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14シーズンを戦ったニッサンGT-R、GT500ラストレース。空力面の厳しさのなか「次のクルマに活きていく」【第8戦富士決勝】

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14シーズンを戦ったニッサンGT-R、GT500ラストレース。空力面の厳しさのなか「次のクルマに活きていく」【第8戦富士決勝】

 2007年、完全なる次世代型モデルとして圧倒的な性能を手に姿を現したR35型GT-Rは、当然ニッサン陣営の新たなGT500ベースとして、それまでのZ33型フェアレディZからバトンを引き継ぐことになった。

 翌年導入予定だった新規定を先取りする形で2008年に実戦投入されたR35GT-Rは、カーボン製のツインチューブモノコックを採用。エンジンを含め特認車両としての参戦にはなったが、2014年から導入されることになる“共通モノコック”よりも「はるかに高い1.5倍の剛性を誇っていた」ことも併せて、開幕戦からの連勝劇を含む年間3勝を挙げた本山哲/ブノワ・トレルイエ組がデビューイヤーでのチャンピオンを獲得した(GT-Rとしては年間7勝を記録)。

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 そして前述のとおり2014年からDTMドイツ・ツーリングカー選手権との技術規定共有を目指し、日本独自のエンジン規定である2リッター直列4気筒直噴ターボ+燃料リストリクター採用のNRE(ニッポン・レース・エンジン)と共通モノコックを組み合わせた、現在へと続く新時代の幕が開けた。

 その新生R35GT-Rは開幕戦こそ落とすものの、第2戦富士スピードウェイでは予選1-2-3を独占し、当時のカルソニックIMPUL GT-Rがポール・トゥ・ウインを達成。続く第3戦オートポリスでは表彰台を独占するなど栄華を誇り、最終戦でもMOTUL AUTECH GT-Rがポール・トゥ・ウインを決めて逆転王座を勝ち獲った。その直線速度の高さにより“富士で無類の強さを誇った”14規定GT-Rは、翌年も連覇を果たすことになる。

 しかし3年周期で規定見直しの入った2017年からの3年間は、25%のダウンフォース削減と年間を通じた空力の1本化により苦戦を強いられ、FR共通化が果たされた2020年からのサイクルでは、思わぬ外敵の出現にも足を引っ張られる形となった。ニッサン陣営の陣頭指揮を執るニスモの松村基宏GT500総監督が、ここまでの来歴を振り返る。

「もともと14年規定でのGT-Rが立ち上がったとき、得意だった空力のパーツというのがどんどん共用化され、そういった特殊性を出すことができなくなりました。その分だけ、空力面で相対的に競争力が落ちたのは事実なんです」と松村総監督。

「それにこの20年になってついに、ドラッグとダウンフォースの比率で言えば“ダウンフォースの側”に振ったようなクルマを作りました。しかし結果的にコロナが来てですね……富士4戦というところから苦労しました。逆に鈴鹿では約束どおり勝てたので、その鈴鹿が1戦しかなかったのも痛手でした」

 2021年も鈴鹿で勝利を挙げて2年にまたがり3連勝をマークしたGT-Rは、今季2年ぶり開催のSUGOも制して“ハイダウンフォース特化型”の面目躍如とすると、既報のとおりニッサンはこの富士スピードウェイでの最終戦を前にした11月17日、来季のGT500クラス参戦車両について「2022年から変更する」とアナウンスした。

 これにより2008年からGT500を戦ってきたR35GT-Rにとって『ラストレース』となった1戦。ニッサン陣営唯一のタイトル候補として乗り込んできたランキング6位の12号車カルソニック IMPUL GT-R(平峰一貴/松下信治)だったが、土曜午前のフルコースイエロー(FCY)テスト走行枠では「燃料系統のチェックをしていた部品の関係で」ストップする場面もあり、予選ではタイヤのグリップ発動を待つウォームアップラップの時点でライバル勢より先行する優位性を見せていたものの、ラストアタックでわずかにまとめ切れず14番手。

 優勝のみが逆転タイトルへの条件であるため、決勝スタートからもその意気込みを存分に披露したが、オープニングの1コーナーで16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTにヒットしてペナルティ。3周目の最終コーナーでは同じく逆転タイトルを賭けていた17号車Astemo NSX-GTに今度はヒットされる立場となり、大きくマシンダメージを負った状態で66周300kmを走り切った。

「ブリヂストンも含め、週末の陣営内でパフォーマンスが1番高いクルマなのに14番手からのスタートになりました。そこからは抜いていくしかない。そのメンタリティというかな。『抜いていこう』という気持ちの結果として当たってしまいペナルティになりました。その部分は、私はチャレンジ精神として否定をする気はないです。むしろインパルらしいレースだったんじゃないかな?」と、笑みを浮かべた松村総監督。

「序盤にカウルの多くの部分が飛んでしまい、空力的には相当インバランスな状態になりましたが、そんななかで最後の方にベストラップ(41周目)を出しながら最終的に9位まで上がってきました。そういうところがインパル、という感じですよね」

 また、ウォームアップ性能では「ライバルに勝る面もある」ミシュランタイヤ装着の23号車MOTUL AUTECH GT-Rと3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rもそれぞれ見せ場を作り、スタート直後には9番グリッド発進のロニー・クインタレッリが一時6番手まで進出。3号車CRAFTSPORTSの平手晃平も、アウトラップ直後から同周ピットの1号車STANLEY NSX-GTに先行するなどし、終盤は松田次生との“同門対決”も繰り広げた。

「タイムとしては、クルマのセットとタイヤとの組み合わせでいけばそれなりに……優勝はちょっと厳しいかもしれないですけど、入賞圏内、表彰台に乗れるか乗れないかくらいには行けるような速さはありました」と続ける松村総監督。

「あの2台の勝負はピックアップがどのタイミングで来るかで効いてきます。だから3号車が速いときもあれば、遅いときもあります。でも面白いことに『抜いたな』と思ったらピックアップを喰らって、今度は後ろの方が速くなって。事実、そういうことが起きていました。ものすごく近くにいるので同じ兄弟車で抜いたり抜かれたりがありましたが、そこは真剣勝負で特別な駆け引きもないですし、オーダーみたいなこともないです」

 長いストレートを持つ富士では、相対的に“ハイドラッグ”な現行規定GT-Rは不利を承知で戦い続けてきた。とくに冬の気象条件で空気密度が高まれば、空力効率も上がるためそのビハインドはさらに大きくなる。それでも、規定により“狭い領域”ながらシーズンを通じて開発が続いてきたエンジン側では、ホンダのチャンピオン候補車たちと同じくミニマムでのピットインを可能にするなど、燃費面(=出力面)で「もう全然問題ない」ポジションまで進化したと自負する。最後のレースを終えた今、改めて14シーズンを走り抜けたR35GT-Rに対する『はなむけの言葉』を聞く。

「役割は果たしましたし『次はもっと強くなって帰って来い』ってことです。もっと強くなって復活してくれ、というのが私たちの願いだし、そのために我々も研究を続けている。またその技術も“次のクルマ”には活きていくと思っています」

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