モータースポーツや自動車のテクノロジー分野に精通するジャーナリスト、世良耕太が『ランドローバー・ディフェンダー』に試乗する。モデルイヤーごとにバリエーションを増やしてきたディフェンダー。新たに選択肢に加わったディフェンダー史上最高峰 5.0リッターV8エンジン搭載モデルの魅力を深掘りしていこう。
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大型改良で走りが洗練された印象。選ぶべきはアシンメトリックLSD装備のMT車/マツダ・ロードスター試乗
「究極のオフローダー」を自認する『ランドローバー・ディフェンダー』にV8ガソリンモデルが加わった。2019年にワールドデビューを果たすと、2020年7月から日本でもデリバリーが始まった『ディフェンダー』は、モデルイヤーごとにバリエーションを増やしている。
国内導入の当初は5ドアの110(ワンテン)のみで、エンジンはP300と呼ぶガソリン(2.0リッター直列4気筒ターボ)のみの設定だった。翌2021年3月に2ドアの90(ナインティ)・P300が加わると、同年5月には110にディーゼルのD300(3.0リッター直列6気筒ターボ)が追加された。
2022年に導入された2023年モデルでは、3列シート8人乗りの130(ワンサーティ)がラインアップに加わった。2023年4月27日に受注を開始した2024年モデルでは、90にディーゼル仕様のD300が追加されている。
これで、90、110、130のすべてのボディタイプでディーゼルエンジンが選択できるようになった。さらに、90と110に対し、ガソリン5.0リッターV8スーパーチャージドエンジンのP525を2024モデルイヤー限定として設定。130には2列シート5人乗り仕様が加わった。整理すると、最新の2024年モデルでは、90にD300とP525を設定、110はP300、D300、P525と幅広いラインアップを誇り、130はD300のみが選択できる。
2023年10月末時点での2024年モデルの販売構成比を見ると、90が8%、110が90%、130が2%で、110が圧倒的な支持を集めていることがわかる。90と110のエンジン別販売構成比を見ると、90は7月に受注を停止したP300が11%、D300が66%、P525が23%となっている。
110はP300が10%、D300は78%、P525は12%だ。ディフェンダーで最も多くの支持を集めているのは、110のD300ということになる。「V8モデルも意外と多くの支持を集めているな」というのが筆者の実感だが、いかがだろう。
定番は確かに、低速・低回転域から力強さを発揮するディーゼルエンジンとの組み合わせだが、大排気量ガソリンエンジンがもたらす力感も魅力で、大柄なオフローダーとの相性は確かにいい。「待ってました!」と手を叩いているファンも多いことだろう。
ディフェンダーの90と110に追加設定された「V8」モデル(とカルパチアンエディション)は、90度のVバンク角を持つV型8気筒エンジンにイートン製スーパーチャージャーを組み合わせた過給ユニットだ。
このユニットはジャガーF-typeにも設定があるが、ディフェンダーに搭載するにあたっては最高出力と最大トルクを控え目に設定。とはいえ、最高出力は386kW(525ps)/6500rpm、最大トルクは625Nm/2500-5500rpmを発生するので、モンスター級と表現して差し支えないだろう。組み合わせるトランスミッションはZF製の8速ATだ。
0-100km/h加速は90で5.2秒、110で5.4秒。最高速度は240km/hに達する。試乗した110は全長4945mm、全幅1995mm、全高1970mm、車両重量は2450kgだ。約5m×2m×2mの大きく重たい物体が、スポーツカー並みの加速力と最高速を披露するのだから、ケタ外れのパフォーマンスもいいところだ。
V8モデルの専用装備として、「クアッドアウトボードマウントエキゾーストパイプ」とプレスリリースにある。有り体に言えば4本出しのテールパイプだ。
前席ドアの下部には「V8」のバッジがあり、さりげなく、秘めたパフォーマンスを示している。22インチ5本スポークアルミホイールがから覗くブレーキキャリパーはグロスブラック仕上げ。フロントの対向ピストンキャリパーにはBremboのロゴが確認できる。
インテリアではスエードクロスのステアリングホイールがV8と他のモデルを区別する識別点。ステアリングの裏にはパドルシフトが備わる。
シートには超極細繊維が上質な肌触りを実現するDinamicaスエードクロスを採用しており、座面と背もたれにあしらわれている。エクステリアもインテリアも、渋めの演出だ。
パワートレインと電動パワーステアリング、ディファレンシャル、トラクションコントロールの各機能を路面状況に応じて最適に制御するモードは手動で切り換えられるが、2024年モデルは車両が自動で路面状況を判断して最適なモードを選択するテレインレスポンス2を装備。
さらにV8モデルは実質的にスポーツモードともいえるダイナミックモードが用意されている。
都内湾岸エリアを起点に一般道を利用してレインボーブリッジを渡り、お台場エリアをひと回りして今度は首都高速を選択し帰路についたものの、事故渋滞にはまって束の間の高速巡航を楽しむどころかノロノロ運転を強いられた。そのため、大排気量V8エンジンを充分に堪能したとは言い切れない。
それでもV8エンジン特有のムードは味わうことはできた。いかに筆者が鈍くても、エンジンを始動した瞬間のブォンという目覚めのサウンドがディーゼルや4気筒ガソリンエンジンと違うことくらいわかる。
そして、V8独特の息吹を感じた瞬間に陶酔している自分に気づくのである。ドロドロドロと独特の脈動をともないつつ低いエンジン回転で悠々と走れるのは、大排気量V8エンジンならではの特権だ。
オンロードが主体の使い方なら、5m×2m×2mの大きく重たい物体をドロドロドロと転がすのも悪くない。というか、抜群にいい気分だ。高速道路の本線への合流などではアクセルペダルの踏み込み量を増し、0-100km/h加速5.4秒の実力を見せつけて、あっという間に巡航スピードに達してみせる。これは爽快極まりない。
そして巡航スピードに達したら、大排気量エンジンがもたらす余裕のトルクを生かして悠々とクルーズする。フロアが高いうえに着座位置も高く、周囲を見下ろすポジションがそうさせるのか、まわりのクルマを押しのけて少しでも前に行こうというせせこましい気分にはならない。
ディフェンダーのV8モデルに乗ると、精神的にも肉体的にも強い人間が些細なことでは動じないように、堂々と構えて運転するようになる効果があるようだ。
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