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【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#12 これが人生最後のレース!

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【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#12 これが人生最後のレース!

シワのひとつひとつに、『男の履歴書』を感じたい!

200万円で購入した先代マセラティ・クアトロポルテこと『大貴族号』は、その後もタコちゃん(マイクロ・デポ岡本和久代表)によって、没落部分の修復活動が続けられた。具体的には、次のような内容だ。

【画像】清水草一若き日の思い出と、納車に向けた整備中の大貴族号! 全8枚

・フロントに続いてリアサスペンションのラバー部品全とっかえ
・エンジンマウント交換
・グダグダになってドドメ色に変色したフロントシートリペア
・内装リペア
・ドアモール磨き

それらの作業(苦行)の様子をマイクロ・デポのブログで見ていると、「もう、そのくらいでいいです……」という気になってきた。自分は、ピカピカのクルマが欲しいわけじゃない。

むしろ、顔に刻まれたシワのひとつひとつに、『男の履歴書』を感じたい。パックリ開いた傷口(例:走行中、激しい音と振動を発するサスペンションや、ドドメ色に変色したシート)は治療してほしいけど、シワ程度ならあってもいい。

白サビに侵食されたドアモール磨きが、1日かけて左側しか終わらなかった様子をブログで見た私は、タコちゃんに「右側はそのまま残すというのはどうでしょう……」と、遠慮がちにメッセージを送った。

ピカピカを目指す彼としては許せないかもしれない。でも、左側だけピカピカのほうが、違いのわかる男っぽくてイイんじゃないか。間もなく梅雨入りが予想されていたので「納車はいつごろに……」とも付け加えた。

すると即座に、「じゃ3日後に納車でどうですか」と返信が来た。ええっ!? まだまだかかるかな~と思ってたのに! さすが違いのわかる男!!

これってあの時と同じだ!

2月下旬の購入から約3ヵ月半。急転直下、大貴族号納車の日がやってきた。

通常、カーマニアにとって納車はルンルンだ。人生の中でも、指折りの晴れの日である。しかし私は不安でいっぱいで、むしろ気が重かった。走る時限爆弾(注:不安神経症による思い込みです)が、ついに自分の元にやってくるのだから。

納車がこんなに不安で大丈夫だろうか。すぐに手放したくなっちゃうんじゃないか。メカトリエ(つくばにあるマイクロ・デポの拠点)へ向かう道すがら、そんな思いがよぎったが、その時ふと思い出した。

(これってあの時と同じだ)

あの時とは、32年前、初めてフェラーリの納車を迎えた日のことである。

あの日私は、うれしさはほとんどなく、ただただ不安だった。

当時、中古フェラーリは、時限爆弾そのものと信じられていた。そもそも庶民がフェラーリを買うなんて、とんでもないバチ当たり。札付きのバカ息子しかやらない穀潰しの極北的行為である。ああ、オレは今後「あのバカ息子、フェラーリなんか買ったよ」と指さされつつ、数々の困難に見舞われるのか。

いや、それでもやめられない!

フェラーリを買わずには死ねない!

なぜならフェラーリは、地上唯一の自動車芸術だから!

オレの魂を震わせてくれるのはフェラーリだけ!

これからどんな試練が待っていようとも、乗り越えるのが宿命なのだ!!

たったの300万円で、これだけ不安になれる!

そう思いつつ、1000万円以上の現金を持参して(!)田園都市線・南町田の駅に降り立ち、店に向かった。

それに比べたら大貴族号は、たったの200万円! それでフェラーリV8エンジンが付いている。プラス整備費がだいぶ行っちゃってそうだけど、それでも300万円以内だろう。あの時と比べると、超ウルトラハードルが低い!

つーか、300万円ぽっちじゃ、国産車だってそうそう買えない世の中じゃないですか。そう考えると、大貴族号はものすごくお買い得だ。たったの300万円で、これだけ不安になれるんだから!

ルンルンの納車なんてロマンがない。約束された勝利でしかない。ガチなレースのスタート前は、誰だって緊張する。この不安はソレだ! これからオレは、大貴族号とのレースに突入するのだ! 人生最後のレースに!

(つづく/隔週金曜日掲載、次回は7月4日金曜日公開予定)

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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