■「タイヤへの窒素ガス充填」は飛行機からはじまった
愛車のタイヤへ空気を入れる代わりに「窒素ガス」を入れるサービスがあります。
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一部のカー用品店では、タイヤを購入すると無料でおこなってくれたり、有料で窒素を充てんするタイヤ販売店やガソリンスタンドもあり、目にすることも少なくありません。
そんなタイヤへの窒素ガス充てんには、どんなメリットがあるのでしょうか。
最初にタイヤに窒素ガスが充てんされはじめたのは、じつは自動車用のタイヤではないようです。
それは飛行機です。国内大手の航空会社である日本航空株式会社に話を聞いてみました。
「航空機のタイヤは過酷な用途で使われます。着陸時には路面との摩擦でかなり高温になります。そして期待の重量も数百トンもあることで、タイヤへの負担は相当なものになります。もし、不測の事態が起きた場合、酸素が含まれない窒素ガスを充てんしたほうが、火災等が起こる可能性を最小限にすることができます」(同社広報)
そしてもうひとつ、特殊な環境であることも窒素ガスを充てんする理由だそうです。
「航空機の主流となるジェットエンジンを搭載した機種は、高度1万mと高い所まで上昇します。その際、外気温はマイナス60度という、極低温の環境におかれます。
そういった環境下では、当然、水は凍結してしまうため、もしタイヤに空気を充てんしていた場合、空気に含まれていた水分がタイヤ内に影響を及ぼし、空気圧は急激に低下します。高度を徐々に下げて着陸するまでに、もしも空気圧が戻らなければ大変危険な状態になります。
一方で、タイヤへ空気を充てんしていた場合は、着陸時にも危険が生じます。先の話と重複しますが、空気中の水分は高温時には水蒸気となり、体積を膨張させるので空気圧が一気に高まる危険性があります。よって、航空機のタイヤには窒素ガスを充てんしています」(同社広報)といいます。
つまり、地上から高い高度まで極端な外気温の変化に対応するために飛行機のタイヤには窒素ガスの充てんが必須というわけです。いつからそうした取り組みが行なわれているのか、続けて聞いてみましたが「残念ながら詳細は不明です。しかし、相当以前から使用されていると聞いています」とのことです。
飛行機の歴史は長く、さらにジェットエンジンを搭載した飛行機が高高度を飛ぶようになって、かなりの年月を経ています。そうした歴史を振り返ると、タイヤに窒素ガスを充てんする取り組みは、相当以前からおこなわれているのではと推測されます。
■レースシーンでは昔から窒素ガスが使われている
ところで、窒素ガスを充填することは、なぜふつうの空気を入れるよりも良いのでしょうか? そもそも空気だって約80%が窒素なので、窒素100%のガスを入れるメリットがなさそうに感じてしまいます。
窒素ガスは、製造工程でほとんどの水分が除去されます。ここが大きなポイントです。
水分が除去されることで、気温が暑くなったり寒くなったり、また走行したことでタイヤが熱くなっても、水分が含まれていないことで、それらの事象に左右されることなく常に一定の圧力が保たれます。
さらに分子レベルでいうと、空気に含まれる酸素よりも窒素の方が分子の構造が大きいので、結果として空気よりも抜けにくいということが挙げられます。
※ ※ ※
さて、カー用品店などでタイヤに窒素ガスを充てんするサービスが始まる前から、クルマ好きの間では一部の業界で使われていることが知られていました。それはレース競技です。
日産のモータースポーツ活動を担うNISMOによると「レースではタイヤを交換する時に使うインパクトレンチや、レースカーを素早くリフトアップするエアジャッキなどに窒素ガスを使っています。高圧で力が必要であることと、安価であることが窒素ガスのメリットです。
もちろん、タイヤの充てんにも使っています。窒素ガスをタイヤに使い始めたのは、いつ頃かはハッキリしていませんが、エアジャッキがレースで使われ始めたのが1983年あたりからなので、おそらくその年代からだと思います」とのことです。
では、タイヤへの窒素ガスの充てんは、実際のレースシーンではどんなメリットがあるのでしょうか?
実際にワンメイクレースに参戦する人に話を聞いてみたところ「タイヤの空気圧はシビアで、やはりタイムに差が出てくるので、窒素ガスを充てんして使っています。エア抜けしにくいと感じます。また熱ダレに強い、という話は聞きますが、それはそんなに感じたことはありません。でも、空気圧が安定しているというのは間違いないですね」といいます。
※ ※ ※
いまではカー用品店やタイヤ販売店、ガソリンスタンドなどでも窒素ガスを充てんするサービスが広がっています。実際にカー用品店でどのような案内をしているのか聞いてみました。
「ウチのお店では、タイヤ購入のお客様に無料で充てんしています。窒素ガスだとエア抜けしにくいことや、タイヤが減りにくいといった利点を説明しております。充てん後1年間は、補充無料です。有料での充てんもおこなっており、その場合1本540円で提供しております」(東京23区大手カー用品店ピット担当)
「タイヤを購入していただいたお客様に無料で充てんしています。充てん後は、そのお買い上げいただいたタイヤを装着している限り、補充は無料です。有料での充てんも承っております」(東京23区タイヤメーカー系店舗売り場担当)
さて、ここまでメリットばかり取り上げましたが、実際に普段クルマを使う上で役に立つのでしょうか。
先ほど紹介したワンメイクレースに参戦している人に、普段から愛車にも窒素ガスを充てんして使っているのか、聞いたところ「(窒素ガスを)充てんしてくれる所が限られているので、普段はふつうの空気を入れて使っています。それにエアが抜けづらいといっても、ほったらかしというのは信条的にイヤ。なので、普段は1カ月に一度は空気圧をチェックして、入れています」といいます。
カー用品店でも「窒素ガスを入れるとエア抜けがしにくいからといって、メンテナンスフリーではなく、徐々に抜けていきます。ですので、まったく空気圧を点検しなくても良いということではないと説明しています」とのことです。
窒素ガス充てんのメリットは確かにありそうですが、充てんできる場所が限られてくるのと、タイヤの空気圧を日常的に見る人にとって、メリットはそんなに多くないようです。
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みんなのコメント
期待を担いすぎ(笑)