2018年度(2018年4月~2019年3月)に、最も多く売れたSUVはトヨタC-HRであった。2018年度の登録台数は7万2009台に達する、文句なしのSUVナンバー1だ。
2位は5万9974台で、ホンダヴェゼル。3位は4万6487台でエクストレイル、4位は4万2248台でハリアー、5位は3万9958台でCX-5だった。
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C-HRの強さにも驚くが2位のヴェゼルもしぶとく喰らいついていて、まさにコンパクトSUV2強時代にある、といっていい状況。
そもそもこの2台、数年前から熾烈な争いを続けているのだった。C-HRが登場する前となるが、ヴェゼルは2013年12月に発売され、2014~2016年、3年連続SUV販売ナンバー1だった。
C-HRは2016年12月にデビューするやいなや、いきなり2017年4月にSUVとして初めて車名別月販台数ナンバー1を獲得。その勢いはとどまることを知らず、2017年、2018年の年間販売台数でもSUVナンバー1を獲得している。
さて、このC-HR、ヴェゼルの2強対決。本当の実力はどうなのだろうか? 実際に買おうとしている人は、この2台のどちらにするか、大いに悩んでいるに違いない。
そこで、細かく各項目ごとにわけて、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が徹底比較。最終結論を下す!
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部
■C‐HRとヴェゼル、どちらが買いか、頂上決戦!
C-HRのボディサイズは全長4360×全幅1795×全高1550mm。ハイブリッドは98㎰/14.5kgmの1.8L、直4+72㎰/16.6kgmのモーター。ガソリンは116㎰/18.9kgmの1.2L、直4ターボ。価格は229万~297万92200円
ヴェゼルのボディサイズは全長4330×全幅1770×1605mm。ハイブリッドは132㎰/15.9kgmの1.5L、直4+29.5㎰/16.3kgmのモーターを組み合わせる。ガソリン車は131㎰/15.8kgmの1.5L、直4。さらに172㎰/22.4kgmの1.5L直4ターボをラインアップ。価格は207万5000~290万3040円
両車ともに全長が4400mm以下だから、全幅が少しワイドな3ナンバー車でも小回り性能が優れている。
売れ筋の価格帯も220万~280万円に収まるため、SUVとしては購入しやすい。子育てを終えて、ヴォクシーやステップワゴンのようなミニバンから乗り替えるユーザーの間でも人気が高く、好調な売れ行きに結び付いた。
はたして、販売1位、2位のC-HRとヴェゼル、細部にわたって徹底比較。その勝負はいかに?
■走行安定性比較
ボディサイズはC-HRがヴェゼルに対し、全長が30mm長く、全幅が25mmワイド、全高が55mm低いが、走行安定性ではどちらに軍配があがるのか?
大半のSUVは、全高が1500mmを上まわり、前後席の居住空間に余裕がある。ただしミニバンほど背が高くないため、極端な高重心にはならず、走行安定性と居住性を両立させやすい。この走りと快適性のバランスがSUVの機能的な魅力だ。
特にC-HRとヴェゼルは、SUVのなかでも安定性が優れた部類に入る。ヴェゼルの全高は1600mm前後だが、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)を2610mmと長めに設定して、ボディ剛性も相応に高めたから車両の動きが安定している。
カーブに入る手前でハンドルを内側に切り込んだ時も、背の高いクルマにありがちなボディが唐突に傾く違和感が生じない。
それでも走行安定性を比べると、C-HRはさらに優れている。操舵に対する車両の動きが正確で、車両を内側に向けやすい。ヴェゼルに比べると軽快感が伴う。
ドライバーの操作と車両の動きの間に生じる時間差も抑えた。従って運転感覚は、SUVというよりもカローラスポーツのようなミドルサイズハッチバックに近い。
全高は2WDが立体駐車場を使いやすい1550mm、4WDでも1565mmに抑えている。ヴェゼルに比べると約50mm低い。
C-HRは現行プリウスから採用が開始された新しいプラットフォームを使ってボディ剛性も高めた。
ホイールベースはさらに30mm長い2640mmだから、C-HRには安定性を確保する上で有利な条件が多い。
●結論:C-HRの勝ち
■動力性能比較
ヴェゼルターボは172㎰/22.4kgmの1.5L、VTECターボ。走りに定評がある
エンジンは両車とも直列4気筒で、2種類ずつを用意している。C-HRは1.2Lのターボと1.8Lのハイブリッド、ヴェゼルは1.5Lのノーマルエンジン/ターボ/ハイブリッドだ。
C-HRの1.2Lターボは、1.8Lのノーマルエンジンに匹敵する動力性能を発揮する。実用回転域の駆動力が高く運転しやすい。
ヴェゼルの1.5Lノーマルエンジンは、吹け上がりが活発でスポーティだ。排気量の割に余裕のある加速を見せるが、C-HRの1.2Lターボほどパワフルではない。
一方、ヴェゼルの1.5Lターボは動力性能が際立って高い。1500回転以下ではターボの過給効果が薄れて駆動力も下がるが、それを超える回転域では、2.4Lのノーマルエンジンに匹敵する性能を発揮する。
ハイブリッドは両車で性格が異なる。C-HRが搭載するのは、プリウスと同じ1.8Lエンジンをベースにしたタイプだ。
エンジン性能は控え目だが、モーターの駆動力に余裕があり、加速が滑らかで静粛性も優れている。駆動方式は2WDのみで、JC08モード燃費は30.2km/Lと良好だ。
ヴェゼルの1.5Lハイブリッドは、エンジン性能に余裕があり、高回転域まで良く回る。トランスミッションは7速DCTで、ダイレクトな運転感覚を味わえる。
プリウスとは逆にモーターの性能はあまり高くないが、運転感覚がスポーティだ。ヴェゼルの1.5LハイブリッドのJC08モード燃費は、2WDが23.4~27.0km/Lになる。
動力性能は一長一短だが、ハイブリッドの燃費数値なども考えると、C-HRが優れている。
●結論:C-HRの勝ち
■C-HRのJC08モード燃費
ハイブリッド:30.2Km/L、1.2Lターボ:2WD、16.4Km/L、4WD:15.4Km/L
■ヴェゼルのJC08モード燃費
ハイブリッド:23.4~27.0Km/L、1.5L:20.2~21.2Km、1.5Lターボ:17.6Km/L(すべて2WDの数値)
■乗り心地比較
C-HRはコンパクトなSUVでは乗り心地が快適だ。40km/h以下で市街地を走ると、少し硬めに感じる場面もあるが、速度が上昇すれば足まわりがしなやかに動く。
ヴェゼルも発売当初に比べると足まわりの印象が柔軟になったが、C-HRには追い付いていない。
●結論:C-HRの勝ち
■視界と取りまわし性比較
C-HRは外観のデザインに特徴を持たせたが、後方視界はかなり悪い。サイドウインドウの下端が後ろに向けて持ち上がり、ボディ後端のピラー(柱)も太いから、リア側のサイドウインドウが狭い。そのために斜め後方がほとんど見えない。
後ろ側の様子を映すバックモニターも用意されるが、カーナビ画面に表示するから、これに頼ると後ろを向かずに後退することになってしまう。車両の左右から急速に接近する自転車などを見落としやすい。
C-HRを試乗した時、駐車場にボディの前側から入って後退しながら出庫してみたが、かなり不安であった。ヴェゼルの後方視界もあまり良くないが、C-HRほど見にくくはない。
最小回転半径はC-HRが5.2mだ。ヴェゼルは16インチタイヤ装着車は5.3m、18インチは5.5mだから、少し大回りになる。
●結論:ヴェセルの勝ち
■居住性&荷室比較
C-HRのリアシートの膝先空間はこぶし2つ入るがC-HRに比べると狭い
センタータンクレイアウトによりリアシートの足元はフラットで広々としており、跳ね上げやダイブダウンができるので使い勝手がいい
前席は、両車ともにシートのサイズを十分に確保して快適だ。その上で比べると、C-HRは腰の付近をしっかりと支えて座り心地が良い。
後席は座り心地よりも居住空間の違いが大きい。身長170cmの大人4名が乗車した場合、C-HRの膝先空間は握りコブシ2つだ。それがヴェゼルならば2つ半が収まる。
ヴェゼルは床と座面の間隔にも余裕を持たせたから、C-HRに比べると、ゆったりと座れる。
またヴェゼルは燃料タンクを前席の下に搭載したから、荷室の床が低い。後席を床面へ落とし込むように畳むと、ボックス状の広い空間になる。
C-HRにはこのような機能が備わらず、しかもリアゲートを寝かせたから荷室の高さも不足した。荷室の機能はヴェゼルの圧勝だ。
客室内寸法については、C-HRが長さ1800mm、幅1455mm、高さ1210mm。ヴェゼルが長さ1930mm、幅1485mm、高さ1265mm。
ヴェゼルはC-HRよりも全高が高いこともあるが、ヴェゼルのほうが広い。さらに荷室の容量もC-HRは318L、ヴェゼルはセンタータンクレイアウトの恩恵もあり、393L(ともに5名乗車時)とヴェゼルがC-HRを圧倒する。室内の居住性や荷室比較ではヴェゼルに軍配が上がる。
●結論:ヴェゼルの勝ち
■質感比較
デザインが斬新で新しさを感じられ、質感も高いC-HRのコクピット。センターコンソールがドライバーに向いていてまるでスポーツカーのようだ
ヴェゼルのハイブリッド仕様の上級グレードとなるHYBRID Zにはジャズブラウンというオレンジがかったブラウン系の内装色が採用されていて上質。 フロントシートは形状を刷新しステッチを変更することで、ホールド性と質感をさらに向上
両車ともにコンパクトSUVでは内装が上質だ。ヴェゼルはベーシックなグレードは比較的シンプルだが、コンビシート&専用インテリアの仕様になると、ステッチ(縫い目)も入って見栄えが良くなる。
インパネにはソフトパッドも使われる。ヴェゼルではグレードに応じて内装の雰囲気が違うため、購入する時は注意したい。
C-HRも細部まで造りが丁寧で、なおかつインパネの形状を立体的に仕上げた。質感は見た人の好みによっても変わるが、一般的にいえばC-HRが上質だろう。
ヴェゼルの登場は2013年だから、2016年のC-HRに比べると、デザインの目新しさでも差を付けられた。
●結論:C-HRの勝ち
■コストパフォーマンス比較
C-HRの1.2Lターボとヴェゼルの1.5Lエンジン搭載車を比べると、価格はヴェセルが割安だ。2WDの価格はC-HRのS-T・LEDパッケージが234万6000円、ヴェゼルXホンダセンシングは216万5000円に収まる。
C-HRはターボの装着によって価格を高めたが、動力性能は前述のように1.8Lのノーマルエンジンと同等だ。C-HRはターボの装着に伴う価格の上乗せが少し大きい。
ハイブリッドはC-HRのS・LEDパッケージが267万円だ。ヴェゼルはハイブリッドXホンダセンシングが253万9000円、ハイブリッドZホンダセンシングが271万円になる。装備内容と価格のバランスを見ると、全般的にヴェゼルが割安だ。
●結論:ヴェゼルの勝ち
■結論
C-HRとヴェゼルは、両車ともに乗用車系のプラットフォームを使うコンパクトなSUVだが、商品の特徴はかなり異なる。
C-HRは個性的な外観からも分かるように、5ドアクーペ風のスペシャルティなSUVだ。後席と荷室は狭いが、内装は上質で前席は快適に仕上げた。
5ドアボディのSUVではあるが、2名以内の乗車を想定して開発されている。劣悪な後方視界は安全性を阻害するから好ましくないが、あえてメーカー目線でいえば、デザインにこだわった証でもあるのだろう。
運転感覚も、C-HRは操舵感や乗り心地の質が高い。ドライバーと助手席に座る同乗者の快適性に重点を置いた。
一方、ヴェゼルはSUVらしい外観のカッコ良さなどに配慮しながら、実用性も重視している。
燃料タンクを前席の下に搭載して荷室の使い勝手を向上させ、後席はミドルサイズSUV並みに広い。価格は割安だ。
C-HRの価値観はスペシャルティクーペ的だが、ヴェゼルはファミリーカー的ともいえるだろう。
したがって、デザインと走りを重視するユーザーが、2名以内の乗車で使うならC-HR。3~4名で乗車した時の居住性や後席を畳んだ時に得られる積載性を重視するならヴェゼルになる。
今回は走行性能、居住性、コストパフォーマンスまで、幅広い観点で比較したが、総合的な結論は、機能を偏りなく高めたヴェゼルの勝ちとしたい。
●結論:ヴェゼルの勝ち
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