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アウディ A4アバントとプジョー 508SW。洗練された優等生か、色気ある異端児か

掲載 更新 17
アウディ A4アバントとプジョー 508SW。洗練された優等生か、色気ある異端児か

ドイツとフランスを代表するDセグメントステーションワゴンである優等生のアウディA4アバントとプジョーのフラッグシップ 508SW。今回はディーゼルモデル同士でその存在価値を検証してみた。

A4アバントはワゴンの優等生、508SWは内外装に色気あり
今、クルマ選びの際の筆頭候補として挙がるのは、やはりクロスオーバーSUVだろう。私が色々なところで言っているのは、もはやSUVの存在はブームの段階を過ぎて、かつてのセダンのようなクルマのベーシックフォームになったということである。言い方を変えれば、クロスオーバーSUV以外を選ぶのには何かしらの理由が必要だということ。ブランド側にとっては、その何かを喚起しなければ、ということでもある。

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ではワゴンはどうだろう。かつては輸入車が好きで、その中でもライフスタイル感のあるクルマを選びたいという人にとっては、ワゴンこそが一番のターゲットになっていたはずだ。ではワゴンを選ぶ意味は、今はどこにあるのだろうか?結論から先に言ってしまえば、ここで取り上げる2台のようなワゴンなら、今もまだ乗る理由がある。こちらこそを積極的に選びたくなる魅力が濃厚に備わっているというのが今回の取材を通じての改めての印象なのだ。

その2台がアウディA4アバント、そしてプジョー508SWである。アウディのアバントと言えば、今も美しいワゴンの代名詞。そしてバカンスの国フランスのベストセラーである508SWが揃えば自ずと期待値は高まるが、この2台は同じように魅力的な、そして高い実力をもったワゴンであり、一方で互いにまったく違った個性を主張する存在でもある。試乗車は、A4アバントTDIクワトロSラインと、508SW GTブルーHDi。まずは両車のパッケージングから見ていくことにしよう。

いずれもいわゆる欧州Dセグメントに括られるこの2台。サイズを見るとA4アバントの全長4760×全幅1845×全高1435mmに対して、508SWは全長4790×全幅1860×全高1420mmと、ほんのわずかに508SWの方が長くワイドで、そして低い。端正なA4アバントに対して、もっとエモーショナルな508SWという感じである。実際、508SWはサッシュレスドアの採用など、ワゴンでありながらスペシャリティ的な要素も色濃い。その存在感は、アバントの流儀を今に継承するアウディの今やオーセンティックとも評せる佇まいとは、まったく狙いが異なるように思える。

室内に乗り込むと、A4アバントの運転席まわりは、まず大型化された画面が目に入ってくる。10.1インチのMMIセンタースクリーンはタッチパネル式とされ、ダイヤル式コントローラーは潔く廃止された。ダッシュボードの造形などはシンプルにまとめられてクリーンな雰囲気。Dシェイプではない径の大きなステアリングホイールも個人的には落ち着く。

対する508SWのインテリアは、小径ステアリングホイールと、その上から覗くデジタルメーター、インフォテインメントシステムの下にずらりと並ぶスイッチに変形ガングリップタイプのセレクターレバー等々、隅々までデザインされた空間となっている。ヒップポイントは低めで、囲まれ感は強い。いわゆるコクピット感覚だ。

乗り比べると、わずかとはいえ全幅の広い508SWの方が、やはりゆとりがある。全高は508SWの方が低いのに、握り拳を縦に1個分という頭上空間がほぼ変わらないのは、まさに着座位置が低いからだろう。後席はA4の方が座面長があり、座面がしっかりしている分、頭上はわずかに狭い。508SWは低いルーフに合わせて座面をへこませているのだが、レザーが滑りやすく姿勢が落ち着かないのが玉に瑕だ。

さらに今回の2台はいずれもアウタースライド&サンシェード付きのガラスルーフが付いていたのだが、A4のそれがルーフ内にすっきり収まっているのに対して、508SWは内張りがぼっこり膨らんでいて、後席に座ると眼前にそれが迫ってくる。これは圧迫感を持つ人もいるかも。

同様に荷室も、やはりA4アバントの方が横幅がやや狭いが、奥行きは同等だ。A4アバントはシートバックが40対20対40分割でトノカバーは自動昇降式。ラゲッジネットともども脱着もできる。508SWのシートバックは60対40分割で、トノカバーをタッチすればサッと上に跳ね上がる。ラゲッジネットは、こちらも取り外し式のものが用意される。

こうして見ると、A4アバントは全方位的によくできた、まさに優等生。対する508SWは色々と隙があるし後席の居住性もやや見劣りするが、色気はあるし荷室も大きい。いやはや、これは悩ましいところだ。

どちらも2Lディーゼルターボだがその特性は異なる
では走りっぷりはどうか。今回の2台は、ともにディーゼル仕様。しかも奇しくも両車、2L直列4気筒ターボとなる。A4アバントのTDIは、最高出力190ps、最大トルク400Nmで7速Sトロニック、そしてクワトロ4WDシステムを組み合わせる。始動直後には多少ガラガラという音が聞こえるし、加速時にもガ行の音が耳に入るが、暖まってくると気にならなくなる。ただし、試乗車はアコースティックガラス付きだったので、そこは勘案しておかなければならないが。

1750~3000rpmという広範囲で最大トルクを発生するエンジン特性に対して、Sトロニックは4速あたりまで非常にクロスしたギア比を持つため、発進加速ではまさに矢継ぎ早のシフトアップで瞬く間に速度を高めていく。リズミカルで爽快な加速感だ。Sトロニックの変速の速さ、ダイレクト感もこの小気味良さにひと役買っている。

しかも、そのままアクセルペダルを踏み込めば、トップエンドまできれいに回り切ってもくれるのだ。トルクフルで小気味良い加速感に、胸のすく伸び。ディーゼル云々という枠を超えて、実に情感を刺激する内燃エンジンである。

508SWのエンジンは、さらに野性味が強い。とくに低回転域では始終ガラガラという音、振動が入ってきて、今どきのエンジンとしてはあまり洗練されていないという印象も受ける。しかしながらトルクは分厚く、発進から中間加速まで、アクセルペダルを深く踏み込まなければならない場面はほとんどない。この音や振動も力強いトルク感とマッチしていて、走らせているとどんどん気にならなくなってくる。

ギア比の考え方もだいぶ違っていて、A4アバントの3速の守備範囲が90km/h弱あたりまでなのに対して、508SWの3速は100km/hを超えてもまだ伸びる。エンジン自体はさほど伸びが良いわけではないが、地力でグーッと速度を押し上げていくところは、まさにディーゼルらしい味わいだ。

トータルで見れば、ディーゼルエンジンらしからぬ洗練されたフィーリング、そしてパワー感が際立つA4アバントに対して、ディーゼルならではの旨味が濃い508SWといった感じだろうか。パワーや燃費といった結果は似たようなものでも、そこに至る過程は大きく異るのだ。

硬質な走り味のA4アバント、ゆったりした動きの508SW
乗り味も両車、やはりずいぶんキャラクターが異なっている。A4アバントは、やはりと言おうか全般に硬質な印象が強い。ボディがカッチリとしていて、全体に精緻な味わい。イメージどおりにドイツ車的、アウディ的と言える。とは言え乗り心地自体は硬いわけではない。

試乗車はダンピングコントロールスポーツサスペンション付きということもあり、とくにコンフォートに設定すれば、コシは強いがしなやかな乗り心地を味わえた。アウディらしさも、着実に進化しているのだ。

それに対して発進した瞬間から独自の世界に引き込むのが508SWである。ゆったりとしたサスペンションの動きは、まさに癒やし。シートも見た目ではゴツいのかなと思ったが、表面のクッションがすごく効いていて、まさに包み込まれるような乗り心地を実現している。

鋭い突き上げに対してはゴツッという感触を伝えがちだが、基本的にはふんわりとした乗り心地だ。それゆえかワインディングロードでは車体の上下動が大き過ぎるとも感じられたが、スポーツモードに切り替えるとぴたりと落ち着いた。ちゃんとセットアップは出してあって、それをどう引き出すのかはドライバーに委ねられているのだ。

A4アバントと、508SW。同じようなカテゴリーに入り、同じような寸法、エンジンでありながら、ここまであからさまに違ったキャラクターを持っていたということに今回は改めて驚かされたし嬉しくなった。とてもじゃないが優劣をつけるなんて無理。これまでのクルマ遍歴、求めるライフスタイルとのマッチングなどから、ぜひしっくり来る1台を選んでほしいと思うし、この文章が多少なりともその参考になればとも思う。

クロスオーバーSUV以外のクルマを選ぶのには明確な理由が要ると、冒頭に大胆なことを書いた。まさに今回の2台のような強い個性を放つクルマには、あえて今この時代に選ぶ意味、乗る意味がある。きっとみなさんにも共感していただけるはずだ。(文:島下泰久/写真:小平 寛)

アウディ A4アバント 40TDIクワトロ Sライン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4770×1845×1435mm
●ホイールベース:2825mm
●車両重量:1660kg
●エンジン:直4 DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1968cc
●最高出力:140kW(190ps)/3800-4200rpm
●最大トルク:400Nm/1750-3000rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:軽油・58L
●WLTCモード燃費:14.6km/L
●タイヤサイズ:245/40R18
●車両価格(税込):641万円

プジョー 508SW GTブルーHDi 主要諸元
●全長×全幅×全高:4790×1860×1420mm
●ホイールベース:2800mm
●車両重量:1630kg
●エンジン:直4 DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1997cc
●最高出力:130kW(177ps)/3750rpm
●最大トルク:400Nm/2000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:軽油・55L
●WLTCモード燃費:16.9km/L
●タイヤサイズ:235/45R18
●車両価格(税込):534万4000円

[ アルバム : アウディ A4 アバントとプジョー 508 SW はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

17件
  • 508SWは最高のワゴンです。
    コンフォートモードだと乗り心地すごく良いです。
    トルクも太く加速も良いです。
    この価格でシートマッサージまで標準
    アルカンターラのシートも大変出来が良いです。
    エンジンかけると必ずラジオモードになる事
    iPhoneとの接続がときどき混乱する事
    この辺はご愛嬌
    ただ屋根が低くなるので個人的にはサンルーフは無しを選ぶべきと思います。
    すっごく気に入ってますが、きっと売る時は安いんでしょうね。だから長く乗るのが正解のクルマです。
  • デザインは508の方がいいな
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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