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異例の開発中「GRヤリス Mコンセプト」に試乗してみた! 従来の「GRヤリス」とは別者!? Mコンセプトは「ドライバーの腕も試される、挑戦し甲斐のあるモデル」の真意とは

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異例の開発中「GRヤリス Mコンセプト」に試乗してみた! 従来の「GRヤリス」とは別者!? Mコンセプトは「ドライバーの腕も試される、挑戦し甲斐のあるモデル」の真意とは

 2025年1月の東京オートサロンでサプライズ発表されたGRヤリスMコンセプト(以下:Mコンセプト)は、モリゾウこと豊田章男氏とレーシングドライバーの佐々木雅弘氏のGRヤリスの困り事の解決の手段の1つとして「ミッドをやってみませんか?」の提案から生まれたミドシップレイアウトのスポーツ4WD研究実験車両です。

 2025年9月のS耐岡山で実戦デビューを果たし、レース中に1度も止まることなく走り切って多くのデータを残しました(実は終盤までトップ争いを展開)。

【画像】開発中! ミッドシップ4WDの「GRヤリス」です。画像で見る!

 2026年からはこれまでのTGRRに代わり「GR Team ORC Field」からの参戦となりますが、その理由は、スポットではなく年間通じての参戦にすることで、よりスピード感を持った開発を行なうためだと言います。

 今回、GRから「Mコンセプトに乗りませんか?」と言うスペシャルなお誘いを受け、筆者(山本シンヤ)は喜び勇んで取材会会場であるトヨタテクニカルセンター下山(TTC-S)を訪れました。

 結論から述べると、Mコンセプトは「ドライバーの腕も試される、挑戦し甲斐のある」モデルだと感じました。

 その詳細を紹介する前に、このクルマの開発経緯を少し振り返っておきましょう。

 このプロジェクトは今までのトヨタには無いモノです。開発の陣頭指揮を取るGR統括部チーフエンジニア・齋藤尚彦氏はモリゾウと共にGRヤリスを生み出したエンジニアで、その強みも弱みも最も熟知しています。

「これまでフロントエンジンの4WDで色々なトライをしてきましたが、現状の構成では乗り越えられない部分がありました。モリゾウは『神に祈る時間』と言っていますが、それを克服する手段の1つとして、『ミッドにやってみないか?』と言う提案があり、挑戦をすることを決めました」

 では、神に祈る時間とは一体何なのでしょうか。一般的にはアンダーステアの事を指しますが、筆者(山本シンヤ)はそれに加えて「アンダーステアになるのか? それとも曲がってくれるか?」と、クルマの挙動がドライバーの意思を離れてしまう一瞬の事も含まれていると考えています。ただ、勘違いしてほしくないのは、この神に祈る時間は通常領域での話ではなく、よりコンペティションでの領域での話と言う、かなり高度な課題です。

 そのためGRヤリスは発売後も車体やサスペンション、GR-FOURを含めたアップデートを行なってきました。ただ、やればやるほど乗り越られない壁があったと言います。その解決のためには“基本素性”に大きくメスを入れる必要があり、この挑戦を行なう決断をしたのです。

 ちなみにこの決断を行なったGRカンパニーの高橋智也プレジデントは、「GRヤリスの神に祈る時間はドライバーの困り事であり、それをカイゼンできるアイデアなら『やらない理由はないでしょう』と。GRはドライバーに楽しんでもらうクルマづくりが身上ですので」語っています。

 とは言え、トヨタは過去にミドシップの量産車に挑戦しましたが、その技術・ノウハウは完全に途絶えています。ちなみにミドシップ4WDはTTE(当時)がWRC・グループS規定に合わせてMR2をベースに開発した「222D」を試作しているも、量産車部隊とは全く別の話。つまり、Mコンセプトは本当に“ゼロ”からのスタートになります。

 齋藤氏は「MR2の技術資料は残っていますが、『なぜ挑戦したのか?』、『何に苦労した?』、『何を学んだ?』と言うような、当時のエンジニアの“想い”は全く残っていませんでした」と振り返ります。

 では、どのようなクルマなのでしょうか。

 齋藤氏は「正直に言うと、今も『何が良いのか?』を学びながらトライ&エラーの最中です。今回乗っていただくMコンセプトは試作1号車(ダート)と試作5号車(オンロード)ですが、この2台は同じミドシップ4WDでありながらも諸元は全く異なっており、まさに『壊しては直し』のフィードバックを愚直かつリアルに行なっています」と教えてくれました。

 ちなみに1号車は2023年1月に完成、実は「やるぞ」と決めてから僅か3か月で完成。正式な図面があるわけではありませんが、短期間で求めるモノを造り上げてくれる現場の“技”にも助けられたそうです。

 比べてみると、1号車はエンジンが直列3気筒1.6Lターボ、ターボの冷却は空冷、リアサスはダブルウッシュボーン、見た目や諸元もほぼGRヤリスと同じなのに対して、5号車はエンジンが直列4気筒2.0ターボ(G20E:現在開発中の次世代スポーツエンジン)、インタークーラーは水冷、リアサスはストラット、見た目はもちろんトレッド/ホイールベースなどの諸元も大きく変更されています(ちなみに現在S耐を戦うレースマシンは6号車)。

 つまり、現時点では市販化はもちろん商品化の決定はおろか、諸元も決まっていない本当の意味での先行開発車両なのです。

 そのため、本来であればメディアに乗せるタイミングでは無いはずですが、齋藤氏は「開発の歩みを含めて知ってほしい」と今回の機会を設けてくれました。この辺りは「クルマはストーリーが大事」と言う豊田氏の想いが現場にも浸透している証拠です。

 まずはニュルの3次元Gを再現した第3周回路(カントリー路)の同乗走行です。まず比較用として大嶋和也選手ドライブのGRMNヤリスに同乗。速度が上がれば上がるほど空力とサスのバランスが絶妙で、硬いのにしなやかなフットワークに「これで十分でしょ!!」と。ただ、Rの大きいコーナーではノーズがインを向くまでに“待ち”が必要なのは助手席でも間違いなくわかります。

 続いて、佐々木雅弘選手ドライブのMコンセプト(5号車)に乗り換えます。2.0Lターボ(出力は未公表ですが恐らく400ps前後)は絶対的な速さはもちろんレスポンスの良さ(ターボラグが少ない)とスポーツエンジンらしい心地よいサウンド(チタンマフラー装着)の良さが印象的で、スロットル操作に対してダイレクトに駆動力が伝わっているのは助手席でも良く解ります。

 フットワークは極めて鋭いノーズの入り、姿勢変化(前後左右方向)が少なく旋回軸がドライバーの近くにある旋回の様、駒のように俊敏かつ無駄のないクルマの向きの変わり方、GRヤリスが普通のクルマ感じてしまうコーナリングスピードの速さ、そしてアクセルONで後輪に荷重を乗せながら駆動で向きを変えられる自在性の高さなど、ミドシップの旨味は間違いなく出ています(ちなみに試乗時の前後駆動配分は30:70)。加えて、路面状況や速度域によってGRMNヤリスよりもしなやかさを感じる乗り心地にも驚きました。

 ただ、その一方で佐々木選手のコース幅を目一杯使ったGを逃がしながらのライン取り、ステアリング/アクセル/ブレーキをいつも以上に細かく素早く修正しながらの操作、そして時折見せるドライバーが意図しないクルマの挙動のアジャストなど、「暴れ馬をドライバーの技量でねじ伏せているな」と思う所がいくつかありました。

 そして、とにかく“熱い”。走行中の車内は常時ヒーター&シートヒーター全開状態(エアコンは軽量化のため未装着)、更に熱対策で車体の様々な所に穴が開けられているので、隙間風(熱風なので涼しくない)の影響で車内が埃っぽく(笑)。この辺りは“切って張った”の暫定版テストカーならではです。

 同乗後の素直な気持ちは「運転してみたい!!」と言う興奮と「自分は手なずけられるのか!?」と言う緊張感が入り混じった印象で、まさに野性味を超えて“血の匂い”を感じたモデルだと思いました。

 佐々木選手に聞くと「GRは様々なモデルラインアップがあるので、このクルマを量産化する時には、いい意味で『乗り手を選ぶクルマ』にしたいと思っています。つまりGR86(FR)とGRヤリス(横置き4WD)を自在に操れるようになった先にある上級編。もちろん現状に満足してないのでやりたい事はたくさんあります。時には齋藤さんと言い合いになりますが負けませんよ(笑)」と教えてくれました。

 続いて、ダートコースですが、こちらは同乗ではなく自らのステアリングを握っての試乗です。

 まずは比較用のGRヤリス(DAT)で走行します(ドライブモード:グラベル)。進化型になりアンダー/オーバーの挙動が出にくくなり、先ほどのGRMNヤリス以上に「これで十分でしょ!!」と言える走りです。コーナー進入で積極的に向きを変えるアクション(フェイントorサイドブレーキ)をしないとアンダーステアが顔を出すのも事実ですが、「まぁ、こんなモノでしょう」と言うレベル。

 続いてMコンセプト(1号車)に乗り換えます。筆者は最後のほうの試乗枠でしたが、スタート地点に進み「さぁ、スタート!!」とアクセルを踏んだ瞬間にエンジンが全く吹けなくなり、ピットに戻る手前でストール。

 メカニックにチェックしてもらうと熱の影響でパーコレーション(ガソリンが気化し気泡ができる現象)が発生。まさか令和の時代にパーコレーションとは驚きでしたが、齋藤氏は「まさにこのクルマで熱の課題に直面しましたが、ここまで連続走行は無かったので。

 その後の試作車はラジエーターを寝かせたり、配置を変更など様々な対策していますが、5号車以降は大きな問題なく走行できる状態になりました」と教えてくれました。

 燃料系を冷やして再スタート。今回は広場にパイロンを立てた定常円とタイトコーナーを繋げたレイアウトでしたが、確実にGRヤリス以上にドライバーの意図通りにコントロールが可能です。

 まずコーナー進入時にドライバーが向きを変えるアクションをしなくてもノーズがスッとインを向いてくれます。前後駆動配分はGRヤリスと同じ50:50の設定ですが、「フロントが引っ張る」と言うより「リアが押してくれる」感覚が強く、リア駆動ベースの4WDの旨味が確実に出ています。

 その結果、同じようにスライド状態に持ち込んでも今まで以上にステアリングに頼ることなくアクセル/ブレーキでクルマの角度や向きを簡単かつ自在に調整できます。グリップ走行時も駆動で曲げる力を生むためフロントタイヤのグリップに余裕があり、GRヤリス同じ速度/同じステアリング角度で走らせると逆にイン側に入りすぎるほどでした。

 タイトコーナーでのコーナリングも同様の印象で、神に祈る時間は確実に減っており、筆者も「楽に」、「気持ちよく」、そして「速く」曲がることができました。ただ、クルマに慣れて速度が上がってくると、5号車ほどでは無いもののミドシップ特有のリアの流れ出しが唐突さ(4WDなのでスピンまでは至らない)、ドライバーが意図しないクルマの挙動(アンダーステアも含めて)が顔を出し、上手に操りたくても手こずってしまうシーンも。

 恐らく、第3周回路よりも低い速度域、1.6Lターボ搭載でエンジンよりシャシーが勝っている状態だった事でプロフェッショナルドライバーではない筆者でもそれなりにコントロールできたと思っていますが、より出力の高い2.0Lターボが搭載されていたら、もっと難しい操縦性だと予想します。

 ちなみに一緒に乗った同業者の中には「これで十分でしょ!!」と言う人もいましたが、恐らく限界域まで使って走っていなかったのかなと。そういう意味では、ドライバーのスキルによって見える世界が違うと思いました。

 現状、開発状況は「山登りで言えば5合目にすら届いていない」段階との事で、総合的に見るとまだまだ粗削りかつ火傷しそうな仕上がりですが、絶対に面白いモデルになる予感しかありません。

 まだ最適解が見つかっていない状況なのでサスペンションのジオメトリーはもちろん、4WDの駆動配分(0:100~50:50まで)やカップリング締結のトルクは調整しやすい設定となっており、まだまだ足りているとは言えない熱対策を含めて、走る→壊れる→直す(=魔改造)は続きます。

 ちなみに400ps前後と言われる新開発のエンジン出力に対して佐々木選手は、「あればあるほどいい」、「いつまでも2JZに任せていられない」と言うコメントで、そちらの開発も並行して進められているのは言うまでもありません。

 そして、皆さんが気になっているのは、「このクルマの市販モデルはどんなクルマになのか?」でしょう。

 試乗後に齋藤氏や佐々木選手、そして我々メディアも含めたワイガヤをしましたが、「ウワサのあのクルマじゃないんですか?(メディア)」、「あくまでもGRヤリスファミリーです(齋藤)」、「個人的にはスポーツカーは背が低くないとね(佐々木)」、「このパッケージだとラゲッジが無いけど大丈夫?(メディア)」などなど、みんな言いたい放題です(笑)。ただ、そんな会話から新しい“何か”が生まれるかもしれません。 

 筆者は「市販化した時の価格は、GRヤリスユーザーが頑張れば手が届く範囲ですか?」と聞きましたが、齋藤氏はそこに関しては「もちろん、そのようにしたいと思っています」とキッパリ。その日が来るまで「買い替え? それとも買い足し?」と悩むことにします。(山本シンヤ)

文:くるまのニュース 山本シンヤ
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