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中古車の販売業は「警察」の管轄! なぜ新車のように国交省や経産省じゃない?

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中古車の販売業は「警察」の管轄! なぜ新車のように国交省や経産省じゃない?

 この記事をまとめると

■新車販売に関する管轄は国土交通省と経済産業省がメインだ

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■中古車の取引には「古物商許可証」が必要で管轄が警察署となっている

■クルマは高額な商品なので治安維持の観点から警察が管理する必要性が高い

 中古車屋に必須の「古物商許可証」とは

 通常、新車販売の管轄は国土交通省と経済産業省という国の省庁である。一方、中古車販売においては、その管轄は国土交通省や経済産業省といった国の省庁ではなく警察署である。

 一般的にリサイクルショップやネットオークションなど古物(中古品)の売買や交換、レンタルなどを行う際には「古物商許可証」の取得が不可欠である。じつは中古車も例外ではなく、この許可証が必要となる。その管轄は警察署なのだ。

 ではなぜ、中古車販売業に「古物商許可証」が必要なのだろうか。その理由を掘り下げることで、中古車市場の信頼性や社会の安全を守る仕組みが見えてくる。

 <犯罪対策としての古物営業法の成り立ち>

 その古物商許可が警察の管轄である理由を理解するには、古物営業法が制定された背景を知る必要がある。現在の古物営業法は1949年(昭和24年)に制定されたが、その前身である古物商取締法は1895年(明治28年)まで遡る。この法律の第一条に、古物営業法の目的は「盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため」とある。つまり、古物営業を規制する最大の理由は、犯罪の防止と被害回復にあるわけだ。

 明治時代から現代に至るまで、中古品を扱う市場には常に盗品が混入する危険性があった。とくに自動車のような高額商品の場合、盗難車が中古車市場に流れることで、窃盗犯に大きな利益をもたらし、さらなる犯罪を誘発するおそれがある。古物営業法は、こうした盗品の流通を阻止し、万が一盗品が売買された場合でも、迅速に発見・回復できる仕組みを構築することを目的としている。

 この目的達成のため、古物商には厳格な本人確認義務が課せられている。古物を買い受ける際は、相手方の住所、氏名、職業、年齢を必ず確認・記録しなければならず、これは古物商同士の取引でも例外ではない。さらに、取引記録の保存義務や、警察からの照会があった場合の報告義務なども定められており、これらの規制は明らかに犯罪捜査の協力を前提としたものである。警察が古物営業を管轄するのは、こうした犯罪対策の実効性を確保するためなのだ。

 中古車屋になるための審査は厳しい

 <自動車という特殊な商品の管理>

 中古車を扱う古物商許可において、警察はほかの品目よりも厳格な審査を行う傾向がある。これは自動車という商品の特殊性に起因している。まず、自動車は「古物」に指定された品目のなかでもとくに高額な商品であり、盗難車が市場に流通した場合の経済的損失は甚大だ。さらに、自動車には車体番号という固有の識別番号があり、これは盗難車の発見や追跡において重要な手がかりとなる。

 また、古物商許可申請において、自動車を扱う場合、ほかの品目では求められない追加の確認がある。たとえば、車両の保管場所に関する資料の提出や、盗難車を見極める知識があるかどうかの質問などである。申請者が中古自動車業界での勤務経験を有しているか、最低限の知識として車体番号の確認方法を知っているかなど、実務的な能力についても確認される。これは単なる事業許可ではなく、盗品流通を防止する重要な役割を担う存在としての適格性を確認するためである。

 自動車の盗難は組織的犯罪の色彩が強く、盗難車の転売ルートを断つことは治安維持の観点から極めて重要だ。中古車販売業者は、意図せずとも盗難車を扱ってしまう可能性があり、その際に適切な対応ができるかどうかが社会全体の安全に直結する。警察が古物商許可を管轄し、とくに自動車を扱う業者について厳格な審査を行うのは、こうした社会的責任を担うことが期待されている。

 <現代における管轄の合理性>

 他方、国土交通省は自動車の安全性や環境性能、交通インフラの整備などを主管しており、その業務は古物営業法がめざす犯罪防止とは性質が異なる。運輸支局で行われる自動車登録は、車両の所有関係を明確にし、税金の徴収や交通政策の基礎データを得ることが主目的である。

 現在でも古物営業法は警察庁生活安全局生活安全企画課が所管しており、全国の警察署が窓口となって許可業務を行っている。申請者は主たる営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課防犯係に申請書を提出し、通常は30~40日程度の審査を経て許可証が交付される。この期間中に、申請者の過去の犯歴や事業計画の妥当性、管理体制の適切性などが詳細に調査される。

 また、古物商には許可取得後も継続的な義務が課せられている。営業内容の変更や営業所の移転などがあれば速やかに届け出なければならず、法令違反があれば営業停止や許可取消などの行政処分を受ける可能性もある。これらの監督業務も警察が担当しており、犯罪防止という観点から一貫した管理体制が構築されている。

 中古車販売業における古物商許可が警察管轄である理由は、単なる歴史的経緯ではなく、現代においても十分な合理性を持った制度設計なのである。

文:WEB CARTOP 琴條孝詩

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みんなのコメント

7件
  • yukizor7
    昨今の盗難車が海外に流れてるのに何も対応しない警察じゃ意味ないじゃん
  • KO
    この記事を書いた方は、行政の「管轄」「所管」ということについての理解が全くないようです。
    中古車の販売の所管は、新車と同じく経済産業省です。また、自動車の登録という点で、国土交通省も関係してきます。これは新車と変わりません。
    中販連という業界団体がありますが、経済産業省、国土交通省との関係が深い団体です。
    ただし、中古車には古物営業法の適用があるというのは、記事にある通り。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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