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Sクラス譲りのV8エンジン&リアサス メルセデス・ベンツ420SL ヨークシャーを巡る(1)

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Sクラス譲りのV8エンジン&リアサス メルセデス・ベンツ420SL ヨークシャーを巡る(1)

ヨークシャー地方で提唱される新ドライブルート

時間を争うように人々が活動するこの世界で、理想のロードトリップを謳歌するには、人里離れた場所へ向かう必要がある。殆どのドライバーにとって、それは年に数回叶えられるかどうか、といった類のものだろう。

【画像】Sクラス譲りのV8&リアサス メルセデス・ベンツ420SL 同時代のグランドツアラーたち 全127枚

さほど広くないグレートブリテン島でも、北部のスコットランド・ハイランド地方まで足を伸ばすのは、簡単なことではない。欧州大陸でも、アルプス山脈へ頻繁に近づけるのは、限られた地域へ住む人だけだ。

しかし、スコットランドにノースコースト500という素晴らしいドライブルートを提唱したトム・キャンベル氏は、近場にも魅力的な道があることへ気が付いた。ロンドンから北へ約350km離れたヨークシャー地方に、新たな喜びを提案をしている。

その道は「ルートYC」と名付けられた。AUTOCAR英国編集部のオフィスからでも、5時間かからない。

そこを折角走るなら、スポーティなクラシックカーが良い。だが、ハードなサスペンションで、落ち着きに欠けるのは望ましくない。途中で故障し、ロードサービスのお世話になるのもうれしくない。

あまたの中で筆者が選んだのは、R107型のメルセデス・ベンツSL。通称パゴダルーフの後継だ。ルートYCの中心に位置する、グレートブリテン島中東部のウェスト・ナプトンには、偶然にもクラシック&スポーツカー・センターがあり、お借りすることが叶った。

最後まで先進性が保たれたR107型SL

R107型のSLは、1971年に発売。W116型のメルセデス・ベンツSクラス譲りとなる、トレーリングアーム式リア・サスペンションと、V型8気筒エンジンを搭載していた。1980年には、新型W126型Sクラス用のエンジンを獲得している。

1986年に最後のアップデートを受け、スタイリングへ手が加えられ、V8エンジンの設定が改められ、420SLが追加されている。生産は長く続いたが、最後まで先進性は保たれていた。連れ出したレッドのコンバーチブルは、1986年式だ。

ルートYCは、自然公園をぐるっと巡るような、環状の道ではない。遠く離れた地点を目指すわけでもない。1日で走りきれるような、6つのループ区間が組み合わされている。今回筆者は、そのうちの2つの区間を辿ってみることにした。

1つは、東沿岸のウィットビーという町の外周を巡るコース。もう1つは、その南のスカボローを取り囲むコースだ。

初日は、ソーントン・デールという小さな村からスタート。農作地帯が、見渡す限り続いている。国道A169号線は、ノース・ヨーク・ムーアズ国立公園へ伸びている。

勾配が徐々に増し、180度向きを変えるヘアピンカーブへ出くわす。アメリカのサーキット、ラグナセカのコークスクリュー・コーナーに匹敵するような、激しい登り坂を一気に旋回。さっきまで整然としていた大地は、荒野へ転じる。

連続するカーブを落ち着いて処理する

低木がポツポツと茂り、ヒースの草が風になびく。牧草地に放たれた羊たちが、群がっている。早朝の陽光を浴びながら、V8エンジンの本領を発揮させたいところだが、既に時刻はお昼。交通量は少なくなく、先行車両につっかえ気味だ。

途中で脇道へ曲がる。ここから先は、ルートYCの1つ、ウィットビー・エリアの真骨頂。道は適度にうねり、クルマの数は少ない。ノース・ヨーク・ムーア鉄道の橋梁をくぐる。景色は、つい脇見したくなるほど美しい。

連続するカーブを、420SLは落ち着いて処理していく。リアアクスルは僅かにムズがるが、安定性を失うわけではない。オーバースクエアのV8エンジンを受け止めるのは、ロングレシオの4速ATだが、シフトアップには積極的な様子。

最大トルクが発揮され、響きが転調し始めた直後に、次のギアが選ばれてしまう。ソフトトップを開いて、V8サウンドのシャワーを期待していたが、充分には浴びれない。運転しやすいことは間違いないが、スポーツ度は高くない。

西へ進むと道は平坦になり、直線区間が増えていく。公式なルートYCではないが、ヨークシャー地方に隠れる見事な道を、自ら捜索する価値はあるだろう。沿岸の小さな港町、ステイスからウィットビーへ南下せず、もう少し自由に走ることにした。

国立公園の東にある、ゴースランドには1950年代風のカフェやショップが並んでいる。1992年のTVドラマ、「ハートビート:小さな町に大事件」の舞台になった、谷間の町をゆったり眺める。

19世紀末の建物が街並みを作るウィットビー

初日の宿泊場所は、ウィットビーの手前にあるファームステイ、ザ・ステーブルズ。ドライバーだけでなく、サイクリストにも人気の、旅行者向けの施設といえる。

翌朝、ウィットビーの市街地をさまよってみる。19世紀末、ビクトリア朝時代の建物が街並みを作る。その中心部を流れるエスキモー川沿いには、もっと古い伝統的な漁村が残っている。

海沿いの高台には、ウィットビー修道院の遺跡が佇む。かつてはバイキングに襲撃され、16世紀にはイングランド国王のヘンリー8世に征服された。駐車場へ420SLを停め、かつての修道院へ続く199段の階段を登る。

この海岸線は断崖で、車道は奥まった台地にある。北海を眺めるには、崖の近くまで歩くか、低地の町を探す必要がある。というわけで、ロビンフッド湾を目指す。

ここは、どこを撮影しても絵葉書に使えそうな漁村。クルマがやっとすれ違えるような細い道沿いに、建物がひしめいている。その奥へ、小ぢんまりとした浜辺がある。

海岸沿いは、気持ちが良いだけではない。ヨークシャー地方では、見返りも多いようだ。森の中に続くつづら折りの区間や、ドラマチックな橋梁を運転できる。フォーリング・フォスという名の、滝も眺めることができた。

この続きは、メルセデス・ベンツ420SL ヨークシャーを巡る(2)にて。

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