モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、全日本ツーリングカー選手権を戦った『HKS SKYLINE』です。
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『ニッサン・スカイラインGT-R(BNR32型)N1耐久編』N1でも不変だったGT-R伝説【忘れがたき銘車たち】
1990年にグループA時代の全日本ツーリングカー選手権(JTC)にデビューし、それからグループAの終焉まで29戦無敗という偉業を成し遂げたBNR32型のニッサン・スカイラインGT-R。
そんなR32 GT-Rの活躍は以前にこの連載でもお伝えしたが、今回はR32 GT-R勢のなかでも、2023年に創業50周年を迎えるチューニングパーツメーカー、HKSがオリジナルエンジンチューンを施して走らせたR32 GT-R『HKS SKYLINE』について紹介したいと思う。
前述の通り、1990年にJTCにデビューし、あっという間にシリーズを席巻したR32 GT-Rは、その後ニスモからプライベーター向けにグループA仕様のコンプリートカーが販売された。
これによって1991年以降、R32 GT-RでJTCに参戦するチームが増え、JTCのディビジョン1は、R32 GT-Rのワンメイク状態になっていった。この販売されたコンプリートカーというのは、日産工機製のRB26DETT型エンジンを標準で搭載しており、そのエンジンを使うチームが大半だったのだが、一部独自にエンジンを開発して、JTCへと挑むチームも現れていた。そのひとつがHKSだった(もうひとつはFET SPORTS)。
HKSはまず、車両に加えてエンジンパーツをニスモから購入して、そのパーツを使って組み上げ、実戦へと投入した。そして経験を積んだのち、1992年後半よりHKSオリジナルのパーツを組んだ独自チューンのエンジンで戦うようになっていった。
標準の日産工機製エンジンは、どんなサーキットでも対応できるよう安全マージンをとって、過給圧を抑えるなどしていたユーザーライクなエンジンだったのだが、HKSではその安全マージンを削って独自にチューニングを施した。バルブタイミングや過給圧の特性を変えることで各サーキットに合わせて、エンジン特性をオリジナルECUなどを使い変更していた。
さらにエンジンのみならず、4WDシステムの制御にも挑戦。これもサーキット特性によって独自にチューニングを施していた。当初、HKSチューンのRB26DETTはトラブルも多かったのだが、研鑽を重ね、徐々に完成度を高めていき、1993年にはついに表彰台の頂点へと到達する瞬間が訪れた。
そのレースは、スポーツランドSUGOで開催されたシリーズ第3戦。ここで羽根幸浩、萩原修組のHKS SKYLINEが、まずポールポジションを獲得する。決勝前のフリー走行ではエンジンブローし、急遽エンジンを交換するというトラブルに見舞われてしまったが、肝心のレースではスタートからトップの座を譲らず、徐々に後続との差を広げていった。
しかし残り10周ほどというところで単独スピンを喫し、アンデルス・オロフソン、影山正彦組のカルソニックスカイライン(※オロフソンは全日本F3000選手権戦でのクラッシュによる影響で欠場した星野一義の代役)に首位を奪われてしまう。
これで万事休すかと思われたが、カルソニックはトラブルによってスローダウン。ベースが落ちたカルソニックを最終周で再びHKSがパスし、トップでフィニッシュラインを通過した。
幸運に恵まれた面もあったが、予選での最速タイムやレースの大半をリードしていたことなどからもわかる通り、HKSオリジナルチューンのR32 GT-Rが“本家”ニスモのマシンを超えた瞬間、といえる価値ある一勝だった。
その後、グループAマシンによるJTCは終焉を迎えてしまうが、その後もHKSオリジナルチューンのRB26DETTで培われたノウハウは、ドラッグレースなどにも転用されていった。ひいては今日に至る製品開発にも役立つ、HKSの大いなる財産となっていることだろう。
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みんなのコメント
エンジンオイルの粘度が0W-20だったそうだ
油温管理をすれば油膜は確保できたんだとか