ルーフラインを延長したリンクスのワゴン
今回ご登場願った、ホワイトのジャガーXJ-SCは、デイブ・ノリス氏がオーナー。走行距離は11万9000kmと、年式の割には短い。
【画像】カブリオレやステーションワゴンも ジャガーXJ-S EタイプとXJ220 直近のXJサルーン 全118枚
HE仕様でもあり、タイヤは幅が215へ広がっている。アルミホイールはスターフィッシュ・デザイン。インテリアでは、メーターのフォントとステアリングホイールが違うものの、基本的な造形はクーペと変わらない。しかし、高級感は高い。
乗り心地は硬め。車重が90kgほど増え、サスペンションが強化してあるためだろう。一方で、300psの5.3L V12エンジンは明らかにパワフル。特に中域でたくましい。
XJ-SCの登場で影響を受けたのが、英国のコーチビルダー、リンクス社。XJ-S クーペをベースに、コンバーチブルへの改造を請けていたのだ。そこで新たなスタイルとして考案されたのが、ルーフラインを延長したステーションワゴン、イヴェンターだ。
発表は1983年10月のロンドン・モーターショー。骨太なバットレスは大きなサイドウインドウへ置き換えられ、美しく仕上がっていた。リアシートの後ろには、奥行きが190cm近くある荷室が設えられ、会場の話題を集めた。
フラットな荷室の床面は、燃料タンクの位置を変更することで実現。沢山の荷物にも耐えるよう、リア・サスペンションも改良を受けていた。注文には6950ポンドの他にベース車両が必要で、完成までに14週間を要したという。
高域で甘美な響きになる6気筒 足取りは軽快
オパールセント・ゴールドに塗られたリンクス・イベンターのオーナーは、マイケル・ビング氏。1985年式で、9年前に購入したそうだ。リンクス社は合計67台を生産しているが、3.6L直列6気筒エンジンとMTを搭載するのは2台しかない。
スタイリングの印象は人それぞれかもしれないが、筆者の目にはハッとするほど優雅に映る。リアシート側の空間は拡大され、大人でも問題なく座れる。ステアリングホイールはリンクス独自の3スポークだが、それ以外の前席側はXJ-Sのままだ。
これに載る直6エンジンは、AJ6型と呼ばれるオールアルミ製で、XJ-S用に新開発され1983年に登場。サウンドは低域では実務的だが、高域では甘美な響きへ転調する。
トランスミッションは、ゲトラグ社製の5速マニュアル。シフトレバーはスムーズに動く。最高出力は228psだが、V12エンジンのXJ-Sと比べても、動力性能は2割程度しか劣らないように感じる。フロントが軽い分、むしろ足取りは軽快だろう。
もう1台、社外で仕立てられたXJ-Sが、リスター・ジャガー。サイモン・スパーレル氏がオーナーで、4000時間に及ぶ入念なレストアを経ており、ミネラル・ブルーのボディがまばゆい。
かつてAUTOCARの姉妹誌で編集長を勤めた、サイモン・テイラー氏はXJ-Sの性能に不満を抱いていた。ある時、リスター・カーズのブライアン・リスター氏と、こんな会話を交わしたという。「XJ-Sを改造して、リスター・ジャガーと呼ぶのはどうだろう?」
遠くから違いがわかるリスターのサウンド
このアイデアは、WPオートモーティブ社とともに実現された。通常の5.3L V12エンジンの排気量は、5955ccへ拡大。バランス取りされた強化クランクシャフトと、コスワース社製の鍛造ピストン、独自のシリンダーヘッドやバルブなどが与えられた。
インジェクションにスロットルボディ、マニフォールドも専用品。これでは飽き足らず、スーパーチャージャーで過給される7.0L仕様も用意された。
今日ご登場願ったのは、6.0Lエンジンのリスター・ジャガーXJ-S 6.0 MkIII。17インチの2ピース・アルミホイールに、フィット感の高いエアロキット、丸目4灯のヘッドライト、マット仕上げのグリルやウインドウトリムなどで違いが主張されている。
サスペンションは引き締められ、ローダウン。インテリアは、リスター流の高級感で仕立て直されている。
その姿を見ずとも、聞こえるサウンドで遠くから違いがわかる。接近すれば、背筋がゾクゾクするほど刺激的。とはいえ、飛ばしていない限り、リスターは上質で穏やかだ。
5速MTのレバーは若干引っかかりがあり、ゴムのような手応えながら、ギア比は適切。クラッチペダルは重すぎない。カーブへ飛び込んでも、しっかりボディは遠心力に耐えてくれる。車重を感じさせないほど、身のこなしは機敏だ。
チューニングの結果得た音響が、実際以上のスピード感を生む。1986年にAUTOCARが実施したテストでは、5.3Lエンジンのリスターは0-100km/h加速を5.6秒でこなした。
特別なライフスタイルを今でも謳歌できそう
そして今回の5台目となるのが、XJ-SCの後を1988年に継いだコンバーチブル。前方から完全に折りたたまれるソフトトップが備わり、+2のリアシートも残されている。
1989年に、ジャガーはフォードによって買収。多額の投資が実施され、クーペとコンバーチブルは1991年にフェイスリフトが施された。V12エンジンは6.0Lへ、直6は4.0Lへ排気量が拡大。モデル名も、XJ-SからXJSへ改められている。
スタイリングは、ジェフ・ローソン氏の手でアップデート。前後のバンパーやバットレスが美しく処理し直され、オリジナルの雰囲気はそのままに、モダンさが追加された。
レッドのXJS コンバーチブルは、ジャガー・デイムラー・ヘリテージトラストが所有する1台。最終年式となる、1996年式のセレブレーション仕様で、走行距離は1万kmを過ぎたばかり。新車のような雰囲気を漂わせる。
インテリアの品質は大幅に改善しており、人間工学も明らかに優れ、全体的に扱いやすい。最高出力は226psで、そこまで速いとは感じられないが、ひときわ洗練されている。オープンでゆったり流すのも気持ち良いが、飛ばしても充足度は高い。
1975年の発売から、21年も生産が続いたXJ-S。モデル末期のXJSは、若干熟れすぎていた事は否めないだろう。だが改めて運転してみると、当初のパンフレットでイメージされていた、特別なライフスタイルを今でも謳歌できそうに思えた。
協力:XJSクラブ、ジャガー・デイムラー・ヘリテージトラスト、英国自動車博物館
ジャガーXJ-S/XJS 5台のスペック
ジャガーXJ-S V12(1975~1981年/英国仕様)
英国価格:8900ポンド(新車時)/2万5000ポンド(約488万円/現在)以下
生産数:6万1209台(V12合計)
全長:4870mm
全幅:1790mm
全高:1260mm
最高速度:246km/h
0-97km/h加速:6.7秒
燃費:3.9-5.0km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1686kg
パワートレイン:V型12気筒5343cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:289ps/5800rpm
最大トルク:40.5kg-m/3500rpm
ギアボックス:3速オートマティック/4速マニュアル(後輪駆動)
ジャガーXJ-SC HE(1983~1988年/英国仕様)
英国価格:2万7215ポンド(新車時)/2万4000ポンド(約468万円/現在)以下
生産数:5014台
全長:4870mm
全幅:1790mm
全高:1270mm
最高速度:225km/h
0-97km/h加速:7.7秒
燃費:5.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1784kg
パワートレイン:V型12気筒5343cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:300ps/5500rpm
最大トルク:43.8kg-m/3250rpm
ギアボックス:4速オートマティック(後輪駆動)
リンクス・イベンター 3.6(1983~2002年/英国仕様)
英国価格:6950ポンド(新車時/改造費のみ)/10万ポンド(約1950万円/現在)以下
生産数:67台
全長:4870mm
全幅:1790mm
全高:1260mm
最高速度:226km/h
0-97km/h加速:7.4秒
燃費:6.2km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1610kg
パワートレイン:直列6気筒3590cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:228ps/5300rpm
最大トルク:33.1kg-m/4000rpm
ギアボックス:5速マニュアル(後輪駆動)
リスター・ジャガーXJ-S 6.0 MkIII(1986~1994年/英国仕様)
英国価格:1万5000ポンド(新車時/改造費のみ)/7万ポンド(約1365万円/現在)以下
生産数:49台
全長:4870mm
全幅:1790mm
全高:1260mm
最高速度:273km/h(予想)
0-97km/h加速:5.6秒(予想)
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1700kg(予想)
パワートレイン:V型12気筒5955cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:488ps/6250rpm(予想)
最大トルク:56.5kg-m/4000rpm(予想)
ギアボックス:5速マニュアル(後輪駆動)
ジャガーXJS 4.0 コンバーチブル(1992~1996年/英国仕様)
英国価格:4万1270ポンド(新車時)/5万ポンド(約975万円/現在)以下
生産数:−台
全長:4764mm
全幅:1883mm
全高:1254mm
最高速度:222km/h
0-97km/h加速:8.6秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1790kg
パワートレイン:直列6気筒3980cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:226ps/4750rpm
最大トルク:38.3kg-m/3650rpm
ギアボックス:4速オートマティック(後輪駆動)
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みんなのコメント
後部座席は幼稚園児の2人の子供の指定席でしたが、簡易的なチャイルドシートの設置も困難でした。
ウインドゥガラスが落ちたり、パワーアンテナか勝手に上下してバッテリーあがりしたり、いきなりオイルが抜けた等々色んな経験をさせて貰いました。
いい思い出です。
もう一度所有してみたいクルマです。
2ドアクーペのリアを 箱にしたのは、シューティングブレイク
狩猟犬を乗せ、ハンティングに行く 車