この記事をまとめると
■トヨタの車両技術を象徴する存在であるランドクルーザーが300系に進化
現場の声では「やっぱり5年待ち」の可能性も! 新型ランクルを買うなら「つなぎ」で「プラドの新車」がアリだった
■「最先端技術を投入した高い性能」という自信と自負が込められた「GR SPORT」を設定
■「GR SPORT」だけに世界初となる電子制御式ロールバーE-KDSSが採用された
ランクルはトヨタの車両技術を象徴する存在
トヨタ・ランドクルーザーのステーションワゴンシリーズが、今年6月にフルモデルチェンジを受けて6世代目となる300系へと進化した。
振り返れば、戦時中の日本陸軍のため、開発・納入を行った4輪駆動車AK10型車に端を発し、戦後1951年、警察予備隊(現陸上自衛隊)の制式車両に向けて開発が行われたトヨタの不整地機動用4輪駆動車トヨタジープBJ型は、商標の関係からジープの名称が使えないことになり、1954年にトヨタ・ランドクルーザー(以下ランクル)と名称を変更。同カテゴリーのライバル車がランドローバー(陸の海賊船)を名乗ったことに対し、トヨタはランドクルーザー(陸の巡洋艦)と対抗意識を示すネーミングを採用。
ランクルは、実質70年の歴史を持つトヨタ車中最長のシリーズライフを持ち、世界的にもその存在が高く評価され、文字どおりトヨタの看板を背負ってきたモデルである。
このことは、言い換えれば、レクサスシリーズとは別の意味で、トヨタの車両技術を象徴する存在であり、その高い性能を実現するためには、惜しげもなく最先端テクノロジーが投入されることも意味している。こんな視点で最新モデルの300系ランクルを眺めてみると、いたるところにトヨタの自負がうかがえる車両技術が盛り込まれていることに気付く。
そもそもワゴンシリーズの300系には、ワゴンとしてのユーティリティを備えながら、同時に上質なクオリティ感、そしてオフロード4WDとしての高い基本性能、信頼性を持つことが求められ、見た目は上質な大型ワゴンでありながら、その実質は第一級のクロスカントリー4WDであることが宿命づけられたモデルである。それだけに、構成メカニズムにも最新、最高のものが投入されることになる。
ランクルの基本性格、性能は、紛れもなくクロカン4WDだが、ワゴンとしての上質なオンロード性能も両立させなければならない。それに対し、ワイルドな外観、雰囲気を漂わせながら、4WD機構を備えることで一定レベルのオフロード走破性能を持ち、本来前提とする舗装路走行は当然ながら高いレベルにあるSUVモデルが台頭、支持されるようになると、ランクルもより安定、上質な舗装路性能によって対抗せざるを得ない状況となってきた。
実際、クロカン4WDのオーナーでオフロード性能を重視する人がどれほどいるかは定かでないが、オフロード、ラフロードを走る層は確実に存在し、そのためにクロカン4WDを選択する市場が形成されている。
場合によって、極端にμが低い泥濘路、数十センチの水深がある河川渡河、急勾配と大きな路面凹凸が組み合わさったガレ場走行など、大きな最低地上高やタップリとしたストロークでしなやかに路面凹凸に追従するサスペンション性能が必須となる一方で、ロールを抑え4つのタイヤをしっかりと路面にクリップさせ車体を安定させなければならない舗装路での高速旋回性能も実現させなければならない。
オフロードとオンロード、この両者はまさに背反する性能同士だが、ランクル300系は、それを高いレベルで実現させなければならない宿命を背負ったモデルでもある。
GR SPORTには世界初の電子制御式スタビライザーを搭載
その300系に「GR SPORT」グレードが新設された。GRは、GAZOO RACINGの略で、トヨタ・モータースポーツを代表する言葉として使われているが、その言葉の裏には、「最先端技術を投入した高い性能」というトヨタの自信と自負が込められたある意味頂点のグレード名だ。
これを名乗るトヨタ車は、たとえばWRCのベースモデルとして使うヤリスに「GRヤリス」が存在するが、このモデルはWRCカーのエッセンスを量産車に落とし込んだモデルで、通常のヤリスシリーズには存在しないターボ4WDのスポーツモデルとして仕上げられている。搭載するエンジンは1.6リッターながらターボを装着して272馬力を発生。コンパクト2ボックスカー「ヤリス」の基本性格からは想像を絶したパフォーマンスが与えられている。
トヨタが「GR」のネーミングを冠する以上は、絶対の自信を持って市場に送り出していることがうかがえる一例だが、そのGRのネーミングをランクル300系で使ってきた。どこがポイントとなるのか? その仕様に目をとおしてみると、シャシー、ボディ、エンジンと、車両を構成するありとあらゆる箇所が、最新自動車工学のテクノロジーで見直されていることがひと目で理解でき、トヨタの本気度が伝わる。なかでもGR SPORTのみに与えられた最新メカニズム、電子制御式スタビライザーのE-KDSSは目を引く存在だ。
世界初の試みとなるこの電子制御式ロールバーは、前後のスタビライザーをそれぞれ独立したシリンダーで支持し、シリンダーの伸縮でスタビライザーの効き(強弱)を調整するシステムで、フラットでμの高い舗装路から、凹凸が大きくμの低いラフロードまで、最適な路面接地が行えるよう、サスペンションの動きをコントロールする働きを持つ。
ロールバーそのものは、旋回Gを受けるとアウト側のサスペンションが縮み、逆にイン側のサスペンションが伸び上がる動きを示す際、アウト側の縮む動きをイン側に伝え、イン側のサスペンションが伸び上がることを規制する働きをする。車両姿勢の平行を保つ意味でスタビライザー、あるいはイン側の伸び上がりを抑制し車体ロールが大きくなることを防ぐ意味でアンチロールバーと呼ばれている。
走行中の車両は、車体の左右、上下、前後3方向の軸(X軸、Y軸、Z軸)に対して回転力が発生し、これらはそれぞれロールモーメント、ピッチングモーメント、ヨーモーメントとして車体の動きに影響をおよぼしている。このうち、スタビライザーが制御するのはロールモーメントで、簡単に言ってしまえば、旋回中のロールモーメントの働きで車両の傾きが大きくなり安定性が失われることを防ぐ装備で、とくに傾きが大きくなる走行領域(高速旋回、急旋回など)で有効であり、レースカーでは必須、市販車でもスポーツタイプの車両では必ずと言ってよいほど装着されている装備である。
ランクルGR SPORTでは、このロール方向の動きを制御するロールバーの効き方を電子制御による可変式としたことで、高μ路面での高速旋回や急旋回ではスタビライザーの効きを強く、大きな凹凸のあるラフロード路面では、スタビライザーの効きを弱く、あるいは解除することで、瞬間的に左右逆の動き、伸びと縮みが要求されるサスペンションの動きを可能にしたシステムである。
要するに、舗装路走行とラフロード走行とでは、逆の動きが要求されるサスペンションに対し、ロールバーの効き具合を電子制御によって可能とすることで、それぞれの路面に対応できるようにしたわけである。
似たようなシステムとしては、ジープ・ラングラーのルビコン(限定仕様車)に用意された「スウェイパー」という機構がある。この機構は、悪路における左右前輪の上下動をフリーにするため、スイッチ操作ひとつでフロントスタビライザーのオン/オフを可能にしたシステムである。ランクルGR SPORTの場合は、路面状況に応じてスタビライザーの効きを自動調整するため、システムとしてはGR SPORTのほうが優れていることになる。
また、GR SPORTも含めたランクル300系に共通して言えることは、走行性能を引き上げるために最新テクノロジーを投入している点にある。なかでも、前後デフロックを電気制御としたGR SPORTの駆動系は、E-KDSSの採用と合わせ、可能な限り最高の駆動性能、接地性能を目指したものとして、ランクル、ひいてはトヨタのフラッグシップモデルとしての自負をうかがわせる投入技術である。
SUV全盛の4WDカー市場だが、どっこい、名実ともクロカン4WDの頂点に位置するワゴンシリーズの300系、そしてGR SPORTは、最新テクノロジーの投入によってオン/オフ両路での走行性能を引き上げ、キング・オブ・クロカン4WDの地位を確固たるものとして登場。世の中の4WDファン、最新のランクルを刮目して見よ、である。
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みんなのコメント
特に高速で直進中に、自動で勝手にスタビライザーがチョコチョコと変化するらしい。
凄く違和感あるんだって。
高速で直進中は、スタビライザーがフリーに自動でなって、逆にコーナリング中や、ハンドルを切った時や、車体がロールを少しでも感知した時なんかは、自動で勝手にスタビライザーをロックするらしいんだけど、高速の直進中に、そのスタビライザーのロックとフリーの瞬時な切り替えの影響で、ハンドルに違和感が伝わり、余計なハンドル修正をしなきゃいけないみたいな事を言ってた。
凄く不自然が残るし、特に高速の直進中には、普通の車では有り得ない挙動をするって言ってた。
試乗した、某モータージャーナリストが何度も変な動きだと言ってた。
そりゃそうだよね。
自動で前後スタビライザーの硬さをリアルタイムで変えるんだから、デメリットも多いはず。