今から20年ほど前、新しい世紀に変わる頃。クルマに対する考え方も変わり始めていた。そんな時代の輸入車ニューモデルのインプレッションを当時の写真と記事で振り返ってみよう。今回は「ジャガー Sタイプ」だ。
ジャガー Sタイプ(2002年)
イギリスを代表する自動車メーカーの名門、ジャガーが紆余曲折の末フォードの傘下に入り、その新しいコラボレーションによって1999年に登場したのが「Sタイプ」だ。そのスタイリングは、まぎれもなくジャガーそのもの。とはいえ、乗り味などにはベース車である親会社フォードのリンカーン LSと大きく変わらないなどと揶揄されることもあった。
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そんなSタイプが、多岐に渡るリファインとニューエンジンを携えて新登場した。つまり、マイナーチェンジである。Sタイプは世界的に成功を収めているが、プレミアム ブランドにふさわしい内容の充実を図ったというわけだ。1960年代の名車、マークII Sタイプの流れを汲んだスタイリングはほぼそのままだが、中身は別モノに近いほどの進化を遂げている。
とくに、その印象を強く感じたのは、3LのV6エンジンと「CATS」と呼ばれる電子制御アダプタブルダンピングのサスペンションを組み合わせた、3.0スポーツだった。タイヤと路面がきわめて滑らかに接地している感覚が印象的だ。しかも、ボディはフラットライドで、スポーツというサブネームが与えられてはいるものの、その乗り味は高級車らしい。
一方、ハンドリングに関してはハードなコーナリングを試みてはいないが、素直にロールを発生させつつ、シャープな旋回性能を満喫できるものだった。CATSとは「猫足」を重ね合わせた略称であることは明らか。ジャガーの乗り味を代表する言葉として長らく使われてきた「猫足」だが、そのテイストを味わうのに最適なものに仕上がっていた。「ジャガーらしい、しっとりとした乗り味とドライバビリティの両立」を徹底的に追求したという。
そんな優れた乗り味を実現したのは、単純にサスペンションのセッティングを変更したり、電子デバイスに頼ったためではない。前後のサスペンションはメンバー部分からすべて刷新され、ジオメトリーからして大きく変わっている。アルミニウムの鍛造部品やマグネシウム合金などの高価な部材を惜しげもなく採用しており、マイナーチェンジ前の揶揄を払拭すべく、いわば「徹底的にやり直した結果」なのだ。
こうした取り組みは、もちろん新投入された2.5LのV6、ラグジュアリー志向の強い標準仕様である3LのV6、そして排気量を拡大して4.2LとなったV8にも着実に反映されている。そしてトップエンドには406psを発生する「R」が控える。組み合わされるトランスミッションは、いずれもZF勢の6速AT。レスポンスの良さはもちろん、従来型の5速よりも単体重量では軽く仕上がっている。
さらに嬉しいことに、インテリアのクオリティもかなり向上している。デザインこそ変更は最小限だが、スイッチ類やインテリアパーツの組み立て精度が、さらにきめ細かくなっている。クラフトマンシップという形容にふさわしい雰囲気を漂わせている。マイナーチェンジされたSタイプは、見た目以上に大幅な進化を遂げていたのだった。
■ジャガー Sタイプ 3.0 V6 主要諸元
●全長×全幅×全高:4380×1820×1445mm
●ホイールベース:2910mm
●車両重量:1720kg
●エンジン形式:V6・DOHC・FR
●排気量:2967cc
●最高出力:179kW(243ps)/6800rpm
●最大トルク:300Nm(30.6kgm)/4500rpm
●トランスミッション:6速AT
●タイヤ:225/55R16
●車両価格(当時):620万円
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