■今と違い、「似たようなクルマ」になりにくかった1960年代
ユーザーからの要求や、使用可能な技術とコストが同程度な場合、「ライバル」とされるクルマは基本的にほとんど似たものになりがちで、メーカーとしては細かい差異や耐久性、信頼性で違いを出すべく努力するものです。
【推し車】心の中で走り続ける懐かしの名車・希少車たち vol.4 メーカー編その2
しかし、1960年代の国産車といえばユーザーの目は肥えておらず、メーカーの技術力はマチマチで、何をどこまでどうやれば売れるのかがまだわかっていない時期でしたから、全く異なるアプローチのクルマが販売でもレースでもいい勝負になったものです。
1960年代を代表するスポーツカーの中でも、「ヨタハチ」ことトヨタスポーツ800と、ホンダのSシリーズはその好例だったと思います。
■あふれるパワーにモノを言わせた60年代の「ホンダS」
1963年にホンダ初の小型4輪車としてデビューしたS500から、1970年に生産を終えたS800まで7年に渡ったホンダ初期の「S」シリーズは、終始そのエンジンパワーにモノを言わせた走りが最大の特徴だったと言えるでしょう。
一貫して精密機械のようなDOHC直列4気筒エンジンに4連CVキャブレターを組み合わせ、軽自動車参入実績は軽トラのT360に任せて小型車への参入実績を作るため、通称「S360」から大型・大排気量化されたS500。
それでもパワー不足でS600、S800と排気量を上げましたが、基本的にはラダーフレームへボディを載せるという古い構造が重量増加を招き、走らせて面白いクルマではあったものの、速さの追求には限界があったのも事実です。
本来、ホンダはもっと後の1960年代後半あたりの4輪参入を目指していたところ、通産省の主導で国内自動車メーカーが再編されるおそれが出たので急きょ参入。
おかげでバタバタしたクルマづくりを強いられ、特異なメカニズムも目立ちましたが、大抵のことは「強烈なパワーとトラクション性能は百難を隠す」という、力技で成立させたのがホンダの「S」シリーズでした。
■非力でも軽量ボディと空力で攻めた「ヨタハチ」
対する「ヨタハチ」ことトヨタスポーツ800は、初代パブリカ前期型(UP10)用を転用して排気量を790ccに上げ、ツインキャブを装着したとはいえわずか45馬力、200cc以上排気量が小さいホンダ S500(531cc・44馬力)と大して変わらぬパワー。
しかし軽量モノコックボディの採用で車重は580kgに収まり、S500より100kg近く、排気量が同程度のS800に対しては170kg以上軽く、そして徹底した空気抵抗の低減により、公称最高速度ははるかにパワフルなS800に迫る155km/h!
1965年4月に発売されたヨタハチと同時期のライバルはホンダ S600(1964年3月発売・606cc・57馬力・695kg・公称最高速145km/h)で、まさに「パワーで勝るエスロク(S600)か、空力と軽さのヨタハチか」と、レースでは名勝負を繰り広げます。
有名なのは早逝した名手・浮谷 東次郎が駆るヨタハチと、後々までレースで活躍する同世代の友人・生沢 徹のS600による「船橋CCCレースでの対決」で、アクシデントによる最下位から猛烈に追い上げた東次郎が大逆転勝利を収めました。
■理想は「ヨタハチにホンダエンジン」
しかしその東次郎からして、「ヨタハチにホンダのエンジンを載せたら凄いクルマができるぞ!」とホンダのDOHCパワーを認めていたのは(※)、「軽さと空力のヨタハチ、パワーのエスロク」を象徴するようなエピソードです。
(※そもそも東次郎の愛車はエスロクで、トヨタワークスの選手でありながらプライベートではエスロク改「カラス」でもレースに出ていた)
その後、ホンダはさらにパワフルなS800を1966年に発売しますが、軽くて空気抵抗が少なく、パワー控えめでもよく走るヨタハチは耐久レースでも長時間になるほど燃費の良さが強みで、1967年の第1回富士24時間耐久レースGT1クラスではS800に勝っています。
現在のSUPER GTのように性能調整があるならともかく、国産スポーツでヨタハチとホンダSほど異なるアプローチのクルマがライバルとして並び立った例は、なかなかないかもしれません。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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