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まるでヨーロッパのホットハッチだ! 新型ホンダ・フィットe-HEV・モデューロX試乗記

現行のホンダ「フィット」に設定されたスポーツ・ヴァージョンの「モデューロX」に今尾直樹が試乗した。ノーマルモデルとの違いとは?

違いに驚く

脈々と受け継がれるRSという名の“最速ワゴン”

「モデューロX」シリーズの最新モデル、フィットe:HEVベースのそれは、走り出した途端、「これはいい!」と、思わせた。

まるでヨーロッパのホットハッチのような感覚。やや硬めで、でも、硬すぎない。その乗り心地はクリスピーで、サクサクしている。

例によって、足まわりの独自パーツはダンパーとホイールだけで、コイル・スプリングとタイヤはノーマルのままだという。

それなのに、ボディには補強したみたいなしっかり感があって、直進安定性が高い上に、まるでフロントがダブル・ウィッシュボーンのクルマみたいに正確で、よく曲がる。

ノーマルのフィットe:HEVがパステル・カラーのクレヨンだとしたら、こちらはドイツの製図用ペン、ロットリングという感じ。驚きましたねぇ、ロットリングを初めて使ったときには。

製図ではなくて、落書きしただけですけれど、描線がぼやけるクレヨンとは大違い。シャープでクリア、インクの出も滑らかで、正確かつ、気持ちのよいラインがスイスイ描ける。このフィットもカッチリ感としなやかさを備えてもいる。基本的には同じクルマのはずなのに、こうも違うのはなぜなのか?

6月4日に発売となったフィットe:HEVモデューロXの試乗会が7月上旬に開かれ、われわれも参加した。筆者は今年の3月に「S660モデューロX」の特別仕様車を袖ヶ浦フォレストレースウェイで走らせたときと同じ感銘を今回も受けた。東京青山のホンダ本社で簡単な車両説明を受けた後、群馬県利根郡みなかみ町にある群馬サイクルスポーツセンター、略称「群サイ」まで、約160kmのドライブ。途中、関越自動車道の高坂SAでモデューロXとノーマルを乗り換え、さらに群サイでは箱根の長尾峠よりも狭くて曲がっていてアップダウンのある「峠サーキット」というクローズド・コースで比較試乗することもできた。

“実効空力”とは?

「モデューロX」シリーズとは、ホンダの純正アクセサリー・パーツ・メーカー、ホンダアクセスが開発した内外装と足まわりを、量産過程で装着して販売するコンプリート・カーである。モデューロはもともとホイールのブランドとして1993年に誕生し、その後、エアロ・パーツ、サスペンション・キットが追加され、2013年発売のN-BOXを嚆矢として、以後、N-ONE、ステップワゴン、フリード、S660、ヴェゼル(初代)と続き、2020年登場の新型フィットをベースとする今回のモデルで第7弾となる。

その最大の特徴は、「実効空力」にある。日常の速度域でも体感できる空力効果を意味する、ホンダアクセス独自の用語で、彼らはつねにこの「実効空力」を追い求めて開発してというのだ。私たちは、というか、少なくとも筆者は、エアロダイナミクスは100km/以下ならさほどの効果はあるまい、と、タカを括っていたけれど、同社のエンジニアによると、そうではない。ほんの数km/hの速度でも、それこそ走り出したら、すぐに効果があるという。

フィット・モデューロXの場合、具体的にどこが違うかというと、外観では前後バンパーとリア・ゲートのスポイラーを交換している。フロント・フードの先端はよりトンガっていて、空気を上に逃す。バンパーの下面はスロープ形状になり、小さなフィンが付いている。これが車体下面の中央に速い空気の流れを生み出し、直進安定性を向上させる。同じくバンパーの下面の両端に、「エアロボトムフィン」と呼ばれるイボのような形状の小さなフィンが10個ぐらい並んでいる。これらはホイールハウス内の空気の流れをスムーズにして内圧を低減し、旋回時にスムーズなステアリング・フィールを生むという。

リアでは、mm単位で変更した専用のテールゲート・スポイラーが空気の流れを改善し、前後のリフト・バランスを向上させている。リア・バンパー下面のディフューザー形状は、車体の下面を流れる空気の流速を高め、安定感のある走りを狙っているという。

「実効空力」効果により、ノーマルのフィットの接地荷重がフロント寄りなのに対して、モデューロXではすべてのタイヤに均等に荷重をかけている。そのおかげで、外乱に強くて、ヨーの発生を抑えることができるというのだ。

この「実効空力」をコンピューターではなくて、ひとの感覚でつくり出していることも、モデューロXの大きな特徴だ。風洞でのテストもするけれど、それはあくまで答え合わせに過ぎず、パーツをつくっては装着して実走し、実走しては改善する、を繰り返しているという。北海道にあるホンダの鷹栖プルービンググラウンドで行われるテストには、デザイナーやモデラーも参加し、全員で情報を共有しながら開発を進めているのだという。

前述したように、足まわりではダンパーとホイールを換えているだけで、185/55R16サイズのタイヤとコイル・スプリングはノーマルのまま。ホントに不思議だ。

ベースになったフィットe:HEVの最上級モデル、LUXEは1200kg。モデューロXは1190kgと10kg軽い。全長4000mmと、ノーマルより5mmだけ長くなっているのは、フロント・ノーズがトンガっているからだろうけれど、全長が延びているのに車重が軽いのは、軽量アルミ・ホイールのおかげもあるのだろう。このホイールは、「しなり」を意識して設計しているという。「実効空力」のエアロ・パーツと専用ダンパー、そしてこの「しなり」をコントロールする専用ホイールの3点セットで、モデューロXは、独自の、筆者に言わせると、ロットリングの書き味のような乗り味を生み出している。

欲を言えばパワーユニットも……

ただですねぇ、パワーユニットに手をつけていないのが、あまりにも惜しい。と、思ったこともまた事実である。たとえば、群サイの「峠サーキット」には45度曲がりつつのぼるコーナーがあって、そこでアクセルを踏み込んでも、一瞬加速をためらうようなそぶりを見せる。

ホンダe:HEVは、基本的にエンジンで発電した電力で走行用モーターを駆動する。加速時には、バッテリーからの電力も使うので、よりパワフルな加速が楽しめる。ところが、電池の容量が小さいから、アクセル全開を続けていると、エネルギーを使い切ってしまう。そうすると、加速時にあるはずの加速が、あれ? と、期待外れに終わって、失速したような感覚を、少なくとも筆者は覚えてしまう。

つまり、パワーユニットがぜんぜんスポーティではない。足まわりとの相性では、ノーマルのフィットのクレヨン風のほうがうまくまとまっているようにも思える。

この点について、試乗後に懇談したエンジニア氏によると、パワーユニットもチューンしたかったけれど、ホンダがそれを認めなかったという。その理由は聞きそびれたけれど、エンジンまでパワーアップされた日には、「モデューロX」の存在が大きくなりすぎる、とご本家は考えたのだろう。

いずれにせよ、フィットe:HEVの走行用モーターの最高出力109psと最大トルク253Nmは、ガソリン・エンジンみたいに、右足を踏み込めば引き出せるわけではないので、バッテリーのエネルギー残量を頭に入れながらアクセルを開けるという、知的なドライビングが求められる。

筆者のように頭の古いひとには合わないのです、ようするに。

自分好みのフィット

現行フィットには、98psと118Nmを発揮する1317ccのピュア・ガソリン・エンジン仕様もあるから、そっちをベースにしたらどうなのでしょう? 担当開発者に、そうおたずねしたところ、「モデューロX」はフィットのなかで、かつてのRSのようなスポーツ・モデルであると同時に、「なんでも付いている、いちばんいいのをください」という需要に応えるモデルでもあるという。

フィットの最上級グレードのLUXEの1.3リッターは、車輌価格207万6800円。そのハイブリッドであるe:HEVは242万6600円。さらにそのモデューロXは286万6600円。アド・オンでのっけていくビジネスなので、下のグレードで展開することは事実上、むずかしいということらしい。

フィットe:HEV LUXEとモデューロXとの価格差は44万円。車両価格300万円以下のモデルでこの差は大きい。それでもモデューロXは、フィットで第7弾になり、続いているということは、ビジネスとして成立しているわけである。フィット・モデューロX自体の販売目標はフィット全体の3%、トータルで3000台を見込んでいる。

「実効空力」を追い求めてつくられるエンスージアスティックなコンプリート・カー、モデューロXの最新モデルは、とてもスポーティな足まわりを持っているのに、パワー・ユニットがスポーティではないところが残念である。

と、筆者は思ったのですけれど、フィットのモデューロXのユーザーにしてみれば、そんなの、ハイブリッドだから当たり前、ということなのである。彼らはスポーティ・モデルを求めているわけでもない。自分好みのフィットが欲しいだけなのだ。

だから、これでいいのである。これでいいのだけど、それでも私は申しあげたい。パワーユニットもやってちょうだい、と。

そのほうがモデューロXの未来はいっそう輝かしくなると筆者は信じるからである。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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