C 200アバンギャルド どんなクルマ?
メルセデス車ラインナップでCクラスは中堅モデルとなるが、FRメルセデスではエントリーに位置する。
【画像】新型Cクラス じっくり見る【デザイン/内装】 全80枚
コンパクトな車体寸法にメルセデス車の神髄を凝縮した、と言っては少々大袈裟だが、EクラスやSクラスにも通ずる走りの質感は同車の重要なセールスポイントである。
Cクラスと命名されてから5代目となる新型の現在のバリエーションは、セダンとワゴンの2系統。
それぞれ1.5Lターボを搭載するC 200アバンギャルドと、2Lディーゼル搭載のC 220 dアバンギャルドを用意。両パワートレインともに、ISG式ハイブリッドシステムを採用する。分類はマイルドハイブリッドだが、レイアウトはホンダのIMAに近く、20psのモーター(ISG)や専用のリチウムイオン電池の採用などマイルド型としては電動化を深めたタイプである。
試乗車はセダンの「C 200アバンギャルド」。
導入モデルでは最廉価(車両価格:654万円)ではあるが、ナビやインフォテイメント、電子制御サス等々のプレミアム系フル装備。さらにOPのAMGラインや新型車の売り物機能の1つでもある電子制御4WSのリアアクスルステアリングを装着。
72万円強のOPを加えて726万4000円。
スペックや装備内容からすれば納得はできるが、電動電脳化による価格上昇で価格帯が1ランク上がった印象は拭えない。
「BSG」から「ISG」へ
従来までのメルセデス車のマイルドハイブリッドはスターター/ジェネレーター兼用のISGを、ベルトを介してエンジンと連結させていた(BSG)。
新型のISGシステムではエンジン/ISG/ATの直列レイアウトとし、駆動充電の効率向上を図っている。
実質的にエンジン出力軸とISGが一体化しているので、アイドリングストップからの発進のタイムラグは皆無。
というか、走行中でもちょっとした緩減速などで頻繁にエンジン停止を行い、軽く踏み増せばすぐにエンジン始動。
エンジン停止コースティングを狙った制御なのだろうが、とにかく滑らか。タコメーターで確認して頻繁な走行中エンジン停止頻度に驚いたくらい。
滑らかなのは変速も同じ。
速度にもよるが巡航回転数はおよそ1500rpm。最近のクルマでは標準的な制御だ。
巡航から緩加速、あるいは登坂で緩やかに踏み込むとすぐにダウンシフト。500rpmくらいの回転変化だが、そういった変速も頻繁。これもまたタコメーターで確認が必要なほど滑らか。
9速ATの威力かマイルドハイブリッドの制御の巧みさかはともかくとして、ステップ変速にも関わらずドライブフィールは連続無段階制御なのだ。
踏み込んで知る 走りの見どころとは
全開を与えれば俊足。猛々しさなく加速するのは当然。パワフルかつトルクフル。
速さも余力も兼ね備えているが、感心させられるのは「力の量」ではなく使い方。ドライバーに寄り添うような良質なドライバビリティが印象的だった。
コンフォートモードを選択しても乗り心地は硬め。OPのAMGラインは専用のスポーツサスを採用し、装着タイヤはさらに低扁平化を進めた18インチ仕様になる。
また、標準では前後ともに225/50 R17を履くが、AMGラインは前225/45 R18、後245/40 R18の前後異サイズ設定。
さらに、AMGライン選択時のみ装着できるOPのリア・アクスルステアを装着。
スポーツ系メルセデスのフロントマスクに、高性能FR車をさり気なく主張するタイヤ。4WSも加われば操安性に振ったサスチューンも納得。ある意味、見た目どおりである。
後輪操舵 その出来は?
ハンドリングの傾向は、何処でも弱アンダーステアのメルセデス流をさらに強化。
リア・アクスルステアの効果もあってか、速度やコーナー半径による操縦感覚の振れ幅がさらに少なくなった。
後輪操舵は60km/hを境に高速側では同位相、低速側では逆位相で制御され、どちらも最大操舵量は2.5°。試乗印象を正直に言えば、4WSシステムの介入は実感できなかった。
インジケーターには後輪操舵量が表示されているが、操縦感覚も挙動も極めて自然。また、高速コーナリングでは0°のまま。多分、横Gが小さいせいだろうが、良識の範囲では試せなかった。
“よく出来た電子制御システムほど介入が分からない”のセオリーどおり。
わざわざインジケーターを付けているのはそのせいかもしれない。
フルモデルチェンジ車は「買い」か?
4.8mに迫る全長で、ホイールベースは2.8m超。見た目や取回し感覚ではコンパクトに感じられるが、意外とボディサイズは大きい。
にも拘わらず後席居住性は寛げる最小限。深さが浅いのでトランク容量も余裕はあまりない。
実用性を求めるなら、A/Bクラスを選んだほうが効率的だ。あるいは悠々と寛げるセダンを求めるならEクラス以上を、というところである。
装備関連は技術志向エンタメも含めて多彩な表示を行うディスプレイ、指紋・声による生体認証を備えたドラポジメモリー。レーダーセーフティパッケージは車線認識に360°カメラを追加するなど、各種検知精度の向上と機能強化がなされた。従来型から着実にアップデートされている。
気になるのはEクラスとの価格差だが、AMGライン等々のOPを装備した試乗車の価格でもエントリーのE 200スポーツとは70万円近い差がある。
同じようにCLAクラスと比較すれば、Cクラスは100万円以上高い。メルセデス車はラインナップも価格設定も隙がない。順当な値付けである。
Cクラスのフルモデルチェンジも劇的な変化を遂げた訳でもなく、時代・社会の要求あるいはコンセプトに忠実に進化しているだけ。これも隙のなさと言えよう。
それが信頼感であり、安心感でもある。FRメルセデス車のよさを知るユーザーの期待を裏切らないモデルなのである。
C 200アバンギャルド スペック
メルセデス・ベンツC 200アバンギャルド MP:202201
試乗車は、2021年6月29日の日本発表時の仕様(MP:202201)。
その後、8月6日に仕様およびメーカー希望小売価格の変更が行われた。当面は、変更前(MP:202201/654万円)、変更後の車両(MP:202202/651万円)が混在するという。
価格:654万円(OP込:726万4000円)
全長×全幅×全高:4785×1820×1435mm
車両重量:1700kg
乗車定員:5名
エンジン形式:1496cc直4ターボ
トランスミッション:9速オートマティック
最高出力(エンジン):204ps/5800-6100rpm
最大トルク(エンジン):30.6kg-m/1800-4000rpm
最高出力(モーター):20ps(15kW)/2000rpm
最大トルク(モーター):20.4kg-m/100rpm
燃料:ガソリン
燃費(WLTCモード):14.5km/L
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