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生誕50周年を迎える“スーパーカー”の代名詞・カウンタック──イタリアを巡る物語 vol.11

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生誕50周年を迎える“スーパーカー”の代名詞・カウンタック──イタリアを巡る物語 vol.11

往年の名車がメモリアルイヤーを迎えた時、ラグジュアリーブランドはその“過去の遺産”をアピールし、少数の尖った顧客たちを惹きつける。スーパーカーブームの立役者、カウンタックも2021年に生誕50周年。イベント、実車はもちろんグッズなども数多く登場するに違いない。そこで、まずは“蘇った”あのグッズから、カウンタックの話をはじめよう。

メモリアルイヤーでヘリテージをアピール

アプリリアRSV4 1100 ファクトリー──世界中のジャーナリスト達の「お気に入りマシン」

当連載においても取り上げたランボルギーニ ディアブロは昨年が生誕30周年、そしてデ・トマソ パンテーラも生誕50周年のメモリアルイヤーであった。さらに、本年2021年も大きなインパクトを持つメモリアルイヤーが続く。マセラティ ボーラ、そしてランボルギーニ カウンタックがそれぞれ生誕50周年となるのだ。

この”切りの良い数字”に基づく、メモリアルイヤーは、少量生産スポーツカーメーカーなどのラグジュアリーブランドにとって、使い勝手のよいツールだ。量産メーカーであれば、「ニューイヤー拡売キャンペーン」のような“のぼり”をショールームの外に並べ、顧客を呼び込めばいいのだが、こういった特別なブランドは、選ばれた顧客だけを対象としてセールス活動を行うというのが基本スタンスだ。つまり、誰にでも平等に売り込んでしまったら、その希少性を毀損してしまうことになる。だから、ブランドの価値をさりげなく訴えかけるツールとして、生誕何年という、ブランドが生み出した過去の遺産をアピールして、尖った顧客の関心をあおる。

連載第1回目の記事中、ディアブロのチーフエンジニアであったルイジ・マルミローリは、ディアブロが近年、ランボルギーニ各モデルの中で、オフィシャルにスポットが当たることが少ないと嘆いていた。その背景にはメーカーの微妙な思惑もいろいろと絡んでくる。マセラティも今年はビトゥルボが生誕40周年を迎えるが、これも歴史的な経緯などの理由がからんで、メーカーとしてはあまりその存在をフィーチャーしないのではないかと私は考えている。

少年少女を虜にした“スーパーカー消しゴム”

いっぽう、生誕50周年を迎えるカウンタックに関しては、ランボルギーニは、そのDNAが現行モデルに受け継がれていることを今までも大いにアピールしてきた。だから、カウンタック生誕50周年の機会を最大限に利用するはずだ。カウンタックに関連するイベントが幾つも実施されるであろうし、実車だけでなく、関連アイテムでも既に賑わっている。ランボルギーニ社と直接ライセンス契約をおこなっているモデルカーメーカーの京商は、カウンタックだけでも、1/64から1/12のスケールまで20種類に及ぶラインナップを用意している。今年はカウンタック50周年に向けてさらに興味深いモデルが追加されるだろう。

カウンタックは日本全国の少年少女達を虜にした1970年代のスーパーカーブームにおける立役者でもあった。そのブームの蔭の立役者といえば、スーパーカー消しゴムではないだろうか? 文具品というエクスキューズのもとに、当時の少年達はボクシーのボールペンと共に筆箱へとそれを収め、わくわくしながら登校した。休み時間には各々の机の上を仮想サーキットとして、スーパーカー消しゴムをボールペンのボタンで弾くレース活動に熱中したのだ。ちなみにこの“マシン”は消しゴムと名は付くものの、鉛筆で書いた文字を消すという本来の機能は持っていなかった。そして、このスーパーカーブームの象徴たるスーパーカー消しゴムにおいても、カウンタック人気は圧倒的であった。

しかし、この日本独自のスーパーカーブームは、あっという間に消え去り、スーパーカー冬の時代がやってくる。とはいえ、多感な少年期に植え付けられたスーパーカーDNAは、少年達が立派なおじさんへと成長しても決して消え去ることはなかった。それどころか日本における現在のハイパフォーマンスカー人気を支える原動力となっている。

さて、このブームの消滅と共に消え去ってしまったスーパーカー消しゴムが、まさにこのカウンタック生誕50周年を祝うかのように蘇ったことをご存じであろうか? 現代は商品として販売する以上、商標や意匠権などをクリアしなければいけないから、スーパーカー消しゴムを作るには高いハードルがある。モデルカー同様に、メーカーとライセンス契約をしなければ作ることは出来ないのだ。また、それなりのロイヤリティを支払わねばならないという経済的負担のほかに、オフィシャル・プロダクトとして認められる高いクオリティもスーパーカー消しゴムには要求される。

giuliano berti思い出して頂きたい。当時のスーパーカー消しゴムは、”言われてみればカウンタック”のようなシェイプでしかなかった。現代において、メーカーからオフィシャル・プロダクトとして認定されるには、かなりの精度をもった仕上がりが要求される訳だ。こうしたハードルゆえ、スーパーカーブーム以降、スーパーカー消しゴムを復活させるのは容易なことではなかったのだ。

Kay.Tしかし、今回子供達にスーパーカーの魅力を伝えたいという想いを持つ、スーパーカー世代の勇者(!)が登場した。彼はLP400Sと50thアニバーサリーの実車を所有するカウンタック・ファンでもあるのだが、ビジネスを考えずにスーパーカー消しゴムプロジェクトを立ち上げたのだ。幸いなことに、日本には詳細にいたるまで精確なキャラクターを造型できる消しゴムメーカー、イワコーが存在する。彼らのハイレベルな製造技術とプロフェッショナル・モデラーの手による3Dデータのコンビネーションにより文句のないクオリティのカウンタック・スーパーカー消しゴムが完成したのだ。ランボルギーニ社の担当者もこの驚愕のクオリティを前に異論はなく、晴れてスーパーカー消しゴムが公式に復活したのである。

charliemagee.comランボルギーニのDNAを確立したフラッグシップ

さて、話をカウンタックの実車へと戻そう。カウンタックはフラッグシップモデルとして、ランボルギーニのDNAを確立すること、そして大排気量市販ミドマウントエンジンモデルのパイオニアであるランボルギーニ・ミウラに生じた数々の問題点を解決すること、という2つの使命を持って誕生した。そして彼らは独自のエンジンレイアウトを開発するという素晴らしい成果を挙げた。ドライバビリティ、快適性、エンジンの安定性など、ミウラで判明した問題点はほぼすべてエンジン横置きレイアウトに由来するものであった。そこで、カウンタックは新たに縦置きレイアウトを採用するのだが、このレイアウトではホイールベースが長くなりすぎてしまうという欠点があった。そこで、カウンタックでは、縦置きでありながら、通常とは180度違う向きにエンジンを配置し、トランスミッションをフロントに置くという斬新なレイアウトを採用した。このレイアウトによって、ホイールベースは横置きのミウラより短い2450mmを実現したうえ、トランスミッションから長いリンケージを介す必要がなくなったことで、ミウラにおいて悩まされたシフトフィーリング問題も解決された。

charliemagee.comまた、カウンタックではもう1つの大きな改良が行われた。ミウラではフロントのラジエターからリアのエンジンへと通ずる長いラジエターホースが、サイドシル内を通っていた。これは12気筒エンジンの発生する高い熱量と相まって、ミウラの室内を蒸し風呂状態にし、多くの顧客からのクレームを招いた。カウンタックにおいてはラジエターを後部のエンジンルーム内へと移動し、スペース確保のために、左右に小型のものをひとつずつ分離して配置したから、重量配分の点でも好ましいものとなった。さらに、この新たなレイアウトは、カウンタックの低く、短いオーバーハングの特徴的なスタイリングを実現することにも大きく寄与するものとなった。

注目すべきは、このカウンタックにおいて採用された独特のV12エンジンレイアウトが、50年を経たランボルギーニのフラッグシップであるアヴェンタドールにおいても継承されている点である。だから、ランボルギーニが今年、カウンタックのユニークさ、その先進性などに焦点を当てて祝うことは誠に理にかなっている訳だ。

表舞台に立つことにあまり関心のない、カウンタックのデザイナーであるマルチェッロ・ガンディーニ先生や、テストドライバーの(彼は非常にフレンドリーだが)ヴァレンティノ・バルボーニは、リアルにせよヴァーチャルにせよ、カウンタック生誕50周年イベントに引っ張りだことなるであろう。何よりも残念なのは、カウンタックのユニークさを作り上げた仕掛け人― チーフエンジニアであり、当時、ランボルギーニのジェネラル・マネージャーでもあった、パオロ・スタンツァーニが、既に鬼籍に入ってしまっていることだ。晩年の彼から何回にもわたって聞いたカウンタック開発の話なども含め、次回でもカウンタックを取り上げてみようと思う。(つづく)

文・越湖信一 編集・iconic

Photo & Text   Shinichi Ekko   EKKO PROJECT
Special Thanks: Automobili LamborghiniS.p.A. GGF-T

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