2012年1月、フォルクスワーゲン ゴルフにスタート/ストップ・システム(アイドリングストップ)とブレーキエネルギー回生システムを採用した当時最先端の環境技術搭載モデル「ゴルフTSIトレンドライン ブルーモーションテクノロジー」が登場し、効率を追求するフォルクスワーゲンの姿勢が大きな注目を集めた。ここではMotor Magazine誌が独自に行った試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2012年4月号より)
エネルギーロスを徹底的に低減する最新の環境技術
TSI+DSGという最強のキラーコンテンツを導入して以来、従来にない高い次元での走りと高効率性の両立を志向してきたフォルクスワーゲンが近年、旗印として掲げているのが「Think Blue」というメッセージだ。曰く、包括しているのは「資源や生物多様性の保護などの環境保全活動」、「環境と共存する考え方や行動についての啓蒙活動」、「最新の環境テクノロジーでのクルマによる環境負荷の低減」の3つを大きな構成要素とする、人とクルマと地球がもっといい関係になるための様々な活動。「Think Blue」はその合い言葉というわけである。
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その中では3つ目の要素に当てはまる、最新の環境対応テクノロジーとして目下、強力に推進されているのが「ブルーモーションテクノロジー」だ。TSI+DSGが、基本性能の大幅な底上げを図る技術だとすれば、こちらは言うなれば、エネルギーの無駄を省いて、その高性能をさらに効率良く利用するための技術ということになる。
そもそもブルーモーションというネーミングが最初に使われたのは、2006年に登場したポロ・ブルーモーションにおいてのことである。当時、5人乗り乗用車としては世界トップの3.9L/100kmという低燃費を実現したこのモデルは、まさにブランドの原点と呼んでいいだろう。
続いてフォルクスワーゲンは、ポロだけでなくゴルフやパサートなどにも燃費を徹底的に追求したブルーモーションモデルを設定する。いずれも心臓として、高効率のコモンレール式燃料噴射方式を採用したTDI=直噴ディーゼルターボエンジンを専用のマネージメントシステムと組み合わせて搭載し、その上でブレーキエネルギー回生システムやスタート/ストップ・システム、低転がり抵抗タイヤに空力特性を向上させた外装などによってエネルギーロスを徹底的に低減し、燃費向上を実現しているのが共通項である。その結果として、最新のポロ・ブルーモーションは3.3L/100km、ゴルフ・ブルーモーションでも3.9L/100kmという低燃費を達成し、この分野における圧倒的なベンチマークとして君臨しているのだ。
その後、フォルクスワーゲンはこれらを含む最新の環境技術搭載モデル、そして環境技術全般を、ブルーモーションテクノロジーという共通の傘の下に集結させ、ひとつのブランドとして推進することとなった。そこから生まれてきたのが、ブルーモーションモデルに採用された技術を用いた、ブルーモーションテクノロジー搭載モデルたちということになる。
ゴルフへの搭載開始により普及が一気に進みそうだ
そのバッジが取り付けられた日本向けの最初のモデルとなったのは、2010年11月発表のシャラン。その後、昨年初頭に導入されたトゥアレグ/トゥアレグハイブリッド、フルモデルチェンジされたパサート/パサートヴァリアントと、その仲間を増やしてきた。そして、いよいよ今年1月、真打ちゴルフにも対応モデルが登場した。それがゴルフTSIトレンドライン ブルーモーションテクノロジーである。
モデル名からも想像できるとおり、ベースとなっているのはTSIトレンドライン。すなわちパワートレーンは最高出力105ps、最大トルク17.8kgmを発生する1.2LのTSIエンジンと7速DSGを組み合わせる。そこにブルーモーションテクノロジーとして、これまでのシャランやパサートなどと同様に、新たにふたつの機能が追加されている。
まず、ひとつはスタート/ストップ・システム。赤信号や渋滞などでブレーキペダルを踏んで車両を停止させた際に自動的にエンジンを停止させ、発進の際にはブレーキペダルから足を離せば、すぐに再始動が行われるという機構である。車両が停止している間の燃料消費は単なる無駄。それをカットするのである。
そして、もうひとつがブレーキエネルギー回生システム。これは従来、エンジン出力によって行っていたバッテリーの充電を、車両の減速エネルギーも使って行うことで、加速時には充電による負荷を低減し、余計な燃料消費を抑えるというものだ。
なお、ブルーモーションテクノロジー採用モデルでは、これらの採用に伴ってオルタネーターは加速時のフリーホイール化と減速時の発電量増加に対応した強化タイプとされ、バッテリーは電圧モニターECUが付いた強化型のAGMタイプに、そしてスターターモーターも耐摩耗性向上、リングギア強化を図ったものに改められている。何倍もの頻度ともなるエンジン再始動に耐えうるようにである。
当然、気になるのは燃費だ。ゴルフTSIトレンドライン ブルーモーションテクノロジーは、10・15モードで18.4km/Lという低燃費を達成している。従来のTSIトレンドラインが17.4km/Lだから、ざっと6%ほどの向上を実現したことになる。
では実際の走行フィーリングはどうなっているのか。従来と何か違いはあるのだろうか。キーをひねってエンジンを始動させ、DSGのセレクターレバーをDレンジに入れて発進する。ここまでのプロセスには変化はまったくない。わずか1500rpmで最大トルクを発生し、そのまま4100rpmまでキープする極めて実用的なエンジン特性は、市街地から高速道路まで舞台を選ばずゴルフをストレスなく走らせる。
ここで改めて感じるのが、7速DSGの走りへの貢献度の大きさである。段数の多さと素早い変速によって、エンジンの美味しいところを効率良く引き出してくれるというだけでなく、駆動系のダイレクトな締結感がもたらす繊細なレスポンスがクルマとの一体感を高め、実に気持ち良いのだ。
と、ここまではTSIトレンドラインと一緒なのだが、車両を停止させてそのままブレーキを踏み続けているとエンジンが停止する。そう、アイドリングストップが働くのである。
正確にはエンジン回転数が1200rpm以下、クーラント温度が25~100度の間、エアコン設定温度と実際の室温の差が8度以内などの条件を満たしていると、エンジンが停止する。動作はきわめてスムーズだ。
ここで改めてわかるのは、ゴルフが普段から静かなクルマだということである。これは遮音層を挟み込んだフロントウインドウほか、遮音そして吸音対策を徹底した結果で、エンジンが停止した途端、急に静かになるという感じにはなっていない。それもあってエンジン停止を殊更に意識させられることがないのである。
アイドリングストップ中はマルチファンクションインジケーター下段に「START」「STOP」「ACTIVE」の文字が切り替わりながら繰り返し表示される。こうして表示に動きがあると、単にインジケーターが点灯するよりも、システムが作動していることがわかりやすい。危険防止のためシートベルトを外したりドアを開けると再始動をキャンセルする機構も備わっているが、これなら停止したと勘違いする可能性は少ないだろう。
発進の際にはブレーキペダルから足を離すとエンジンが再始動するが、さすがにこれは一瞬とは行かず、一拍待つことになる。急いでいる時など焦ってアクセルペダルを深く踏み込むと、エンジンがかかった途端に回転が跳ね上がり、そこでクラッチが繋がるためドンッと衝撃を食らうこともある。それを防いで滑らかに走り出すには、信号など周囲の状況に気を配り、早い段階からゆっくりブレーキを解除してエンジンをかけ、落ち着いてアクセルオンしていくことを心がけたい。すべてクルマまかせではなく、自分の運転も少しだけ調整してやれば、燃費向上を気持ち良く実現できるのだ。
もうひとつの燃費向上技術であるブレーキエネルギー回生システムについては、加速が鋭くなるわけでも、あるいはBMWのようにインジケーターが付いているわけでもないので、それが働いているかどうか知ることことはできない。結果は燃費に示されるのみである。今回の試乗は短時間で、データを採ることはできなかったのが残念である。
今後、気筒休止システム、プラグインハイブリッドも
TSI+DSG、そしてブルーモーションテクノロジーによって、最新のフォルクスワーゲン車はどれも燃費を大きく向上させている。トゥアレグ ハイブリッドのようなモデルはある意味当然として、1.4Lのエンジンで登場したパサート、そしてシャランの衝撃度はやはり大きく、これが各モデルの、そしてフォルクスワーゲン自体のブランド力を大いに引き上げたのだ。
もちろん今後もその攻勢は加速していくことだろう。何しろ究極の目標は、2050年までにCO2排出量を現状比約20%削減することなのだ。とりあえず近いところでは、アウディ A1スポーツバック1.4TFSIに投入されたシリンダーオンデマンドテクノロー(気筒休止システム)が使われることになるだろう。さらに2013年にはアップ!やゴルフのEV版、そして他にプラグインハイブリッド車やいくつかのハイブリッド車もその仲間に加わるはずである。
一方、ディーゼルについては、年頭に行なわれたフォルクスワーゲン グループ ジャパンの記者会見場でG.ドリザス社長は、近いうちの日本導入には否定的なコメントをしている。しかし、その燃費メリットはきわめて大きいことから、向こう数年というスパンにおいては、やはり検討課題として上がっているようである。
もっと近い将来の話をすれば、ブルーモーションテクノロジー採用モデルは今後もますます増えていくはずである。直近ではゴルフ ヴァリアントTSIトレンドライン ブルーモーションテクノロジーも登場した。従来、ヴァリアントはTSIトレンドラインにも1.4TSIを搭載していたが、こちらはハッチバックと同じ1.2TSIを搭載し、やはり同様に10・15モード燃費は18.4km/Lを達成している。
TSI+DSGがそうだったように、フォルクスワーゲンにとってブルーモーションテクノロジーは特別な存在として位置づけられているわけではない。幅広い、そして多くのユーザーに均しく恩恵をもたらすものである。フォルクスワーゲンを買うことが、すなわち環境に優しいクルマを買うことになる。それこそがこの技術の肝となる部分であり、また「Think Blue」の精神なのだ。(文:島下泰久)
フォルクスワーゲン ゴルフ TSIトレンドライン ブルーモーションテクノロジー 主要諸元
●全長×全幅×全高:4210×1790×1485mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1270kg
●エンジン:直4 SOHCターボ
●排気量:1197cc
●最高出力:77kW(105ps)/5000rpm
●最大トルク:175Nm(17.8kgm)/1500-4100rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●車両価格:263万円(2012年当時)
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