フランス、ル・マンのサルト・サーキットで6月8日、WEC世界耐久選手権第4戦『第93回ル・マン24時間レース』に向けた公式テストが行われた。この午前と午後の2セッションが設定された同テストではトヨタ・ガズー・レーシングの8号車トヨタGR010ハイブリッドが総合トップタイムをマークし、2番手に前年の覇者51号車フェラーリ499Pが続く結果となった。ここでは、そんなテストデーの現場から最新トピックをお届けする。
■LMP2だけ遅くなった理由
午後は一転、赤旗3度の荒れ模様。8号車トヨタが0.5秒差の最速タイムでテストデーを締める
今季2025年のル・マン24時間レースのテストデーにおけるラップタイムは、昨年の同時期よりもおおむね早かった。8号車トヨタGR010ハイブリッドがブレンドン・ハートレーのドライブで記録したベンチマークタイム3分26秒246は、昨年のテストデーでポルシェのケビン・エストーレが記録したトップタイムよりも0.661秒早かった。
LMGT3クラスのペースは大幅に向上し、ホセ-マリア・ロペス(アコーディスASPチーム)の87号車レクサスRC F GT3が記録した3分55秒276というベストタイムは、昨年セバスチャン・ボーが記録した同クラスのベストタイムを5秒近く上回った。一方、LMP2クラスのタイムは前年よりも遅く、ユナイテッド・オートスポーツのピエトロ・フィッティパルディが記録したベストタイム3分35秒370に対し、2024年の最速タイムはオリバー・ジャービスの3分34秒704だった。
トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパのテクニカルディレクターであるデイビッド・フルーリーは、午後のセッションで3度の赤旗中断があったにもかかわらず、2024年と比べてタイムが向上したことは驚きではないと述べた。
彼は記者団に対し、「バランス・オブ・パフォーマンス(BoP=性能調整)において、全員がパワーアップしているため、当然の結果だ」と述べ、次のように続けた。「路面コンディションもテストデーとしては良好だった。リジェ(サポートレースのマシン)も走行していたので、午前中に路面をクリーンにし、路面コンディションを整えるのに役立った」
LMGT3のペースが大幅に向上したことについて、アコーディスASPチームでベン・バーニコートの代役を務めるジャック・ホークスワースは次のように付け加えた。「とくに2回目のセッションでは風向きが少し影響したのだと思うが、グリップが非常に高く感じた。雲が出て気温もかなり低かったにもかかわらず、路面のグリップは昨年よりも高く感じた」
LMP2クラスの相対的なペース不足は、ポール・リカールで開催されたELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズの直近のラウンドでデビューした、グッドイヤーのより耐久性の高いコンパウンドのタイヤが原因だと、複数のドライバーが指摘した。
■「優勝候補はフェラーリ」とトヨタ技術ボス
ハートレーがライバルに0.5秒以上の差をつけたにもかかわらず、フルーリーは現時点ではフェラーリが倒すべきメーカーだと説明した。「フェラーリはかなり強いと思う。そして、その後ろに控えているメーカーがかなりたくさんいる。我々とキャデラック、BMW、アルピーヌ、ポルシェの5社は同じくらいの強さだと考えている。そして我々も僅差ですが、フェラーリそこからわずかにリードしていると思う。明らかに彼らが優勝候補だ。1周のラップタイムで測れるものではない」
キャデラック勢で最上位の9位に入った、ハーツ・チーム・JOTAの12号車をドライブしたアレックス・リンも同様の見解を示した。「好調なブランドはたくさんあり、我々もそのひとつだと思う。来週は勝利を掴むための大きな戦いになるだろう。ここ数年で何が正しかったのかを学んだと思っている。テストデーではいくつか新しい部分を試した。うまくいった部分もあれば、うまくいかなかった部分もあった。キャデラックはこのサーキットによく合うことは分かっているので、ここ数年で培ってきたノウハウを結集して結果につなげたい」
■再舗装されたのに……
サルテ・サーキットのふたつのセクションは昨年のレース以降、再舗装されている。ひとつはテルトル・ルージュからユノディエール(バックストレート)の最初のラウンドアバウトまで、もうひとつはアルナージュからポルシェ・カーブの最初の右コーナー出口までだ。
アルピーヌのフレデリック・マコウィッキは、後者のセクションは再舗装工事後も「かなりバンピー」なままだと指摘した。このフランス人ドライバーはSportscar365の取材に対し、「それを考慮する必要がある。もちろん意図的でないことはわかっているが、アルナージュを抜けるとかなりバンピーだ」と語った。
BMW Mモータースポーツの代表であるアンドレアス・ルースは、午後のセッションで20号車BMW MハイブリッドV8がストップしたのは、オイル漏れが原因だったと明言した。「リークの原因はまだ調査中だ。どこから漏れていたのか確認する必要がある」
BMWのトップドライバーが8番手タイムを記録したこの日、BMWの順位について、ルースは次のように付け加えた。「全体的には順調と言えるだろう。中でもトヨタとフェラーリは好調のようだが、どのマシンもかなり拮抗しているようだ」
■世界トップレベルの競争であるがゆえ
ジャック・エイトケン(キャデラック・ウェーレン)とジュール・グーノン(アルピーヌ・エンデュランス・チーム)は、ザントフォールトで開催されるDTMドイツ・ツーリングカー選手権のレース2のスタートに間に合うよう、午前のセッション開始から2時間後にプライベートジェットでル・マンを出発した。エイトケンはエミール・フライ・レーシングのフェラーリで4位、グーノンはウインワード・レーシングのメルセデスAMGで8位となった。
プジョーのドライバーであるミケル・イェンセンは、93号車プジョー9X8が19番手に終わったこの日の2回のテストセッション後、落胆した様子を見せた。彼はSportscar365に対し、「今日はあまり良い状態ではなかったため、今のペースにはあまり満足していない。しかし、レースウイーク初日の水曜日に速く走れるように何かできることはないか、検討する必要がある。いまの状態ではこれ以上のペースは出せないからね」と語った。
2024年仕様の9X8の開発と快適性について、イェンセンは、現行仕様のマシンで1年間走行してきたことは「非常に役立っているが、それは他の競合チームにも同じこと」だと述べた。さらに、「昨年から大きく進歩したと感じているが、僕たちが前進するたびに、他のチームも前進している。だからこそ、世界のトップメーカーとの競争は厳しいものなんだ」と付け加えた。
■15台以上にチャンスあり
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのリザーブドライバー、ニコ・ミュラーは午前中のセッションで5号車ポルシェ963に乗り込み5周をラップした。ポルシェLMDhファクトリーディレクターのウルス・クラトルによると、これは「計画の一部」だったという。
クラトルは次のように語った。「事前に決めたプログラムどおりに進めたが、まずまずだった。今日はとくに不満はない。全員がそれぞれのプログラムをこなしたと思う。同じことをしているのは私たちだけではない。だからこそ、お互いの競争力を判断するのは難しいと思っている。確かなことは、21台のハイパーカーがあり、そのうち16台、17台、あるいは18台に優勝のチャンスがあるということだ。非常に接近した戦いになるだろう」
他のハイパーカー・リザーブドライバーでは、フィリップ・エングが2台のBMWでそれぞれ5周走ったが、プジョーのテオ・プルシェールとトヨタのホセ-マリア・ロペスは、それぞれLMP2とLMGT3での自身のプログラムに集中した。
■ドライブ予定をキャンセル
アール・バンバーは、予定していた3台の乗り比べはせずに38号車キャデラックVシリーズ.Rのみをドライブした。ルイ・デレトラズはハイパーカーのエントリーリストから外れた。彼は以前、キャデラックWTRの4人目としてリストに名を連ねていたが、それは書類の手続き上「残っているだけ」と話していた。
LMP2クラスでは、ソフィア・フローシュがアルガルベ・プロ・レーシングの25号車オレカ07・ギブソンで10周を走行し、3分41秒506の自己ベストを記録。一方、インター・ユーロポル・コンペティションの43号車オレカをドライブする予定だったビジョイ・ガーグはエントリーリストから外された。
インター・ユーロポルのドライバー、ルカ・ギオットは午前のセッション中にポルシェカーブでクラッシュを喫したが、幸い無傷だった。また34号車オレカも衝突による外観上の損傷のみで済み、車両は午後のセッション開始までに修理された。
LMP2チームのRLR Mスポーツは、テストデーのオープニングセッション序盤に非公認のセンサーを使用したため、午後のセッション開始時に30分間のストップ・アンド・ホールド・ペナルティを受けた。
テストデーが終了したル・マンは9日と10日は非走行日となる。レースウイークは11日水曜に始まり、同日14時(日本時間21時)からフリープラクティス1が行われる。続いて18時45分(日本時間12日1時45分)から予選が実施されたのち、日没後の22時(日本時間12日5時)からはフリープラクティス2が予定されている。
[オートスポーツweb 2025年06月09日]
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