輸入車 [2026.06.04 UP]
ゼロ年代を彩った憧れのクルマが現実に。肩の力を抜いて楽しむ「プチビンテージ」の世界
絵画のように取り引きされるプレミア車でもなく、価格が手頃だからという消極的な理由でもない、心から愛せる中古車。それがプチビンテージ!
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時間の流れは不可逆だが、中古車であれば過去に自由に遡ることができる。ここに並べたのは、かつてグーワールドで取材したクルマの写真。こうしてひと昔前のクルマを振り返ると当時思っていた以上に味が濃かったことに驚かされる。2000年代初め、インターネットが普及しつつあるも、携帯電話はまだスマホでなかった時代のクルマたち。プチビンテージは、心と財布を刺激する中古車エンターテイメントなのだ。
プチビンテージのある暮らしを実践している自動車ジャーナリスト九島辰也氏に聞く【プチビンテージなら憧れが現実になる】
新車当時からの憧れだったジャガー XKを手に入れたという九島氏が語るプチビンテージ実践編。
2000年代に入ってからのモデルは、内燃機関の最終形ともいえる。BEVへの移行を宣言する前の熟成期を意味するからだ。もちろん、今日もガソリンエンジンとディーゼルエンジンのモデルはある。が、良くも悪くもその多くがモーター付き。長年身体に染みついたペトロールヘッド的テイストとは一線を画す。
さらにいえば、そんな時期のモデルは今安価で手に入るのもたしかで、タマ数も豊富に揃っている。それに一部モデルを除いてはプレミアムな価格になっていない。スーパーカー系やGヴァーゲン、クラシック・ディフェンダーは別として、多くのモデルがこなれたプライスにとどまっている。かつての憧れが思いのほか身近に感じられるのだ。
さらに付け加えるとしたら、修理に関しても臆することはない。一部コンピューター類で厄介なモデルがあるのはたしかだが、イマドキのモデルよりも複雑にはなっていない。その点で、専門ショップはもちろん、街の修理工場でもある程度面倒を見てもらえる余地がある。要するに、そんな目線で見まわすと、ビンテージに入る前のプチビンテージカーを楽しむのは十分アリということだ。
今回ここで皆さんに見てもらうクルマもそんな1台に数えられる。昨年個人的に購入したジャガーXKRだ。30年前、1000万円オーバーした代物が今日その半分、いや1/3や1/4で入手することができる。
[お気に入りポイント その1]英国らしさが漂うウッド装飾の室内:ダッシュボード、ステアリングホイールの一部、シフトノブの周辺はウッドパネルが装着される。これがまさに英国風。エレガントなデザインはオンリーワンだ。小さいモニターはマップ表示できるがそこはスマホにお任せ。
発売から20余年が経った今、まさにそんなタイミングでもあるが、このクルマに関しては個人的な思い入れが強いことを述べておきたい。単に安くなったから手に入れたのではなく、新車時に関わりがあった。
というのも、1996年リリースされたジャガーXKシリーズは当時まさにラグジュアリースポーツの王道モデル。ベントレーがコンチネンタルGTを、アストンマーティンがDB9を投入する前の話だ。この2つの会社に大きな資本が入り世界中の富裕層の話題をさらったのは、2006年以降となる。
それはともかく、このジェフ・ローソンの手によるX100系はキラキラ輝いていた。そしてそれをある日自動車専門誌の編集者としてメディア向け試乗会でステアリングを握った。齢三十路すぎの若輩編集者にはこのクルマは尊すぎた。今も思い出すが、当時このクルマを撮影で借り出し運転するたびヒリヒリしていた。
[お気に入りポイント その2]時代を超越した美しいスタイリング:角度のついたリアピラーからも察せられるように、リアシートは人が乗れるようなスペースはない。チャイルドシートを付けて活用する幼児用だ。が、この流れるようなフォルムは素晴らしくリアエンドへの絞り込みも最高。
「こんな高級車擦ったら大変だ!」といったところである。と同時に、あまりにもカッコよすぎるスタイリングは今の自分には似合わないと思った。イメージするのは五十路すぎのジェントルマン。チャコールグレイのダンヒルのビスポークスーツが似合いそうだ。そして、いつかこんなクルマが似合う大人になりたいと、心に強く刻んだのである。
その意味で、還暦を過ぎ、ようやくこのクルマが似合う歳になったと思う。普段の足はSUVに任せるとして、ちょっと特別な日にV8エンジンに火を入れる。
購入は友人の英国車専門ショップ。納車前に消耗品やブッシュ類の交換をしてもらった。手を入れたのはオリジナルホイールを黒く塗ったのとリア三面のスモーク。車高が低いので後続車のヘッドライトが眩しかったためだ。あとはSEVチューン。そろそろ1年経つので、各部をよりブラッシュアップしたい思いが浮かんできた。なので、夏前にはもう一度細かくメンテナンスする予定。
[お気に入りポイント その3]内燃機関ならではの鼓動を感じるエンジン:XKRのエンジンは4LV8スーパーチャージャー。通常のXK8は過給器がつかないが、それでも十分走る。2002年から排気量は4.2Lへ上がりパワーアップも図られた。補機類が多いところに時代を感じさせる。
それにしてもこのスタイリングは芸術品だと思う。絵に描いたようなロングノーズ+ショートデッキ。眺めているだけでニヤけてしまう。それを実体験できるのがプチビンテージの魅力にほかならない。
Profile:自動車ジャーナリスト 九島辰也
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌副編集長なども経験。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。
中古車だから実現できる時を超えた愛車との出会い
九島氏とジャガーXKRのストーリーは、プチビンテージの実例として完璧だ。特に普段乗りの便利なクルマ+プチビンテージというライフスタイルは理想的。色々な意味で新車当時は手に入れられなかった憧れのクルマがリーズナブルに手に入れば、それはただ安いから中古車を購入するのとは違うレベルの満足度となるはずだ。
文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス 撮影協力●inCELL 瑞穂(株式会社インフィストデザイン) ※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2026年7月号「肩の力を抜いて楽しむプチビンテージの世界【愛せる中古車の選び方】」記事の内容です)
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