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「女性向けの車」最近聞かなくなったワケ 成功したのは一握り? 今思うと“ユニークすぎる”装備も

掲載 更新 47
「女性向けの車」最近聞かなくなったワケ 成功したのは一握り? 今思うと“ユニークすぎる”装備も

オルゴール搭載!? 60年以上前に誕生した「女性向けモデル」の先駆け

 日本の自動車には、開発の段階から「女性を意識した」モデルが少なくありません。そうした女性向けモデルの歴史は60年以上と非常に古く、女性の社会進出が進むにつれて支持が広まっていきました。しかし、現在ではこのようなモデルやグレードは少なくなり、“女性向けのクルマ”という存在のあり方自体も変容しているようです。

【本格クロカンなのに2輪駆動!?】これが前代未聞の「女性向けジムニー」です(写真で見る)

 日本車で初めての「女性向けモデル」とされるのは、1961年に日産の中型セダンだった初代「ダットサン・ブルーバード」シリーズに追加された「ファンシーデラックス」です。当時は“クルマの運転=男”という価値観がまだまだ一般的でした。

 ボディカラーにはピンクやレモンクリーム系のバリエーションを用意し、内装色もこれに調和したものになっていました。また、専用品として化粧ポーチ内蔵の助手席サンバイザーや、リアシート上部のコートハンガー、ダッシュボードサイドのハイヒールスタンド、一輪挿しなど、30点以上もの特別装備を採用。なかには、作動音がオルゴール音となっているウインカーなど、非常にユニークなものもありました。

 ただし、前述のように1960年代当時はまだまだ「男は外で稼ぐ・女は家庭を守る」という価値観の時代。ファンシーデラックスの主なユーザーは、女性の会社経営者、芸能人、裕福な家庭の婦人といったセレブ層であり、全体的な生産台数はそう多くなかったようです。その後、女性向けモデルの歴史には20年ほどの空白が生じます。

「2人乗りオープンスポーツ」の名作も女性向けだった!

 女性ドライバーも増加し、一般的になりつつあった1981年、トヨタは小型ハッチバックの「ターセル」と「コルサ」に、女性仕様車の「ソフィア」を追加。刺しゅう入りのシートや助手席バニティミラー、大型ドアポケットなどを装備していました。また、大衆車の「カローラ」や「スプリンター」にもそれぞれ「ライム」「リセ」などの女性向けグレードを設定し、女性シェアの拡大に取り組みました。

 さらに、女性ドライバーの増加が顕著だったのが軽自動車のマーケットです。三菱は1982年、軽2ボックスセダンの「ミニカ エコノ」に「マリエ」という女性向けグレードを設定。インテリアはベージュと紫がかったピンクを基調とした、専用のコーディネートとなっていました。マリエは好評を博したようで、1984年のフルモデルチェンジ以降も続投しています。

 一方、1979年に初代「アルト」をヒットさせ、多くの女性ユーザーを獲得したスズキも黙っていませんでした。1984年には、女性ユーザーの声をさらに強く反映した2代目アルトを発売します。この2代目アルトは、スカート姿の女性ドライバーが足を揃えたまま乗り降りできる「運転席回転シート」を初装備して話題に。またテレビCMに歌手の小林麻美を起用するとともに、彼女をモチーフにした特別仕様車「麻美スペシャル」もラインナップしました。

 こうした女性向けモデルは、あくまでも“扱いやすさ”を訴求したものでしたが、1980年代の終わりには、さらに進んだ考え方のクルマの企画も進行します。それは意外なことに、1989年登場のマツダ「ユーノス・ロードスター」でした。初代ロードスターの開発コンセプトは「アメリカの若い女性が通勤や買い物で使うコミューター」だったと言われています。

 当時の日本では考えられないことですが、実はアメリカでは1970年代より、トヨタ「セリカ」やマツダ「サバンナRX-7」など、日本ではスポーツカーと考えられていたモデルが若い女性に人気を博していました。ロードスター(アメリカでは「MX-5ミアータ」として展開)の企画は、こうしたニーズも念頭に置いたものだったのです。

「女性向け」の新型車はもう出ない?

 さすがに、一般的な女性ドライバーがロードスターを選択するのはハードルが高すぎたようですが、言い換えれば日本における女性向けモデルは、依然として軽自動車やコンパクトカーが中心でした。しかし、2000年にはなかでも異色な女性向けモデルが登場します。それがスズキの「ジムニーL」です。

 ジムニーと言えば、良くも悪くも“男らしい”タフな軽4WDクロカンとして有名ですが、ジムニーLはなんと2WDで、ズバリ「街乗りを気軽に楽しみたい女性」を狙ったものでした。ですが、そもそもジムニーを選ぶようなアクティブな女性にとっては物足りず、そうでない女性にとっては硬い乗り心地や高い車高が不便でした。結果、ジムニーLはすぐに姿を消しています。

 そんな失敗も頭にあったのか、スズキは2002年、女性向けモデルとしては空前の大ヒット作となった「アルトラパン」をリリースします。ラパンは「身近な雑貨や家具のような愛着の持てる道具」をテーマに企画を立案。デザインは現行の3代目まで、一貫して「かわいさ」を追求し、今では女性のみならず、男性ユーザーからも好まれるロングセラーに成長しました。

 また、2004年にはトヨタ「パッソ」、ダイハツ「ブーン」が登場。ダイハツが開発・生産を主に担当したパッソ/ブーンですが、特に2代目以降は丸みを帯びたかわいらしいデザインや豊富なボディカラーなど、女性を強く意識したモデルとして開発されました。両車は2023年の販売終了まで、まずまずの支持を得ました。

 さらに、2009年にはダイハツ「ミラココア」がデビュー。リリース時の発表によれば、ターゲットは「自分の感性・感覚でモノ選びを行い、毎日を肩肘張らずに楽しむ女性」で、ライバルのラパンと比べても、さらに“かわいさ”を重視していました。

 ミラココアのコンセプトは2016年、「ムーヴキャンパス」へと発展します。ボディスタイルはスライドドアを備えたハイトワゴンへと進化し、扱いやすさはいっそう向上。今日までロングヒットを続けています。

 一方、ダイハツは2018年にココアの後継車「ミラトコット」も発売しましたが、こちらはヒットには至らず、5年ほどで生産終了になりました。トコットは従来までの女性向けモデル同様、かわいらしいスタイルやカラーリングが売りでしたが、こうしたモデル開発はもはや、実際の女性ユーザー像と乖離しているのかもしれません。

 日本車でメーカーが公式に明言する「女性向けモデル」は、実質的には現在のところトコットが最後となっています。これはあくまでも筆者個人の意見ですが、ジェンダーレス化が進み、かつてのように女性のニーズを“紋切り型”で図ることができなくなった今では、ことさらに“女性向け”をうたうモデルはもう出てこないのではないかと思います。(松田義人(ライター・編集者))

文:乗りものニュース 松田義人(ライター・編集者)
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みんなのコメント

47件
  • mak********
    女性向けに作った訳でないがスズキのハスラーなんかは女性に人気があるよね。カワイイとカッコいいが同居してる感じがウケてるんじゃないかな。
    つうかさ、女性ってカワイイ車よりカッコいい車の方が好きじゃね?
  • ltq********
    ホンダトゥデイにポシェットという特別仕様車があった
    シティにフィットという仕様車があった
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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