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スーパーGT:第2戦富士でのGT300“タイヤ四本交換義務づけ”の狙いとはいったいなんなのか

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スーパーGT:第2戦富士でのGT300“タイヤ四本交換義務づけ”の狙いとはいったいなんなのか

 スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションは7月29日付けで、8月8~9日に富士スピードウェイで開催される第2戦において、GT300クラスのすべての車両が、ドライタイヤでスタートした際には、ドライバー交代時に同時に四本のタイヤを交換しなければならないとするブルテンを発表した。この決定により、スーパーGT最大の特徴のひとつであるタイヤコンペティションから生まれた戦略のバラエティが減ることになるが、いったいどんな狙いをもって導入されるのだろうか。

■そもそもタイヤ無交換作戦とは何か
 多くの車種が争うGT300クラスは、多く分けて世界的に流通する市販レーシングカーのFIA-GT3車両、そしてJGTC全日本GT選手権時代から独自の進化を遂げてきたワンオフレーシングカーのJAF-GT300、GTアソシエイションが日本のものづくりを育てるために作り上げたJAF-GT300マザーシャシー(MC)という3種類のマシンが混在する。

スーパーGT:第2戦富士でGT300にタイヤ4本交換を義務付け。無交換や2輪交換が不可能に

 GT3もJAF-GTも車両の成り立ちがそもそも大きく異なるが、こういったマシンの性能を調整するために、レース前には『参加条件』というものが出され、すべてのラップタイムが等しくなるように調整されている。ただそれでも、車重やパワーの面でGT3とJAF-GTの間には違いがあり、その特色を活かした戦略が毎レース展開されていた。

 非常に乱暴なくくり方ではあるが、近年こそGT3カーはダウンフォースをつける方向で開発されているものの、基本的にコーナリングよりもストレートが得意。逆に、フォーミュラカーのような設計思想が盛り込まれ、クイックなコーナリングを得意とするJAF-GTのラップタイムをGT3とバランスを取ろうとすると、ストレートはどちらかといえば苦手になる(GT3がダウンフォース側に振っていることで、その差は少なくはなっているが)。

 JAF-GT使用チームはさまざまな対策を施してストレートで対抗しようとしてきたが、やはりレースとなると、ストレートが得意なGT3の方がバトルでは強い。特に顕著なのは富士で、予選でJAF-GT300/MCがポールポジションを獲っても、レースでは抜かれてしまうことが多いのはそのためだ。さらに、JAF-GT300/MCは燃料タンクがGT3に比べて容量が小さく、満タンスタートとなると、給油時間がGT3よりも8秒ほど伸びてしまうという。

 レースでGT3車両に対向するべく、JAF-GT300/MC勢が取り組んだのが、タイヤ無交換作戦と言える。ドライバー交代を行うピットイン時にタイヤ交換の時間を削り、レースで大きく順位を上げるためのもの。コース上で給油のための7~8秒を稼ぎ出すのは至難の業だが、ピットならばそれが可能。しかし、これを実現させるためにはレースディスタンスを安定して走りきれる、さらに後半スティントでも安定したラップを刻めるタイヤが必要で、作戦を成功させるにはドライバーにも高いテクニックが求められるほか、チームとメーカーの多大な努力が必要。近年この作戦を定着させたつちやエンジニアリングは、まさにその好例だ。

■第1戦の状況を経た“四本交換義務づけ”決定の理由
 この作戦は、特に車重が軽いJAF-GT300/MCが得意とするが、逆に言うと重いGT3では現段階ではかなり厳しい作戦となっている。しかし、近年ではLEON PYRAMID AMGが二輪交換を頻繁に行いピット作業時間短縮を図っているほか、GT3勢のなかでも無交換作戦が実現できるタイヤづくりに取り組んでいるチーム、メーカーがある。先述のように、コースで数秒を稼げないのであれば、ピット作業時間短縮で稼ぎたいのはレーシングチームなら当たり前の思考だ。

 ただ、これを実現させるためには、スタート時のタイヤの内圧を低めに設定しなければならない。第1戦富士では、無交換、もしくはそれに近い作戦を狙い、低い内圧と推測されるマシンにタイヤトラブルが起きるシーンがあったのだという。当然勝ちたいのは誰もが同じで、それ自体は悪いことではないが、“無理”をしているシーンが散見されたのだ。

 複数のエントラントによれば、この状況を見たGTA坂東正明代表から、エントラントやメーカーに対して、今回提示されたGT300におけるタイヤ四本交換義務づけの提案があったのだという。理由は、タイヤトラブルをなくし、安全を優先したからだ。一瞬のタイヤトラブルは、起きた場所によっては非常に深刻なアクシデントに繋がる可能性がある。シリーズとしてそれは避けなければならないし、タイヤコンペティションがあるスーパーGTならではの特殊な状況とも言える。

 この提案は、エントラントやメーカーなど、きちんとプロセスを経た上で参加者側の承認を得た上で決定され、今回の発表に繋がったのだという。なお、ブルテン内でも触れられているが、まずとりあえずは第2戦だけの措置となり、第3戦以降は再度会議を経て決定されるという。

 また、タイヤ四本交換義務づけにともない、当然その作戦を活用することが多かったJAF-GT/MCのために、参加条件を伝えるブルテンNo.026-Tで給油リストリクター径に関する数値も変更されている。四本交換義務づけを伝える7月29日付けで発行されたブルテンNo.025-Sと、No.026-Tはセットでの変更というわけだ。

「坂東さんが冷静に判断した結果」という声も聞かれる一方で、これを評価しつつも、「すごく残念」という声もある。もちろんこの決定で不利益を被るチームもあるのは間違いないし、ファンにとっては戦略の幅が減るのは残念なところだろう。ただ決議の結果今回の決定に繋がっているのは、何より安全が最優先ということがスーパーGTにとって共通の認識だとご理解いただければと思う。

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みんなのコメント

1件
  • 鈴鹿10Hやブランパンアジアが面白くないのは、どの車も同じタイミングでピットに入り、同じ時間停まり、同じタイヤを付けて走るから
    いろんなピット戦略があるから面白いのに、それをレギュで狭めるなんて愚の極み
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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