現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > フェラーリ365 GT4 BB/512 BB(2) フルスロットルのゴージャスな響き 腰痛や耳鳴りとは無縁

ここから本文です

フェラーリ365 GT4 BB/512 BB(2) フルスロットルのゴージャスな響き 腰痛や耳鳴りとは無縁

掲載
フェラーリ365 GT4 BB/512 BB(2) フルスロットルのゴージャスな響き 腰痛や耳鳴りとは無縁

フルスロットル時のゴージャスな響き

フェラーリ365 GT4 BBのステアリングホイールはドライバー正面に位置し、奇妙な角度で伸びているわけではない。速度が上昇すれば、驚くほどダイレクトなフィーリングが待っている。

【画像】F1由来のV12 フェラーリ365 GT4 BB/512 BB V8の308にミウラ、カウンタックも 全109枚

背もたれが倒れたシートはスポーティ。ペダルは、ホイールアーチを避けるよう右側へオフセットしているが、ランボルギーニ・カウンタックより運転姿勢は遥かに自然だ。ルーフは近いが前方視界は広く、後方も充分目視できる。

クラッチペダルが重く、発進は少し苦労するものの、オープンゲートのシフトレバーを動かすのはひたすら楽しい。今回の車両は走行距離が6万6000kmと長いが、変速感は3台のベスト。軽くスライドでき、メカニカルなノイズを伴う。

アイドリング時の迫力は相当なものだが、発進加速にそこまでの勢いはない。低域では5速MTの唸りが大きい。過程にフラットスポットがあるものの、最大トルクを得られる3900rpmへ迫ると、V12エンジンのサウンドで覆い隠される。

中域以上のパワー感は素晴らしい。100km/hを超えても、一心不乱に速度を高めていく。4基のトリプルチョーク・ウェーバーキャブレターが混合気を送り、フルスロットル時の響きはゴージャスそのもの。見た目への期待通りに。

フロントスポイラーとNACAダクトを獲得

強化される排気ガス規制を満たしつつ、パワーを維持するため、フェラーリは1976年にV12エンジンのストロークを延長。複数の改良も実施された。これを受け、モデル名は一新。シリンダーの排気量ではない、新ルールが採用された。

512 BBは、5.0Lで12気筒、ベルリネッタ・ボクサーの略。最高出力は365psと、僅かに低下していた。しかし最大トルクは増大し、特性もフラット化され、0-97km/h加速は5.4秒から5.1秒へ短縮している。

ボディは、張り出したフロントスポイラーを獲得。リアフェンダーには、NACAダクトが開けられている。高速域でのリフトとリアブレーキのフェードという、365 GT4 BBで指摘された弱点へ対処するために。リアデッキのデザインも変更された。

ゴールド・ツートーンのフェラーリ512 BBで真っ先に気付くのは、クラッチペダルが軽いこと。ツインプレート・クラッチを採用し、左足の負荷を大幅に軽減している。

4基のキャブレターが載った、エンジンの咆哮はほぼ同じ。運転体験も、大きくは違わない。ペダルが大型化し、足もとの空間は若干狭く感じられるが、胸のすくような加速は共通している。

安定性が高く、アウトバーンでの巡航も、ワインディングでの旋回も余裕でこなすはず。ボディロールも僅かに抑えられている。ただし、低域では若干一貫性に欠けるかもしれない。スタイリングに合わせて、スプリングはもう少し引き締めても良いだろう。

明確に異なるインテリアの雰囲気

1980年代初頭にかけて、フェラーリも排気ガス規制との戦いに揉まれた。それでも、512 BBの燃料インジェクション化は、可能な限り伸ばされた。マラネロ最後の、キャブレター仕様というコダワリがあった。

しかし堪えきれず、1981年に512 BBiが投入される。最大トルクは45.9kg-mが維持されたが、最高出力は340psへ低下を余儀なくされた。

スタイリングの変更は最小限。フロントグリルが新しくなり、タイヤサイズの見直しに伴い、アルミホイールは新デザインへ改められている。

最もわかりやすい違いは、ベルトラインより下側の塗装が上部と同色になったこと。今回はレッドの1台が、1983年式の512 BBiだ。ツートーン塗装よりモダンな印象を受けるが、ボディ全体のボリュームも大きく感じられる。

アルミホイールは、社外のモモ社製。人気を高めつつあった、チューニング文化の一端が垣間見れる。

インテリアの雰囲気は、1980年式の512 BBと明確に異なる。カラーコーディネートは初代オーナーの好みといえるが、明らかに1世代新しい。1970年代風の、ゴールドやベージュ、ブラウンといった色味はなく、レッドとブラックで締められている。

大きく個性を変えたインジェクション

ステアリングホイールを握ると、インジェクションが大きく個性を変えたことが明確になる。キャブレター時代と異なり、ガソリンの噴霧は正確で、アイドリング時からマナーが良い。パワーが若干低くても、フラットスポットは存在しない。

低域から、滑らかにパワーが生まれる。加速の勢いに大差はないものの、南フランスを数日間クルージングするなら、筆者は512 BBiを選ぶだろう。明らかに親しみやすい。

とはいえ、ベルリネッタ・ボクサーの3世代で、クラシックカー市場の人気トップは365 GT4 BB。ピュアなピニンファリーナ・デザインと希少性、高域へ颯爽と吹けるキャブレター・エンジンは、フェラーリ・コレクターへ強く響く要素といえる。

運転のしやすさでは、間違いなく512 BBiが勝る。しかし、後継モデルのインパクトは凄かった。同等の価格で同等の長所を備えた、1984年のテスタロッサへ気持ちが奪われるとしても、不思議ではない。

その間の512 BBは、通好みのV12フェラーリかもしれない。365 GT4 BBより洗練度は高く、エンジンは手懐けやすい。それでいて、オリジナルの美しさをほぼ保っている。当時のモデナ流12気筒スーパーカー像が、最も望ましいカタチで体現されている。

腰痛や耳鳴りとは無縁のV12スーパーカー

快適で操縦性に優れ、運転しやすいグランドツアラーを提供するという、フェラーリの姿勢に妥協はなかった。長時間をともにしても腰痛や耳鳴りとは無縁の、V12ミドシップ・レイアウトの創出へ、当初から成功している。

落ち着きのあるスタイリングに、レーシングカーの血統を継いだ強力なエンジン。ランボルギーニ・ミウラを横目に、スキのない仕上がりにある。

胸が苦しくなるようなサウンドは、F1マシン、312Bとも重なる。パフォーマンスは、今でも充分にドライバーを惹き込む。マラネロの傑作の1台だといって、過言ではない。

協力:ニック・アールダリング氏

V12ミドシップ・フェラーリ 3台のBBのスペック

フェラーリ365 GT4 BB(1973~1976年/欧州仕様)

英国価格:2万6000ポンド(新車時)/40万ポンド(約7800万円/現在)以下
生産数:387台
全長:4360mm
全幅:1800mm
全高:1120mm
最高速度:299km/h
0-97km/h加速:5.4秒
燃費:6.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1305kg
パワートレイン:V型12気筒4390cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:385ps/7700rpm
最大トルク:41.8kg-m/3900rpm
ギアボックス:5速マニュアル(後輪駆動)

フェラーリ512 BB(1976~1981年/欧州仕様)

英国価格:1万6380ポンド(新車時)/28万ポンド(約5460万円/現在)以下
生産数:929台
全長:4360mm
全幅:1800mm
全高:1120mm
最高速度:302km/h
0-97km/h加速:5.1秒
燃費:5.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1400kg
パワートレイン:V型12気筒4943cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:365ps/6800rpm
最大トルク:45.9kg-m/4600rpm
ギアボックス:5速マニュアル(後輪駆動)

フェラーリ512 BBi(1981~1984年/欧州仕様)

英国価格:3万9991ポンド(新車時)/30万ポンド(約5850万円/現在)以下
生産数:1007台
全長:4360mm
全幅:1800mm
全高:1120mm
最高速度:288km/h
0-97km/h加速:5.1秒
燃費:6.4km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1400kg
パワートレイン:V型12気筒4943cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:340ps/6000rpm
最大トルク:45.9kg-m/4600rpm
ギアボックス:5速マニュアル(後輪駆動)

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

2025年に通用する30年前の面白さ シトロエン・サクソ VTS x プジョー106 GTi(2)
2025年に通用する30年前の面白さ シトロエン・サクソ VTS x プジョー106 GTi(2)
AUTOCAR JAPAN
テストコースで夢見心地 ボアハム・フォード・エスコート Mk1(2) ノスタルジックな危うさ
テストコースで夢見心地 ボアハム・フォード・エスコート Mk1(2) ノスタルジックな危うさ
AUTOCAR JAPAN
スターになり損ねたクルマ、予想外に売れたクルマ 20選 「期待外れ」と「嬉しい誤算」
スターになり損ねたクルマ、予想外に売れたクルマ 20選 「期待外れ」と「嬉しい誤算」
AUTOCAR JAPAN
1kmでわかる画期的な完成度 ジャガーXJ6 S1とローバーP5 B(3) 我が物にしたいクラシック
1kmでわかる画期的な完成度 ジャガーXJ6 S1とローバーP5 B(3) 我が物にしたいクラシック
AUTOCAR JAPAN
電費はトップ水準 テスラ・モデルY「ジュニパー」(2) 検討候補から外す理由が見つからない
電費はトップ水準 テスラ・モデルY「ジュニパー」(2) 検討候補から外す理由が見つからない
AUTOCAR JAPAN
【徹底解説&試乗】売れ筋はウルトラ!ボルボXC90乗るならマイルドハイブリッド
【徹底解説&試乗】売れ筋はウルトラ!ボルボXC90乗るならマイルドハイブリッド
AUTOCAR JAPAN
魅力そのまま「お手頃」に ルノー5 E-テック・アーバンレンジ 122psでも運転が気持ちイイ
魅力そのまま「お手頃」に ルノー5 E-テック・アーバンレンジ 122psでも運転が気持ちイイ
AUTOCAR JAPAN
A110の5座SUV版? アルピーヌA390 プロトタイプ 想像超えの軽快感 総合出力は400-500psか
A110の5座SUV版? アルピーヌA390 プロトタイプ 想像超えの軽快感 総合出力は400-500psか
AUTOCAR JAPAN
プアマンズ・ロールス・ロイス ジャガーXJ6 S1とローバーP5 B(2) 歴代の英国首相の公用車
プアマンズ・ロールス・ロイス ジャガーXJ6 S1とローバーP5 B(2) 歴代の英国首相の公用車
AUTOCAR JAPAN
ホンダeへ通じる「もどかしさ」 ミニ・エースマン E 硬い乗り心地に200kmは本当に丁度良い?
ホンダeへ通じる「もどかしさ」 ミニ・エースマン E 硬い乗り心地に200kmは本当に丁度良い?
AUTOCAR JAPAN
季節不問の頼もしいブランド・ベスト ボルボV90 T8(2) 動力性能はスポーツカーと遜色なし
季節不問の頼もしいブランド・ベスト ボルボV90 T8(2) 動力性能はスポーツカーと遜色なし
AUTOCAR JAPAN
「キャトル」30年ぶりに復活 新型ルノー4 E-テック 革新的で実用的な電動世代
「キャトル」30年ぶりに復活 新型ルノー4 E-テック 革新的で実用的な電動世代
AUTOCAR JAPAN
【700馬力超え必至⁉︎】ポルシェ911 GT2 RSが復活か シリーズ最強モデル、2026年発売に向け開発中
【700馬力超え必至⁉︎】ポルシェ911 GT2 RSが復活か シリーズ最強モデル、2026年発売に向け開発中
AUTOCAR JAPAN
メルセデス・ベンツ新型『CLA with EQテクノロジー』 約900万円から欧州発売 高効率を実現
メルセデス・ベンツ新型『CLA with EQテクノロジー』 約900万円から欧州発売 高効率を実現
AUTOCAR JAPAN
ドイツ製ワゴンの有力な対抗馬 ボルボV90 T8(1) 9年目も美しい容姿 プレミアムな内装
ドイツ製ワゴンの有力な対抗馬 ボルボV90 T8(1) 9年目も美しい容姿 プレミアムな内装
AUTOCAR JAPAN
キャデラック・エスカレードが新デザインでアップデート 50台の限定モデルも発売
キャデラック・エスカレードが新デザインでアップデート 50台の限定モデルも発売
AUTOCAR JAPAN
ジャガーXJ6 S1とローバーP5 B(1) 構想は4ドアのEタイプ GMから権利を得たV8で更新
ジャガーXJ6 S1とローバーP5 B(1) 構想は4ドアのEタイプ GMから権利を得たV8で更新
AUTOCAR JAPAN
【スーパーカー超王が斬る】価格は1億2890万円!アストン マーティン・ヴァルハラはデザインもエンジニアリングも世界最高峰
【スーパーカー超王が斬る】価格は1億2890万円!アストン マーティン・ヴァルハラはデザインもエンジニアリングも世界最高峰
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2430 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1790 . 0万円 7800 . 0万円

中古車を検索
フェラーリ テスタロッサの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2430 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1790 . 0万円 7800 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村