現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【不世出の個性】アルファ・ロメオ4C、惜しまれる終焉 なぜ「奇跡の1台」と言えるのか

ここから本文です

【不世出の個性】アルファ・ロメオ4C、惜しまれる終焉 なぜ「奇跡の1台」と言えるのか

掲載 更新 12
【不世出の個性】アルファ・ロメオ4C、惜しまれる終焉 なぜ「奇跡の1台」と言えるのか

「そうでない」アルファを知ってる?

text:Takuo Yoshida(吉田拓生)

【画像】「つぶつぶ」のヘッドライト、惜しむ声も デビュー当初の4Cと比べる【詳細】 全42枚

photo:Sho Tamura(田村 翔)

アルファ・ロメオと聞くと4ドアセダンや2ドアのハッチバックといった実用性に優れたスポーティモデルを思い浮かべる人がほとんどだと思う。

だがそのラインナップ中に時おり「そうでない」モデルが混じっていることをご存じだろうか?

古くはV8搭載のモントリオールやザガートとタッグを組んだジュニアZとSZ、21世紀に入ってからは8Cコンペティツィオーネが有名だ。

最新のモデルとしては、この春にオーダーが締め切られた4Cがその代表である。

4Cの最大のトピックは、カーボンファイバー製のシャシーを採用していることだろう。カーボンモノコックは、かつてはマクラーレンF1やブガッティ、フェラーリのスペチアーレなど、車両価格が億を超えるハイパースポーツの専売特許だった。

だがアルファ・ロメオは、4気筒エンジンを搭載した車両価格1000万円前後のライトウエイトモデルに対しカーボンシャシー導入を成功させたのだ。

「そうでない」代表ともいえる4Cだが、かつてのアルファ・ロメオがイタリアを代表するレーシング、スポーツカーメイクスだった史実と照らし合わせれば「カーボンモノコックで当然」という見方もできるはず。

一連の「そうでない」アルファはメイクスの原初の精神を伝え続ける貴重なモデルでもあるのだ。

4Cのライバルはエリーゼではない?

アルファ・ロメオのミドシップのロードモデルとしては2作目(初代は1967年のティーポ33ストラダーレ)にあたる4C。2013年のジュネーブショーでこのクルマがデビューしたとき、そのライバルは誰の眼にも明らかだった。

ロータス・エリーゼである。

だが4Cの構成をチェックしていくと、エリーゼと似ているのは4気筒横置きのミドシップ2シーターという基本構成だけで、核となる部分は時代に即した差別化が図られていることがわかる。

アルミ接着シャシーのエリーゼに対し4Cはカーボンを採用しているし、エンジンはエリーゼが頑なに採用しないターボ過給となる。

またトランスミッションはパドルシフトによる6速デュアルクラッチのアルファTCTで2ペダルとなっている。

ちなみに4Cの車重はデビュー当初はエリーゼ(900kg前後)を意識して900kg以下と公言していたが、実際は1100kgほどもある。

つまり4C誕生のヒントがエリーゼにあることは明らかだが、その実像はエリーゼの上のクラスを狙った孤高の1台なのだと思う。

4Cのステアリングを握ってみれば、この小粒で流麗なスポーツカーの何物とも似ない立ち位置がすぐにはっきりすることになる。

理性+破壊=エンターテイメント

シャシーをカーボンで作る意味は剛性と軽さの両立にある。

実際にアルファ・ロメオ4Cを走らせてみると、ライトウエイトスポーツ的な軽快感よりもカーボン筐体特有のカンッカンッと打てば響くような硬さが前面に感じられる。ハンドリングも中立付近から敏感で、正確無比な匂いがプンプンとする。

もしドライバーの背中にV10やV12がタテ方向に載っていれば、これはもうハイパースポーツカーなのだ! と思わずにはいられない。

だが高速道路に合流し、スロットルを踏み込んでみると、4Cで最もコストが掛かっているであろうシャシーを包み込むほどの個性がしゃしゃり出てくる。

1.75Lというアルファ伝統の排気量を与えられたターボ・エンジンである。昨今のターボはリッター200ps近くてもターボラグがまろやかに感じられたりするものだが、4Cのそれは違う。

まるでフェラーリF40のように、4000rpmの手前でリアタイヤのグリップを破壊せんばかりのターボキックが襲ってくるのだ。

どこまでも正確無比たらんとするカーボンシャシーの理性を、気まぐれな乱暴者的ターボ・エンジンが破壊しに掛かる矛盾、もしくはマトリモニオ(結婚)。

これこそステアリングを握る手が大いにジワる4Cの危うい正体。イタリアン・ミドシップ特有のエンターテイメントの発露なのである。

4Cは将来の名車「クラシック」に?

今どきのスタビリティコントロールは備えているが、それでもウェット路面やヘタクソドライバーとは相性が悪そうなアルファ・ロメオ4C。

この飛び切り辛口のライトウエイトスポーツカーの生産終了は残念なことだが、当のアルファ・ロメオはホッとしているのかもしれない。

この手のモデルはブランドのプロパガンダにはなるが、商売としてはまるで美味しくないシロモノ(作れば作るほど赤字?)と相場が決まっているからだ。

もしあなたが生粋のクルマ趣味人であるならば、今というタイミングを逃してはならないだろう。

アルファ・ロメオの歴史のみならず、昨今の自動車界全体の流れを鑑みた場合にも、4Cは将来の名車、「クラシック」として扱われる公算が大きいからである。

アルファ・ロメオ4Cというクルマは少しだけ敷居が下がってきたカーボンモノコック・シャシーと、厳しくなる一方の排ガス規制で牙を抜かれる直前のガソリン・エンジンの一瞬の交錯によって産み落とされた奇跡の1台。

だからこそ4Cに続編はないのだ。

新型アルピーヌ的な調和は捨てがたいが、数に限りのある不世出の個性と比べることはできまい。

ヘタクソを自認する人でもチャンスがあればマストバイ。ウデは後からいくらでも付いてくる(?)。たぶん。

こんな記事も読まれています

トヨタ堤工場、2週間生産停止の真相、『プリウス』後席ドア不具合で13万台超リコール[新聞ウォッチ]
トヨタ堤工場、2週間生産停止の真相、『プリウス』後席ドア不具合で13万台超リコール[新聞ウォッチ]
レスポンス
高速道出口にある「青いスラッシュ」何の意味? 実は重要なコト! 覚えておくべき「補助標識」の役割とは
高速道出口にある「青いスラッシュ」何の意味? 実は重要なコト! 覚えておくべき「補助標識」の役割とは
くるまのニュース
EV車は重いって聞くけど......電動バイクは?
EV車は重いって聞くけど......電動バイクは?
バイクのニュース
東海理化、トヨタ・プリウス向け後部ドアスイッチのリコール 関連費用で110億円
東海理化、トヨタ・プリウス向け後部ドアスイッチのリコール 関連費用で110億円
日刊自動車新聞
スバルが新型「最上級SUV」発表! オシャブルー映える「新ガイザー」! 約900万円のタフ仕様「アウトバック」伊に登場
スバルが新型「最上級SUV」発表! オシャブルー映える「新ガイザー」! 約900万円のタフ仕様「アウトバック」伊に登場
くるまのニュース
「カワサキコーヒーブレイクミーティング」 アップデートされたファン参加型イベントを聖地オートポリスで開催
「カワサキコーヒーブレイクミーティング」 アップデートされたファン参加型イベントを聖地オートポリスで開催
バイクのニュース
フェラーリ移籍控えるハミルトン、今は勝利目指して全力「そのうちウルフ代表と話す必要がある」
フェラーリ移籍控えるハミルトン、今は勝利目指して全力「そのうちウルフ代表と話す必要がある」
motorsport.com 日本版
日産『キャシュカイ』改良新型、表情を大胆チェンジ…欧州発表
日産『キャシュカイ』改良新型、表情を大胆チェンジ…欧州発表
レスポンス
特別な文字「J」を与えられしたった10台のスペシャルモデル! ついにファイナルを迎えるランボルギーニ・ウラカン「STJ」が登場
特別な文字「J」を与えられしたった10台のスペシャルモデル! ついにファイナルを迎えるランボルギーニ・ウラカン「STJ」が登場
WEB CARTOP
札幌市、2024年度のEV補助金を一律10万円へ 軽EVは5万円 より多くの購入者に支給
札幌市、2024年度のEV補助金を一律10万円へ 軽EVは5万円 より多くの購入者に支給
日刊自動車新聞
発表後わずか1週間でモデル名変更 アルファロメオの新型SUVの名前は「ミラノ」から「ジュニア」へ 一体何があったのか?
発表後わずか1週間でモデル名変更 アルファロメオの新型SUVの名前は「ミラノ」から「ジュニア」へ 一体何があったのか?
AutoBild Japan
【20世紀名車ギャラリー】世界中で高く評価されるJ’sスポーツ・レジェンド、1967年式トヨタ2000GTの肖像
【20世紀名車ギャラリー】世界中で高く評価されるJ’sスポーツ・レジェンド、1967年式トヨタ2000GTの肖像
カー・アンド・ドライバー
日本で登場したら人気が出そう…オペルのコンパクトSUV 新型「フロンテラ」初公開! EVのほか48Vハイブリッドを用意
日本で登場したら人気が出そう…オペルのコンパクトSUV 新型「フロンテラ」初公開! EVのほか48Vハイブリッドを用意
VAGUE
外国人のタクシー&バス運転士が増える可能性大! 海外じゃ当たり前の光景が日本でも広がるか
外国人のタクシー&バス運転士が増える可能性大! 海外じゃ当たり前の光景が日本でも広がるか
WEB CARTOP
マツダ、広島本社で5年ぶりの感謝祭を6月に開催! イベントはどんな内容になる?
マツダ、広島本社で5年ぶりの感謝祭を6月に開催! イベントはどんな内容になる?
くるくら
トヨタ新型「ランクル“ミニ”」登場!? カクカクボディ×マットブラックが超カッコイイ! SUV仕様の新型「ハイラックス“ランガ”」に熱望の声も! 尼で実車展示
トヨタ新型「ランクル“ミニ”」登場!? カクカクボディ×マットブラックが超カッコイイ! SUV仕様の新型「ハイラックス“ランガ”」に熱望の声も! 尼で実車展示
くるまのニュース
ベスパの特別仕様車「140th」 4日間限定販売の140周年記念モデル発表
ベスパの特別仕様車「140th」 4日間限定販売の140周年記念モデル発表
バイクのニュース
リカルド、中国GPで使用する新シャシーは「安心感をもたらす」シート喪失のプレッシャーは否定
リカルド、中国GPで使用する新シャシーは「安心感をもたらす」シート喪失のプレッシャーは否定
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

12件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

849.01110.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

640.01480.0万円

中古車を検索
4Cの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

849.01110.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

640.01480.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村