「そうでない」アルファを知ってる?
text:Takuo Yoshida(吉田拓生)
【画像】「つぶつぶ」のヘッドライト、惜しむ声も デビュー当初の4Cと比べる【詳細】 全42枚
photo:Sho Tamura(田村 翔)
アルファ・ロメオと聞くと4ドアセダンや2ドアのハッチバックといった実用性に優れたスポーティモデルを思い浮かべる人がほとんどだと思う。
だがそのラインナップ中に時おり「そうでない」モデルが混じっていることをご存じだろうか?
古くはV8搭載のモントリオールやザガートとタッグを組んだジュニアZとSZ、21世紀に入ってからは8Cコンペティツィオーネが有名だ。
最新のモデルとしては、この春にオーダーが締め切られた4Cがその代表である。
4Cの最大のトピックは、カーボンファイバー製のシャシーを採用していることだろう。カーボンモノコックは、かつてはマクラーレンF1やブガッティ、フェラーリのスペチアーレなど、車両価格が億を超えるハイパースポーツの専売特許だった。
だがアルファ・ロメオは、4気筒エンジンを搭載した車両価格1000万円前後のライトウエイトモデルに対しカーボンシャシー導入を成功させたのだ。
「そうでない」代表ともいえる4Cだが、かつてのアルファ・ロメオがイタリアを代表するレーシング、スポーツカーメイクスだった史実と照らし合わせれば「カーボンモノコックで当然」という見方もできるはず。
一連の「そうでない」アルファはメイクスの原初の精神を伝え続ける貴重なモデルでもあるのだ。
4Cのライバルはエリーゼではない?
アルファ・ロメオのミドシップのロードモデルとしては2作目(初代は1967年のティーポ33ストラダーレ)にあたる4C。2013年のジュネーブショーでこのクルマがデビューしたとき、そのライバルは誰の眼にも明らかだった。
ロータス・エリーゼである。
だが4Cの構成をチェックしていくと、エリーゼと似ているのは4気筒横置きのミドシップ2シーターという基本構成だけで、核となる部分は時代に即した差別化が図られていることがわかる。
アルミ接着シャシーのエリーゼに対し4Cはカーボンを採用しているし、エンジンはエリーゼが頑なに採用しないターボ過給となる。
またトランスミッションはパドルシフトによる6速デュアルクラッチのアルファTCTで2ペダルとなっている。
ちなみに4Cの車重はデビュー当初はエリーゼ(900kg前後)を意識して900kg以下と公言していたが、実際は1100kgほどもある。
つまり4C誕生のヒントがエリーゼにあることは明らかだが、その実像はエリーゼの上のクラスを狙った孤高の1台なのだと思う。
4Cのステアリングを握ってみれば、この小粒で流麗なスポーツカーの何物とも似ない立ち位置がすぐにはっきりすることになる。
理性+破壊=エンターテイメント
シャシーをカーボンで作る意味は剛性と軽さの両立にある。
実際にアルファ・ロメオ4Cを走らせてみると、ライトウエイトスポーツ的な軽快感よりもカーボン筐体特有のカンッカンッと打てば響くような硬さが前面に感じられる。ハンドリングも中立付近から敏感で、正確無比な匂いがプンプンとする。
もしドライバーの背中にV10やV12がタテ方向に載っていれば、これはもうハイパースポーツカーなのだ! と思わずにはいられない。
だが高速道路に合流し、スロットルを踏み込んでみると、4Cで最もコストが掛かっているであろうシャシーを包み込むほどの個性がしゃしゃり出てくる。
1.75Lというアルファ伝統の排気量を与えられたターボ・エンジンである。昨今のターボはリッター200ps近くてもターボラグがまろやかに感じられたりするものだが、4Cのそれは違う。
まるでフェラーリF40のように、4000rpmの手前でリアタイヤのグリップを破壊せんばかりのターボキックが襲ってくるのだ。
どこまでも正確無比たらんとするカーボンシャシーの理性を、気まぐれな乱暴者的ターボ・エンジンが破壊しに掛かる矛盾、もしくはマトリモニオ(結婚)。
これこそステアリングを握る手が大いにジワる4Cの危うい正体。イタリアン・ミドシップ特有のエンターテイメントの発露なのである。
4Cは将来の名車「クラシック」に?
今どきのスタビリティコントロールは備えているが、それでもウェット路面やヘタクソドライバーとは相性が悪そうなアルファ・ロメオ4C。
この飛び切り辛口のライトウエイトスポーツカーの生産終了は残念なことだが、当のアルファ・ロメオはホッとしているのかもしれない。
この手のモデルはブランドのプロパガンダにはなるが、商売としてはまるで美味しくないシロモノ(作れば作るほど赤字?)と相場が決まっているからだ。
もしあなたが生粋のクルマ趣味人であるならば、今というタイミングを逃してはならないだろう。
アルファ・ロメオの歴史のみならず、昨今の自動車界全体の流れを鑑みた場合にも、4Cは将来の名車、「クラシック」として扱われる公算が大きいからである。
アルファ・ロメオ4Cというクルマは少しだけ敷居が下がってきたカーボンモノコック・シャシーと、厳しくなる一方の排ガス規制で牙を抜かれる直前のガソリン・エンジンの一瞬の交錯によって産み落とされた奇跡の1台。
だからこそ4Cに続編はないのだ。
新型アルピーヌ的な調和は捨てがたいが、数に限りのある不世出の個性と比べることはできまい。
ヘタクソを自認する人でもチャンスがあればマストバイ。ウデは後からいくらでも付いてくる(?)。たぶん。
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