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「エディ・ボーイ」現象──インディ・スリーズを復活させる新世代

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「エディ・ボーイ」現象──インディ・スリーズを復活させる新世代

「肌にピタッとするシルエットって、なんともセクシー。着たらわかりますよ」。英版『GQ』は、若きエディ・スリマン信者たちに話を訊いた。

2000年代前半から中頃にかけて、英国のクラブではまだタバコが吸えた。ギターが主役の音楽が全盛で、スキニージーンズがファッションの最前線だった。そんな時代のスタイルに夢中になる若者たちがいる。彼らは「エディ・ボーイ(Hedi boy)」と呼ばれている。つまり、フランス人デザイナー、エディ・スリマンの美学に深く傾倒する人々、ということだ。

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スリマンは2000~2006年にディオール オムを率い、その後2012年からはサンローラン、2018年からはセリーヌのクリエイティブ・ディレクターを務め、2024年に退任。彼の細身でシャープなシルエットは、時代の空気を切り裂くような存在感を放ち、ザ・リバティーンズやザ・ストロークスといったロックバンドのスタイルとも密接にリンクしていた。ピート・ドハーティ、ダフト・パンク、ジュリアン・カサブランカスは、スリマンのスタイルの“アンバサダー”だった。そして今、彼らの精神を受け継ぐ新生「エディ・ボーイ」がシーンに再降臨している。

「エディならどうスタイリングする?」と考える

コンテンツクリエイターのエマ・ウィンダーが最近手がけたストリートインタビュー企画「今のエディ・ボーイのスタイルって?」「エディ・ボーイUK上陸」は、TikTokでバズりまくった。数十万再生を叩き出し、注目を浴びている。でも、そもそもエディ・ボーイとは何者なのか?

ロンドン在住の若手メンズデザイナー、ヤーデン・ダチャットはこう語る。「エディの服を着るというより、彼ならどうスタイリングするかを意識しているんです。スキニージーンズ、つま先の尖ったブーツ、バンドTシャツにレザージャケット。それが基本です」。ブランドへのこだわりよりも、“ムード”が大切なのだという。少し小汚くて、機嫌悪そうで退廃的。クラブに出かけては、数日帰ってこないような空気感。タバコとブラックコーヒーさえあれば、生きていけるようなボーイズたちだ。

新世代のエディ・ボーイは、ファッションコミュニティやRedditなどのネットの片隅から登場し、ディオール オムのアイテムの真贋を語り合っている。細部のディテールを知ることが、“本物”と見なされるための条件なのだ。

今のタイミングでエディ・ボーイのスタイルが注目されている理由のひとつは、現代のファッションとのコントラストだ。長く続くビッグシルエットの流れに対して、エディのタイトなスタイルはまったく異なるアプローチを提示する。「ファッションがもっと面白かった時代に戻りたいという気持ちがあるんだと思います。体にフィットするシルエットって、やっぱりセクシーですから」と語るのは、ミュージシャンのチャーリー・パリー。

「ファッションには“波”があると思います。最近のビッグシルエットが流行りすぎて、そろそろ違うものが恋しくなるタイミング。エディの世界観って、まさにそこにハマったのかと思います」と話すのは、同じくエディ・ボーイのミュージシャン、スティーブン・セン。

https://www.tiktok.com/@emmaxwinder/video/7496516921676893462さらにZ世代にとっては、2000年代のスタイルがすでに“懐かしい時代”となっており、新鮮に映るのも一因だ。「当時は素晴らしい音楽やカルチャーがたくさん生まれていた。エディの服はその空気をまとっていて、写真を見返すと自然とそこに引き寄せられる。ノスタルジーへのオマージュというところかな」とダチャットは言う。

今では、ボスニアからスキニージーンズを取り寄せているという噂のバンド「The Hellp」などが、新しい“エディ的”スタイルを体現している。「インディ・スリーズのリバイバルもあって、彼らは昔エディを信奉してたバンド──たとえばジャスティス、ダフト・パンク、ザ・リバティーンズ、ザ・ストロークスみたいなバンドのスタイルをまんま再現しています。みんな、そのムーブメントに乗りたくて仕方ないんです」とセンは言う。

当然、ディオール オム時代のアイテムは今や入手困難なヴィンテージ物として価格が高騰している。「エディがディオール オム以降に手がけたアイテムは、いまだに高い人気を誇っています」と語るのは、ヴィンテージアーカイブを扱うデヴィッド・カサヴァント。「GrailedやDepop、The Real Realといったサイトが主流ですが、本当に詳しい人たちはアジアの古着サイトや専用フォーラムで探しています」とセンは教えてくれた。

ただし、エディ・ボーイというラベルを自らに貼ることに抵抗を覚える人もいる。ソウル在住のモデル、2011年からエディ・スリマンの動きをフォローしていたジェイ・ヒョクは「彼の服は着るけれど、自分がエディ・ボーイだとは思わない」と語る。「彼の美意識に心から敬意を持っているからこそ、その呼び名を簡単に使えないんです」

ファッションのトレンドと本質

2025年のメンズファッションは、直線的でスリムなシルエットに向かっているようだ。90年代的ルーズさに対して、スリマンのスキニーがカウンターとして存在したように、今また何かが変わり始めている。「トレンドって20年周期で回ってくると思うんです。タイミングを誤ると、かえって逆効果になることもある。14年目あたりでフライングすると、全体的な復活がさらに5年遅れてしまうこともある」と、コンテンツクリエイターのリアム・コールは語る。つまり、コージーボーイの時代は、終わりを迎えたのかもしれない。

トレンドは移り変わるものだ。エディ・ボーイ旋風もいつかまた去るだろう。でもエディ・スリマンと、彼の極限まで削ぎ落とされたスタイルは、TikTokのポージングやライブハウスの列を超えて、ファッションの本質として永遠に残り続けている。

「時間は、炎に吹き付ける風のようなものだと思います。風が炎に吹きかけられたとき、もしそれが小さな炎だったら消えてしまう。でも、もともと強い炎なら、風が吹くほど大きく燃え上がります」と、カサヴァント。「エディの生み出したメンズウェアは力強かったので、さらに人気になったのです」

From British GQ

By Ollie Cox
Translated and Adapted by Yiqing Yan

文:GQ JAPAN Ollie Cox
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