電池交換式EVに再び注目
日本が世界的なEVシフトに出遅れたが、今、主導権を握る転機が訪れた。
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2025年3月28日、スイス・ジュネーブで国連自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)が開催された。日本が提案していた電池交換式電気自動車(EV)の安全性と耐久性に関する国連基準の策定が議論されることが決まった。
2027年を目指して基準策定が進み、基準化すべき項目に関する合意形成が本格化する。その結果、2030年までに加盟国の国内法規に反映される予定だ。
本稿では、中国が先行する電池交換式EVについて、日本がどのように巻き返しを図り、主導権を握れるかを、WP.29での採択を踏まえて掘り下げていく。
先行する中国の現在地
世界的なEV普及は、テスラやBYDなどの急速充電方式によって成長してきた。各国はこの方式に対応した充電インフラを整備し、自動車メーカーは車体設計を最適化してきた。しかし、現在、潮目が変わりつつある。
その背景には、中国で急速に普及している電池交換式EVがある。特にタクシーや配送車など、稼働率が高い商用分野で実用化が進んでいる。中国での急拡大は、世界のルール形成に影響を与える段階に進展している。
このままでは電池交換インフラの標準仕様が中国主導で決まってしまう危機感があった。しかし、先の国連WP.29での採択により、日本主導での国際ルール化に繋がる可能性が高まった。これは大きなチャンスだといえる。
普及を妨げたいくつかの課題
電池交換式EVは新しい技術ではない。2000年代初頭、米スタートアップのベタープレイスが取り組んでいた。日産やルノーも関心を示し、2009(平成21)4月には横浜で電池交換ステーションの実証試験を行った。
その後、普及が進まなかった理由にはいくつかの課題があった。最大の問題は電池規格の非統一だ。自動車メーカーごとに電池のサイズ、容量、接続方式が異なり、インフラ側がすべてに対応するのは現実的でなかった。その結果、交換ステーションは専用設計となり、スケールメリットを得られなかった。
また、自動車メーカーの設計思想が電池一体型に進んだことも影響した。特に、EVの設計自由度を活かすために、車体の構造部材として電池を活用するケースが増えた。これにより、電池交換のインセンティブが減少し、モジュール型への移行が進まなかった。
さらに、欧米や日本では急速充電インフラへの巨額の投資が進んでいた。電池交換式への転換は、既存の利害関係に大きな摩擦を生む要因となった。
加えて、交換ステーションの初期費用や都市部での土地確保の難しさも問題視されてきた。特に、一台あたりの電池をストックする必要があり、交換にかかる時間やコスト効率がトレードオフとなっていた。
日本や中国での取り組み
日本では新たなアプローチで電池交換式EVの活路を見出し始めている。2024年8月、三菱ふそう、ヤマト運輸、Ampleの3社は電池交換式EVトラックの公道実証を開始した。三菱ふそうのeCanterが全自動交換ステーションに入庫すると、ロボットが自動で電池を交換し、交換時間は5分を目指している。
また、2025年3月には、豊田通商とAZAPAが軽商用車を電池交換式EVに改造し、脱炭素型物流モデルの実証を行った。このように、配送用EVへの展開が進むことで、稼働率や整備効率の向上が期待される。
一方、中国では電池交換式EVが本格的な社会インフラとして整備されつつある。蔚来汽車(NIO)は中国国内に3000か所以上の交換ステーションを展開しており、2025年には5000か所を目指している。自動化された交換は数分で完了し、ユーザーは車から降りることなく交換できる利便性を提供している。
中国政府は補助金を投入し、電池を車体から切り離して資産管理する新たなビジネスモデルを推進している。これにより、再利用やリサイクルのトレーサビリティが向上し、効率的な電池管理が可能となる。
国連WP.29でのルール形成の意義
日本が国連WP.29を通じて国際基準の策定で主導権を握ることには戦略的な意義がある。特に注目すべきは、モジュール型バッテリーの標準化によって参入障壁が低くなる点だ。
現在、EV市場は電池調達と車体設計を高度に統合した大手自動車メーカーが支配している。しかし、標準化されたモジュールがあれば、車体設計に特化したアセンブラー型メーカーや、軽商用車向けのベンチャーが競争に参加できる余地が生まれる。
さらに、充電インフラに依存するインフラ主導から、車体と規格の整合性を前提としたモデルへのシフトは、EV市場の競争構造を再定義する可能性を秘めている。
日本製電池の高い安全性や寿命特性を国際標準に反映できれば、サプライチェーン全体の競争力向上にもつながる。これにより、素材、セル、制御系を含めた日本製電池の再評価が進むだろう。
今後の経済的インパクトと展望
電池交換方式EVが普及すれば、電池の所有と利用の概念が大きく変わる。電池は個人や法人の所有からサービスに移行し、初期コストの低下や電池寿命の管理効率が大幅に改善されると期待される。
また、MaaS(Mobility as a Service)やカーシェアとの親和性も高い。電池の利用回転率を最大化すれば、特に都市部でのエネルギー効率が向上する可能性がある。
さらに、バッテリーのV2G(Vehicle to Grid)機能と組み合わせることで、電力需給調整のインフラとしても活用できる。災害時のバックアップ電源や、太陽光などの再生可能エネルギーとの組み合わせによって、分散型エネルギー網の中核を担う展望が広がる。
日本企業にとっては、標準仕様のモジュール、交換装置、管理システムなどを提供するチャンスでもある。特に東南アジアやインドなどの新興国では、都市部での小型EV活用が進む中、簡易インフラで導入可能な電池交換方式が注目されている。
ゲームチェンジの可能性
現時点では課題も多い。標準化には時間と調整が必要で、既存の急速充電インフラとの整合性も問われる。また、電池の管理や回収に関する制度づくりも不可欠だ。
しかし、国連WP.29での採択は、EV戦略の第2ラウンドの幕開けを示唆する出来事となった。日本が技術力と制度設計力を融合させて国際ルールをリードすれば、EV市場の覇権構図は大きく変わる可能性がある。
電池交換式という新たな選択肢を世界に提示できるか。これが日本にとって残された数少ない逆転のチャンスだ。今後の国連WP.29での議論の進展に注目したい。
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