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【F1オーストリアGP無線レビュー】メルセデスを追撃中のフェルスタッペンが突然の失速「ダメだ、アンチストールに入ったままだ」

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【F1オーストリアGP無線レビュー】メルセデスを追撃中のフェルスタッペンが突然の失速「ダメだ、アンチストールに入ったままだ」

 2020年F1第1戦オーストリアGPでは、7台のマシンがリタイアするサバイバルレースとなった。盤石と思われたメルセデスはトラブルによりペースダウン、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンは電気系トラブルでリタイアとなってしまった。そんななかシャルル・ルクレール(フェラーリ)とランド・ノリス(マクラーレン)がミスのない走りで表彰台を獲得。そんな開幕戦の模様を無線とともに振り返る。

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 約7カ月ぶりのレースということもあってか、2020年の開幕戦オーストリアGPはスタート直後から熱い攻防と波乱が続いた。

 そんな中、ポールポジションからスタートし、トップを走行していたバルテリ・ボッタスに対し、メルセデスは早くも3周目から「マシンを労るように」という指示を出す。これは縁石に乗ってマシンにダメージを与えないことと、路面温度50℃以上の高温の中で始まったレースでタイヤとエンジンのオーバーヒートを避ける狙いがあった。

 それでも、予選でレッドブル・ホンダにコンマ5秒以上の差をつけたボッタスのペースはレースでも翳りを見せることなく快調で、8周目には3秒以上のギャップをフェルスタッペンとの間に築いた。なんとか、それ以上引き離されたくないレッドブル・ホンダ陣営はフェルスタッペンに指示を出す。

レッドブル:ボッタスに対して、1コーナーで少しだけタイムを失っている。

 しかし、その差は縮まらない。11周目に入ろうとするフェルスタッペンにレッドブルは再び無線で指示を出す。

レッドブル:エンジン9、ポジション8。

 すると、1コーナーでフェルスタッペンが失速。ここから、レッドブルとフェルスタッペンとの間、緊迫したやりとりが。

フェルスタッペン:アンチストールに入ったようだ。

レッドブル:スタンバイ。

フェルスタッペン:どうしたらいい??

レッドブル:エンジン9、ポジション2。

フェルスタッペン:ダメだ、変えられない。

レッドブル:OK、マックス。スタンバイ。いま調べている。

レッドブル:フェイル1、フェイル1。

フェルスタッペン:ダメだ、アンチストールに入ったままだ。

レッドブル:スタンバイ。

 フェイル(fail)とは、電気系および電子制御に障害が発生したときに元のシステムに復旧させるときに行う処理で、このときフェルスタッペンのマシンはなんらかの障害によってアンチストールに入ったままとなり、シフトチェンジができない状態にあったと思われる。無常の無線がフェルスタッペンに元に入る。

フェルスタッペン:何か言ってくれ。

レッドブル:BOX、プリーズ、フェイル04。

 フェルスタッペンのリタイア後も、トラブルは続く。17周目にはダニエル・リカルド(ルノー)がパワーユニット(PU/エンジン)のトラブルでリタイア。その直後、ランス・ストロール(レーシングポイント)にもトラブルが襲い掛かる。

■レーシングポイントとメルセデスにも問題発生

レーシングポイント:エンジンに問題が出た。われわれはいまその修復を行なっている。君はここまでいいレースをしてきた。これからはわれわれがベストを尽くす。

ストロール:わかった。でも、まだパワーが戻らないよ……

 懸命の修復作業も実らず、19周目にピットインしたストロールはそのままリタイアとなった。これを見て、メルセデスが動く。メルセデスはストロールのPUに、縁石に乗ったことで生じた振動によるセンサートラブルが発生したと判断し、縁石にできるだけ乗らないよう指示を出す。しかし、26周目にセーフティカーが導入され、それまであった6秒以上の差が一気になくなって31周目にレースが再開されると、優勝の望みが出てきたハミルトンは同じタイヤを履くチームメイトをコース上で抜くために、アグレッシブになる。

ハミルトン:エンジンを好きなように使わせてほしい。

メルセデス:ダメだ。トラブルが深刻になっている。われわれはこれから2台ともペースダウンさせる。

ハミルトン:いや、エンジン・ライフはまだ全然残っているはずじゃないか!!

メルセデス:違う、ギヤボックスのセンサーに問題が起きている。縁石に乗らないでほしい。

ハミルトン:どの縁石だ?

メルセデス:赤白の縁石も含めて、全部だ。

ハミルトン:彼(ボッタス)のほうが僕より使っているよ。

 40周目を過ぎても、一向にペースを落とさないハミルトンに対して、メルセデスは最終手段をとる。それはそれぞれのレースエンジニアではなく、チーフレースストラテジストのジェームス・バレス自らによるドライバーへの直接介入だった。

バレス:ルイス、ジェームスだ、聞いてほしい。ギヤボックスが深刻な状況になっている。お願いだから、縁石に乗せないでほしい。これは2台とも同じだ。

 ようやくペースダウンしたハミルトンは、今度は2番手の座を賭けてアレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)との戦うことになる。51周目に入ったセーフティカーのタイミングでステイアウトしたメルセデスに対して、アルボンはソフトタイヤに交換していたからだ。

 55周目にレースが再開されると、アルボンは前を走るセルジオ・ペレス(レーシングポイント)を3コーナーでオーバーテイク。その直後、再スタート直前に起きたキミ・ライコネン(アルファロメオ)の事故によって、再びセーフティカーが導入される。オーバーテイクのタイミングを巡ってレッドブルとレーシングポイントはセーフティカーラン中にそれぞれのドライバーを交信をかわす。

■ハミルトンとの接触で表彰台のチャンスを失ってしまったアルボン

アルボン:セーフティカーが出る前にセルジオをオーバーテイクできていた? たぶん、彼を抜いていたと思うけど。

レッドブル:いま映像をチェックしている。

アルボン:彼の前に出てから、ビー(マーシャリングシステムのブザー音)と聞こえ、バックオフしたんだけど。なのに、セルジオはそのまま僕を抜いていった……

レッドブル:確認できた。ポジションを入れ替えていい。セーフティカーラン中にペレスをオーバーテイクしていい

ペレス:いまアルボンが僕を抜いていったよ。

レーシングポイント:了解。いま確認している。

ペレス:彼を抜き返してもいい?

レーシングポイント:ネガティブ、ネガティブ(否定)。彼を抜いちゃダメだ。

 その後、61周目にレースが再開されると、アルボンは一気にハミルトンに襲いかかる。しかし、2台はコーナーで接触。ハミルトンに弾き飛ばされたアルボンは最後尾へ。

アルボン:あいつ(ハミルトン)は、なんて負けず嫌いなんだ!!

レッドブル:そうだな。OK、レースに戻って、戦いを続けよう。

アルボン:わかった。みんな、ゴメン。

 この接触に対して、スチュワード(審議委員)はハミルトンへの5秒タイムペナルティを科す。これでハミルトンの2.7秒後方でフィニッシュしたルクレールが2位に繰り上がった。

ルクレール:レースは終わった? だって、レッドライトが点灯していなかったよ。

フェラーリ:レースは終了した。確認できている。2位だ。

ルクレール:オー・マイ・ゴッド。なんていうレースだ。このレースは僕のレース人生でも最高のパフォーマンスだったよ。だって、本当に厳しいレースだったから。特に再スタート直後のストレートで他のクルマを押さえ込むのはね。だから、僕たちが目指すべき道はまだ長い。ただ、不可能じゃない。だから、モチベーションを保って、みんなでやろうじゃないか。

 その背後にいた4番手のノリスとマクラーレンの間でも最終ラップから熱い無線が交わされていた。

マクラーレン:ファイナルラップだ。ハミルトンとの差は6.5秒。彼は5秒タイムペナルティが科せられている。この周、最大限プッシュしろ。最終コーナーまでオーバーテイクボタンを使っていい
 
 ファイナルラップで1分7秒475のファステストラップをマークしたノリスにマクラーレンから無線が届く。

マクラーレン:ランド、ハミルトンとのギャップは4.8秒。だから、たぶん(君は初の)表彰台を獲得した思う。

ノリス:イェーイ、みんな(絶叫)。まだあまり実感が湧いてこないんだけど……。でも、息ができない。

マクラーレン:涙で?

ノリス:泣いてなんてないよ。

マクラーレン:泣いていいよ。

ノリス:うん、ホセーーーーッ(ノリスのレースエンジニアでスペイン人)

マクラーレン:やったな。

ノリス:君のおかげだよ。バモス!(スペイン語/日本語で行こう、行けの意)

マクラーレン:よくやった。最高の仕事をしたぞ。

 4カ月遅れの開幕戦には、4カ月分以上の感動が詰まっていた。

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