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軽自動車のエンジン搭載のミニF1「FL500の歴史を探る Part1」

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軽自動車のエンジン搭載のミニF1「FL500の歴史を探る Part1」

初のレース参戦から半世紀を経て集結。日本が産んだ傑作のフォーミュラカー

「FL500」は、ホンダN360やZ用の空冷4ストローク/2気筒、あるいはスズキ・フロンテ用の空冷/水冷2サイクル3気筒をミッドシップに搭載したミニフォーミュラ。国内コンストラクターの礎となったマシンだ。

F1マシンへの進化を可能とした「マーチ製 F2マシンの高い戦闘力」

 F360/500とかFJ360/FL500、あるいはFL550、FL-Bなど時代に応じてカテゴリーの名称も変化して行ったが、ここでは便宜上、最も慣れ親しんでいたFLで統一して話を進めて行くことにしよう。 1968年の8月に富士スピードウェイで開催された第3回富士ツーリスト・トロフィ・レース大会のサポートレースとして行われたミニカー・トロフィー・レース。ここで初めてFLマシンが出走したことから、これがFLの“事始め”とされ、昨年行われた「RICHARD MILLE SUZUKA Sound of ENGINE 2018(SSOE)」では生誕50周年の記念パーティも催され、関係各位のお歴々が一堂に会した。

 先に触れた1968年のレースで優勝したのはミニ7とよばれるレーシングスポーツカー。N360やフロンテのミニカーに交じってレーシングスポーツのミニ7からミニフォーミュラまでが混走する“何でもアリ”状態のレースだったようだ。 やがて人気が高まって行ったFLは、単独でレースが開催されるようになる。そして70年代に入ると市販マシンも登場。筑波や中山といったサーキットが誕生したことによってFLのレース数も一気に増加。人気が人気を呼ぶ、まさにブームとなったのだ。

 当初はニアルコやエバなど関東勢が活躍したが、70年の9月には大阪に本拠を構えるハヤシカーショップ(ハヤシレーシング)から、初の“量産”マシン「702A」が登場。そして702Aをデザインした鴻池康禎さんが独立して鴻池スピード(KS)を興し、また関東のベルコで修業した神谷誠二郎さんがベルコウエスト(現ウエストレーシングカーズ)を設立、鈴鹿(ハヤシも後に鈴鹿に進出)御三家が誕生した。

 一方、関東でもニアルコを筆頭に市販マシンが続々登場。中でも注目を集めたのは鈴木板金がリリースしたベルコで、FL初のモノコックフレームを採用したモデルとして注目を浴びた。 そして70年代前半はベルコとハヤシの“東西対決”がFLバトルの大きな流れとなった。もちろん、70年に栄えある初代チャンピオンに輝いたオトキチSPL.や、片山義美選手のドライブで一世を風靡したKE-FJ-I~IIIシリーズの活躍は見逃せないのだが、数の上では東西の両雄がリリースする市販マシンが大半を占めていたのは紛れもない事実だった。

【ベルコ96A(Bellco 96A)】

 鈴鹿で行われたSSOEに登場したFL500で最も初期に製作された「ベルコ96A」。横浜に本拠を構える鈴木板金は、トラックの架装メーカーとして営業する一方で、レーシングカーの製作でも知られたコンストラクターだ。 スズキ・バンキン72Aなどレーシングスポーツの製作でも知られている。その鈴木板金がFL用に市販マシンをリリース。FLとしては初のモノコックフレームを持っており、その商品性の高さからヒット作となった1台。

 そのスタイリングはコンベンショナルの一言。また商品性が高いことも大きな特長だった。フロントサスペンションは上下Aアームを使ったアウトボード式のダブルウィッシュボーン。これもコンベンショナルにして商品性が高いポイントの一つとなっていた。

【ハヤシ706(Hayashi 706)】

 ベルコに対抗する形で「ハヤシレーシング」では702Aの発展モデルである706をリリース。702Aと同様に鋼管スペースフレームだったが702Aで培ったノウハウなどもあり、トップクラスのパフォーマンスを見せつけた。 結果、ハヤシレーシングで最多記録となる36台を販売。ホンダ・エンジンからスズキ・エンジンへと主流が移っていったことで両エンジンに対応すると同時にスポーツカーノーズ仕様の706Bもラインナップされていた。

 両サイドに大きなクーリングエアのダクトを備えていた702Aに比べると、こちらもコンベンショナルというかコンサバなデザイン。鋼管スペースフレームにFRPの外皮を持つことで、モノコックフレームのベルコ96Aに比べてエクステリアは幾分“ふっくら”している。後にスポーツカーノーズの706Bも登場。コクピット前方からクーリングエアを取り入れるダクトも用意された。

【アローS31(Arrow S31)&アウグスタMkII(Augusta MkII)】

 FLの初レースが富士で行なわれたこともあり、当初は関東勢が主流だった。中でもパイオニアとなったのが「オトキチSPL」と「ニアルコ」。それぞれ市販モデルとしてブラッシュアップされ、アローS31とアウグスタMkIIに進化していた。 ともに鋼管スペースフレームにFRPのカウルを装着していたが、スリークなアローに対してアウグスタは抑揚の効いたデザインが特徴。ちなみに、後者は由良拓也さんがデザインを手掛けた。

 前後にアウトボード式のダブルウィッシュボーン式サスが組み込まれていて、パッケージングとしては似たような成り立ちだが、カウルワークの“味付け”の違いから、対照的なルックスとなっている。アローは当時、ホンダのRA302に似たカラーリングが注目を集めていたのが思い出される。

【アローS2(Arrow S2)】

 アローS31とは別の進化をした「アローS2」。筑波のようなタイトなコースでは、ミッション付きのスーパーカートの方が速いから、カートのようなFLを、とトライして完成。独立したサスペンションはなく、鋼管スペースフレームにマウントしたサブフレームのしなりをサス代わりに使って路面に追随していた。

 トレッドの狭さが特徴だったアローS2。ボディ(フレーム)から生える、サスペンションアームのように見えるパイプは、実はパイプで組んだサブフレーム。フレームのしなりで路面に追随するのは、サスペンション自体がほとんどストロークしない近年のF1のようなもので、メカニズム的なブレイクスルーだったのかもしれない。

【KE-FJ-II】

 後にF1マシンを製作したKE(コジマ・エンジニアリング)が手掛けたFLが「KE-FJ-II」。アルミモノコックに前後ダブルウィッシュボーン・タイプのサスペンションを組み付けていたパッケージングはライバルと似ていたが、前後のサスペンションがロッキングアームを使ったインボード式となっていたのが大きな特徴だ。マツダのワークスドライバーだった片山義美選手が活躍し、ライバルを一蹴する速さを見せつけた。

 SSOEに参加していたNo.17号車は、71年式のKE-FJ-IIとあったが、エンジンの両肩まで伸びたカウルは発展型のFJ-IIB用。オリジナルではリアもロッキングアーム式のインボードだったが、この個体はアウトボード式にコンバートされていた。その辺りの状況については取材が行きとどかなかった。ちなみに、FJ-Iではスプリングにトーションバーを使用したが、FJ-IIではコンベンショナルなコイルスプリングに変更されている。

【アドバンスド・デザイン AD305(Advanced Design AD-305)】

 FLが国内レース界で果たしてきた“役割”は実に多岐に及んでいて、レーシングドライバーの輩出・育成だけでなく、コンストラクターを育んできたのもその一つで、幾つものマシンがリリースされてきた。「AD305」もそんな1台だ。鋼管スペースフレームにFRP製の外皮をまとい、前後のサスペンションはアウトボード式のダブルウィッシュボーンを採用。コンベンショナルを絵に描いたようなパッケージだが、スムースな局面で構成されたカウルワークのデザインは秀逸である。 F1GPにも“キットカー”が活躍できる旧き良き時代があったが、当時のFLもそうだった。現オーナーの苦労の甲斐あってかコンディションは上々。改めて取材したい1台だ。

【ウエスト759(West 759)】

 ベルコで修業した神谷誠二郎さんが、鈴鹿で興したベルコ・ウエストの処女作が「ウエスト759」。翌76年にはスポーツカーノーズにコンバートした769が登場している。759のネーミングは製造年(75年)と所属カテゴリー(FLは当時グループ9=リブレの範疇とされていた)を示す。 なお日本人として初のF1レギュラードライバーとなった中嶋悟さんがプロへの一歩を踏み出した、初めてドライブしたフォーミュラとしても知られる。

 当時のF1GPで活躍していたブラバムBT42などにも似た三角断面のモノコック。フロントのウイングを取り去ってシャープなノーズを装着し、ラジエターはエンジンの両サイドにマウント。フロントサスはロッキングアームを使ったインボード式のダブルウィッシュボーン・タイプを採用するなど、メカニズム的にも随分斬新だった。

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