10月25日、鈴鹿サーキットで開幕したWTCR世界ツーリングカーカップ日本ラウンド『JVCケンウッド・レース・オブ・ジャパン』。今季はアウディRS3 LMSの2台体制で参戦するAudi Team Hitotsuyamaがワイルドカード枠でスポット参戦しているが、ウエットとなった走行初日から好パフォーマンスを披露し、並み居るツーリングカー遣いたちがひしめく上位陣に食い込んだ。
今季、Hitotsuyama RacingとしてアウディRS3 LMSをTCRジャパンシリーズとピレリスーパー耐久シリーズに投入しているチームは、2018年のWTCRを見た富田竜一郎の「このレースに出てみたいです」というリクエストに応え、富田、そして全日本F3選手権やスーパーGTで活躍する宮田莉朋の2台体制でWTCRにスポット参戦した。
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スーパーGTではトップクラスのチーム、そしてドライバーふたりとはいえ、ツーリングカーの世界はある意味特殊。特にWTCRは、近年こそフォーミュラ出身のドライバーたちが活躍しているが、ツーリングカーの世界で長年活躍してきた大ベテランがひしめく。さらにワイルドカード枠は20kgのハンデもあり、鈴鹿に来るまでふたりは「予選最後尾スタートかな」と話していたという。他のドライバーもそうだが、特に今季の鈴鹿はふたりとも初めて走るという東コース開催で、地元のメリットもやや少なかった。
ところが、10月25日の走行初日は雨。フリープラクティス1/2ともに、宮田は3回目となるTCRドライブ、富田はひさびさの個体でのレース、さらにふたりは初めてのTCRでのウエットという条件ながら、順調に上位陣に食い込み始めた。
さらにヘビーウエットとなった予選1回目では、赤旗が続出するなか、タイミング良くアタックした宮田がシングルの7番手を獲得。そのセッションでは流れに恵まれず16番手となったものの、そこでのセッティング変更が功を奏した富田は、予選2回目で15番手を獲得した。宮田は予選2回目はアタック周に赤旗終了になってしまったが、それでも22番手だ。
「TCRに乗るのが、このレースが3回目くらいなんです。実際に鈴鹿で走らせるのも初めて(これまでは富士での走行)ですし、東コースですからね。ウエットも初めてでした。でも流れも良かったですし、チームと初めて戦うレースのなかで協力してくださったので、皆さんに感謝しています」と宮田は語った。
また、富田も「ヨコハマ、TCRのウエットはほとんど経験がないですし、今年TCRジャパンを走っていたクルマに乗るのもひさびさでした。鈴鹿でどんな動きをするのかが見えないなかで、宮田選手、そしてエンジニアのピエール(アーナウド)と相談しながら、クルマとタイヤの使い方をうまくいい状態にもっていけたと思います」と振り返った。
「フリープラクティス2では2台ともいい位置で終えられたので、遠くないところにいるフィーリングはありました。予選1回目では天候と赤旗に翻弄されましたが、予選2回目に向けてセットを変えたことで、Q2に届きそうなフィーリングを得ることができました」
「ただ、近づいたからこそ見える“世界との壁”も見えてきています。コンマ1秒の部分で、僕たちが足りない経験値があるのかと思っています。でも、総じて見ると、宮田選手の7番手や僕のQ1の15番手というのは、思ったほど悪くないと思っています」
ちなみに、そんなふたりだが、東ショートカットについては、アウディRS3 LMSのアイポイントの低さもあり「見えない」のだという。「あそこで右に行くのは初めて」という富田、そして宮田も「感覚で、いけるかいけないか」という状況だという。
とはいえ、明日はもうレース1がやってくる。初日がウエットだったこともあり、ドライでの走行は“ぶっつけ本番”だ。さらに東コースでのレース、WTCRドライバーたちとの本気のバトルがやってくる。
「レースはどんなものになるかも分からないですし、うまく乗り切ることができればと思います。7番手は予想外にいいグリッドなので、これをいい方向にしたいと思います。86/BRZ Raceでの経験なども踏まえて、世界と戦いながら成長できるようなレースにしたいですね」と宮田は土日のレースに向けて語った。
また、富田も「明日のレースは、僕は少し後ろのグリッドになりますが、日曜のレースも同じような位置になるので、ドライのフィーリングや、まわりのドライバーのクルマの動かし方やバトルのしかたを見つつ、いいレースをして、トップ10に入れるようなレースを皆さんにお見せできればと思っています」とレースに向けて意気込んだ。
若手のふたり、そして日本チームが世界の強豪を相手にどんな戦いを見せるだろうか。富田は鈴鹿10時間で、宮田はマカオGPで世界との戦いを経験している。“世界との壁”をいかに埋めていくのか、大いに楽しみなところだ。
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