サーキットでも輝いていたマルティニ・カラー
マルティニ・カラーのランチアと言われると、思い浮かぶのはやはりラリーカーという人が多いでしょう。しかし、その象徴的なストライプはサーキットでも輝いていました。イタリア・トリノ郊外にあるマカルーゾ・コレクションには、耐久レースの世界で戦った名車たちがラリーマシンとともに佇んでいました。今回は、マルティニ・カラーを纏った3台のレーシングカーに注目。栄光と挑戦の歴史を振り返ります。
ラリーファンを熱狂させた3台の“マルティニ・カラー”!イタリアの秘蔵ガレージに独占潜入
レーシングカーも所蔵するマカルーゾ・コレクションの魅力
前回でも少し触れていましたが、マカルーゾ・コレクションを訪れたのはイモラ・サーキットで開催された「ヒストリック・ミナルディデイ」を取材した翌日のこと。イモラからミラノ郊外のペンションに移動し、ホンダのバイク・フリークだというペンションのオーナーと話が弾んだ(ネイティブなイタリアーノは、伊語はとてもじゃなく、英語さえもたどたどしいエトランゼに優しく、ゆっくりとした英語で話してくれたから、何とか理解できました)ことで、少しだけ睡眠不足を感じながら、トリノ郊外にあるマカルーゾ・コレクションに向けて早朝に出発。とくに渋滞もなく約束した10時前に到着。まだ見ぬコレクションのクルマたちとの邂逅に期待を高めつつ、故ジーノ・マカルーゾ氏の夫人、モニカ・マカルーゾさんとの約束の時を待ちました。
故ジーノ・マカルーゾがかつてラリーのナビゲーターとして活躍していた経緯や日本国内でのさまざまな企画もあって、マカルーゾ財団のコレクションというと「ラリー車両」のイメージが強いと思います。ところがレーシングカーも収蔵されています。今回はそのなかから3台の「名機」を紹介することにしましょう。
世界選手権を3連覇したベータ モンテカルロ ターボ
まずはランチア「ベータ モンテカルロ」から。同じくマルティニ・ストライプに飾られていることもあって、前回紹介したランチア「ラリー037」に似たイメージを持っていますが、それも納得の理由がありました。
ベースモデルのランチア ベータ モンテカルロは、ランチアのミディアムクラス「ベータ」を名乗ってはいましたが、じつはミッドシップエンジンの後輪駆動。シャシーは他のベータ ファミリーとはまったくの別物で、当初はフィアット「X1/9」の兄貴分として「X1/20」の名で開発が進められていました。しかし開発の途中から、販売のためのイメージ戦略としてより高級感を持ったランチア・ブランドで販売されることになり、ベータ シリーズの一員としてデビューした経緯があります。
そのベータ・モンテカルロをベースにして、1979年の「世界メーカー選手権(World Championship for Makes。略称WCM)」に向けて開発したグループ5レーシングカーが、今回紹介するランチア ベータ モンテカルロ(搭載したエンジンからモンテカルロ ターボとも)です。
ベースモデルとスタイリング的には似ていますが、センターの車室部分だけを残してモノコックの前後を切り落とし、パイプでスペースフレームを組んだ純レーシングカーに生まれ変わっていました。イタリア自動車界のゴッドファーザーにも例えられるフィアットが主導し、エンジンをアバルトが、シャシーをダラーラが手がけるという、まさにオール・イタリアな有力マシンとなりました。
1979年のWCMではDiv.2(2L以下のクラス)でチャンピオンに輝くとともに、総合ランキングでも2位を獲得。翌1980年、そしてWCMから世界耐久選手権(WEC)へとシリーズ名が変更された1981年まで、Div.2を3連覇しています。マカルーゾ・コレクションの個体は1980年式で、同年のムジェロ6時間には2001ccエンジンに換装してDiv.1に参戦し、見事総合優勝を飾っています。
1年限りの勝負で生まれたLC1という存在
続いてはWECで活躍したLC1とLC2ですが、じつはこの2台、取材当日にはマカルーゾ・コレクションのワークショップには不在でした。前日にイモラで開催されていたヒストリック・ミナルディデイに参加していたため、訪れた日はイモラからトリノのワークショップへの移動日だったのです。そのためトリノで出会うことは叶いませんでしたが、ヒストリック・ミナルディデイで取材したときの写真を使って紹介していきましょう。
LC1は1982年のWEC参戦に向けてランチア・コルセが投入したグループ6マシンです。シリーズがWECに変わった1981年までの主戦マシンはグループ6のオープン2座レーシングカーでしたが、1982年からは新設のグループCへと移行します。ただし1982年シーズンは移行措置として2L以下のグループ6も参戦可能とされ、パワーは小さいものの燃料総量が規制されていない分、グループCに対して有利ではないかとの判断から、この1シーズンのためだけにブランニューのグループ6マシンが開発されることになりました。
具体的には、ベータ モンテカルロ ターボで実績のある1425cc直4ターボ(ターボ係数をかけても2L以下の1995cc)を、ジャンパオロ・ダラーラが手がけたアルミモノコック・シャシーに搭載。完成したLC1は開幕戦モンツァでポールを奪い、続くシルバーストンとニュルブルクリンクを連勝するという上々の成績を残しました。マカルーゾのLC1は、スパ・フランコルシャンで3位、ムジェロでポールポジション、最終戦の富士スピードウェイでポールポジションから2位入賞を果たした個体そのものです。
グループCマシンとして2.6L V8ツインターボを搭載する「LC2」
1982年はオープン2座のグループ6で戦ったランチア・コルセも、車両規則が全面移行した1983年にはグループC規定に則ったニューマシンを登場させています。これがLC2で、フェラーリ「308」のエンジンをベースに新設計の2.6L V8ツインターボ・エンジンを開発し、引き続きダラーラが手がけたアルミモノコック・シャシーに搭載しました。
空気抵抗を低減してトップスピードを稼ぎつつ燃費向上にも寄与させるべく、制限サイズの2000mmより200mmも狭いナロートレッドとするなど、独自のコンセプトは当をえたものでした。王者のポルシェに先んじて何度もポールを奪う速さを見せたのですが、信頼性不足などがたたり、勝利数はワークスとして活動した3シーズン余りでわずかに3勝。マカルーゾが所蔵するLC2は、1983年にモンツァやイモラでポールを奪い、1985年のスパ・フランコルシャンでポール・トゥ・ウィンを飾った個体です。
マカルーゾ・コレクションにはもう1台、気になるマシンが収蔵されていました。それがリジエのF1マシン、1979年式のJS11/15です。こちらについてはこれから周辺取材を進めて、また別の機会に詳しく紹介しようと思っています。
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