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悩みや不安を吹き飛ばす疾走感 モーリス・ミニ・クーパーS(2) 宙に浮く内側のフロントタイヤ

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悩みや不安を吹き飛ばす疾走感 モーリス・ミニ・クーパーS(2) 宙に浮く内側のフロントタイヤ

970ccと1275ccエンジンへ順に換装

BMCのワークス部門が用意した、モーリス・ミニ・クーパーS。1964年には、オランダのチューリップ・ラリーやアルプス山脈を越えるアルペン・ラリーのプラクティス車両として活躍する。新しいハイドロラスティック・サスペンションの、試験台にもなった。

【画像】ワークスの熱意は想像の遥か上 ミニ・クーパーS ジョン・クーパー名乗る現代のミニ 全143枚

翌年は、モナコ周辺で競うラリー・モンテカルロの1Lクラス参戦を目指し、970ccエンジンへ置換。ところが、スタート地点へ向かう途中にコンロッドが破損。棄権している。

英国へ戻されると、グレートブリテン島中部、ハダーズフィールドで開かれた第10回国際警察ラリーへ向けて、1275ccエンジンへ交換される。シャシー番号K/A2S4/384848はペナルティなしで完走し、国際部門で優勝。他にも5部門で勝利した。

1966年に再びプラクティス車両へ登用された後、BMCのディーラーを営むオズワルド・ティロットソン氏へ売却。複数のオーナーによって、ラリーやヒルクライムへ参戦するが、1983年に放置状態で発見される。ボディがグリーンに塗られた状態で。

カーブへ貪欲に食らいつく姿勢が快感

クーパーSを救ったのは、ミニの専門家で、購入を決めたロバート・ヤング氏。1275ccエンジンを積んでいた、1965年仕様へ丁寧にレストアされた。2024年にもリビルドを受けており、素晴らしい状態が保たれている。

このK/A2S4/384848は、3種類のクーパーS用エンジンがすべて積まれた、唯一のワークス仕様ミニだと考えられている。8 EMOのナンバーは、当時のままだ。

既に1275ccエンジンは温まっている。交通量の少ない丘陵地帯で、ラリー・ミニの本領発揮と行こう。平凡なクルマを、戦闘力の高いマシンへ生まれ変わらせる能力に長けていた、BMCのワークス部門だったが、このクーパーSは代弁者だといっていい。

カーブへ貪欲に食らいつく姿勢が、実に快感。フロントの反応は、若手コメディアンのツッコミ級に素早い。現代のモデルへ乗り慣れたドライバーは、モトリタ社製ステアリングホイールのダイレクトさに舌を巻くはず。

近年のスポーツカーを驚かせる充分な速さ

キャスター角が調整され、セルフセンタリング性の強いリムを握る手のひらへ、鮮明に情報が伝わる。無駄なく動くシャシーと、見事にシンクロしている。スキがなく、ドライバーが乗り慣れるほど速度域も高まる。

タコメーターは、殆ど見なくて大丈夫。エンジンが放つすべてから、6500rpmのシフトアップ・タイミングを理解できる。スピードは、流れる景色の勢いで大体わかる。ギア比がショートで、100km/hはトップギアで4500rpm。違反の心配は少ない。

3000rpmを過ぎると、Aシリーズは本域で唸り始め、5000rpmで吠える。トルクがリニアに高まり、近年のスポーツカーを驚かせるのに充分な速さを引き出せる。シフトレバーは曖昧だが、3速と4速の間なら、丁寧に動かせば問題ない。

ヘアピンでは、ボタンを押さずにレバーを上下できる、サイドブレーキが便利。ギアはストレートカットだが、ノイズは抑えられている。ステアリングホイールが低く伸び、快適性にも配慮されている。

あらゆる悩みや不安を吹き飛ばす

簡素なキャビンは、血気盛んなミニにピッタリの雰囲気。助手席側には、ハルダ社製のツインマスター・トリップメーター。コ・ドライバー用の、マップライトも残る。

4点式シートベルトを占めると、イグニッションキーにすら手は届きにくい。飛ばすと、フロントウインカーが点灯しなくなるようだが、これはBMCらしい不具合だ。

クルマをお返しする前に、もうひと回りしよう。右足を踏み込めば、クーパーSは間髪入れず突進を始める。あっという間に、景色が後ろへ流れていく。S字カーブでの容赦ない身のこなしへ、笑みが浮かぶ。内側のフロントタイヤは、宙に浮いているはず。

小さなボディに、みなぎるエネルギー。運転している限り、あらゆる悩みや不安を吹き飛ばしてくれる。クーパーSのステアリングホイールを握るのは久しぶりだったが、過去1番に楽しいミニだった。

協力:ブロード・アロー社

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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