこと。そういう可能性が残っているというのは、本当にありがたいと思います」と一貴副代表。

「正直、やってみないとわからないことがたくさんある中ですけど、やってみないと結果は出ない。F2という場で莉朋がどんな結果を出してくれるのか個人的にも楽しみにしていますし、プレッシャーをかけるつもりはないですけど、いちファンとしても楽しみなチャレンジだと思います。その中で莉朋が感じるものをしっかりと走りに反映してもらって、できれば結果を出してもらいたい。さっきF1の話も出ましたけど、結果を出せばそういうチャンスも開けてくる場だと思いますので、そうなったら思い切って羽ばたいてもらってもいいですし、そうでなくてもWECで活躍してもらえる。いろいろな可能性が広がるチャンスだと思うので、そのチャンスをぜひ、活かしてもらいたいと思います」と、宮田に期待を寄せる。

 小林可夢偉WECチーム代表兼ドライバーも、自身がFIA F2の前身のGP2に参戦していたことと比較して、現在のFIA F2の参戦メリットを説明する。

「正直、僕はGP2にいい思い出がないので(苦笑)、彼(宮田)にそういう経験をさせたくないなという思いで、しっかりサポートしていきたいなと思います。僕らの時に比べて一番違うのは、今のF2はヨーロッパ以外のサーキットも走るんですよね。僕らのGP2の時はほぼヨーロッパのサーキットしか走っていなかった。そういう意味ではヨーロッパ以外のいろいろなサーキットを走れるというのはすごくいい経験になるんじゃないかなと思います」と可夢偉。

 中嶋一貴副代表も、その可夢偉の意見に付け加える。

「WECのサーキットはほとんどがF1、F2で走るサーキットが多い。ドライバーの経験としてもF2はレース数(14ラウンド)が多いですしね。なかなかこんなに経験できることはないと思います。ピレリタイヤの経験も含めて、いろいろ新しい経験になるんじゃないかな」

 まずは早速、11月29日からのFIA F2アブダビテストが注目されることになるが、やはり気になるのは所属チーム。何度もしつこく聞くオートスポーツwebスタッフに、トヨタ自動車/Gazoo Racing Companyのモータースポーツ担当部長を務める加地雅哉氏がヒントをくれた。

「やはり勝てないというか、いい経験があまり期待できないチームだと時間を無駄にしてしまう可能性が高いので、きちんとレースで勝負ができるチームといいますか、それなりのチームからのお話を頂いて進めているという状況です」と加地氏。

「僕らWECを戦うにあたっても、やはりヨーロッパでいろいろな経験をしたドライバーが戦うべきだと思っていますし、F2というカテゴリーがドライバーの成長にすごく役に立つと思っています。今回のチャンスを後押ししてくれたトップマネジメントの方々に感謝していますし、ダブルタイトルを獲ってヨーロッパからオファーを頂いたので彼自身が実力で掴んだチャンス、しっかり我々がサポートしていきたいなと思います」と続ける加地氏。

 新たな局面に突入したWECチャレンジプログラム。そのプログラムを支える世界を経験してきた多くの先輩ドライバー、そしてTGRスタッフたちの心強い後押しを受けて、国内最強となったドライバーが自らのパフォーマンスで新しい世界への扉を開け、その挑戦権を手にすることになった。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

レッドブル&HRC密着:フロントタイヤへの熱入れを苦手にするRB20。弱点が露呈し初日は2台とも下位に沈む
レッドブル&HRC密着:フロントタイヤへの熱入れを苦手にするRB20。弱点が露呈し初日は2台とも下位に沈む
AUTOSPORT web
タイトルに王手のフェルスタッペンが苦戦、ミディアムで17番手「タイヤが機能せず氷の上を走っているよう」/F1第22戦
タイトルに王手のフェルスタッペンが苦戦、ミディアムで17番手「タイヤが機能せず氷の上を走っているよう」/F1第22戦
AUTOSPORT web
見かけ倒しでもいいじゃん! ルックスと性能が釣り合わないスポーツモデル5選
見かけ倒しでもいいじゃん! ルックスと性能が釣り合わないスポーツモデル5選
ベストカーWeb
2025年WEC暫定エントリーリストが発表。ハイパーカーは2社が撤退もLMGT3と同数の18台が参戦
2025年WEC暫定エントリーリストが発表。ハイパーカーは2社が撤退もLMGT3と同数の18台が参戦
AUTOSPORT web
【角田裕毅F1第22戦展望】昨年の反省をもとにセットアップを2種類用意。FP2で「だいたいの方向性は見つかった」
【角田裕毅F1第22戦展望】昨年の反省をもとにセットアップを2種類用意。FP2で「だいたいの方向性は見つかった」
AUTOSPORT web
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
ベストカーWeb
勝田貴元、パンクで後退も挽回「まだ諦められない。ファンの声援が力になる」/ラリージャパン デイ2
勝田貴元、パンクで後退も挽回「まだ諦められない。ファンの声援が力になる」/ラリージャパン デイ2
AUTOSPORT web
いよいよ正式発表!? デザイン一新の[新型フォレスター]登場か! トヨタHV搭載でスバル弱点の燃費は向上なるか
いよいよ正式発表!? デザイン一新の[新型フォレスター]登場か! トヨタHV搭載でスバル弱点の燃費は向上なるか
ベストカーWeb
荒野にポツンと1軒のカフェ!?…25ドルでキャンプサイトを確保。オーストラリアはトレイルも何もかもナメてかかってはいけません!【豪州釣りキャンの旅_10】
荒野にポツンと1軒のカフェ!?…25ドルでキャンプサイトを確保。オーストラリアはトレイルも何もかもナメてかかってはいけません!【豪州釣りキャンの旅_10】
Auto Messe Web
ローソン初日15番手「路面コンディションに苦労。今日の学習を役立て、トップ10に食い込みたい」/F1第22戦
ローソン初日15番手「路面コンディションに苦労。今日の学習を役立て、トップ10に食い込みたい」/F1第22戦
AUTOSPORT web
ボッタス、PUエレメント交換で5グリッド降格が決定。RB勢はエキゾーストを交換/F1第22戦
ボッタス、PUエレメント交換で5グリッド降格が決定。RB勢はエキゾーストを交換/F1第22戦
AUTOSPORT web
タナクが王座目指して猛加速。僚機2台はクラッシュ&失速、トヨタに選手権逆転の光明【ラリージャパン デイ2】
タナクが王座目指して猛加速。僚機2台はクラッシュ&失速、トヨタに選手権逆転の光明【ラリージャパン デイ2】
AUTOSPORT web
燃費と運転体験の両立 フォルクスワーゲン・ゴルフ GTEへ試乗 電気で最長130km走れるHV!
燃費と運転体験の両立 フォルクスワーゲン・ゴルフ GTEへ試乗 電気で最長130km走れるHV!
AUTOCAR JAPAN
北米の自動車博物館ハシゴ旅! 往年のF1GPカー「ペンスキーPC-1」に出会えて大感激!!…が、展示車両数の多さにすべてを見ることができずに大後悔…
北米の自動車博物館ハシゴ旅! 往年のF1GPカー「ペンスキーPC-1」に出会えて大感激!!…が、展示車両数の多さにすべてを見ることができずに大後悔…
Auto Messe Web
角田裕毅 初日10番手「一日のなかで状況を好転させ、方向性を見出した。Q3進出のため調整を続ける」/F1第22戦
角田裕毅 初日10番手「一日のなかで状況を好転させ、方向性を見出した。Q3進出のため調整を続ける」/F1第22戦
AUTOSPORT web
イモトアヤコ、600万円超の「“オシャ”ハイエース 」購入! 「車中泊楽しそう」「テンション上がる」反響多数のゴードンミラー「GMLVAN V-01」とは
イモトアヤコ、600万円超の「“オシャ”ハイエース 」購入! 「車中泊楽しそう」「テンション上がる」反響多数のゴードンミラー「GMLVAN V-01」とは
くるまのニュース
日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
AUTOCAR JAPAN
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
Auto Messe Web

みんなのコメント

6件
  • mas********
    自分から売り込んだんじゃなく海外のチームからオファーが来るなんて凄いことじゃん!
    是非頑張ってほしいね。
    トヨタもそろそろ本気でF1復帰を考えなきゃダダメなんじゃない?!
  • kam********
    恐らく大企業トヨタのバックアップも多少は有ったとは思いますが、それでもF2サイドからオファーが有ったのは素晴らしい事。
     此れは夢なんですが、空いた宮田のシートに野田樹潤を乗せて欲しいものです。モリゾウさんしかこの離れ業は出来ないと思います。SFで彼女が他のレーサーをオーバーティクする姿を是非見たいものです。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村