2022年シーズンは、劇的な形でタイトル争いが決着したスーパーGT・GT300クラス。ここでは、光るところを見せながらも最終戦を前に事実上タイトル争いから脱落してしまったいくつかの陣営をピックアップし、『反省』や『タラ・レバ』などを含めて2022シーズンを総括してもらう。
まずは開幕戦で好調なスタートを切ったかに見えた、UPGARAGE NSX GT3陣営だ。
『15歳差コンビ』誕生。両カテゴリーでステップアップを決めた太田格之進の自信と、“期待感”への意識
2022シーズンのUPGARAGE NSX GT3には、ホンダの育成ドライバーであるGTルーキー、太田格之進が加わった。その太田は第1戦岡山の予選から速さを発揮、決勝でも好走して2位表彰台デビューを飾るなど、陣営としては順風満帆なシーズンスタートに見えた。
しかし、その2位で得たサクセスウエイトが好調に水を差す形となっていたという。チームを引っ張る小林崇志に話を聞く。
「正直、第2・3戦では(開幕戦の結果で搭載された)45kgというウエイトに、アジャストができていませんでした。単純に、ウエイトが載っかった分、遅くなってしまった形です」
「第3戦鈴鹿はクラッシュで終えてしまいましたが、第4戦までの長いインターバルの間に、2回くらい、タイヤメーカーテストに参加できました。そこでウエイトを載せて走行するなかで、結構いいセッティングが見つかりました」
NSX GT3は2022年、“Evo22”パッケージとなり、インタークーラーの改良による効率アップやバネレートの選択幅拡大、そしてリヤサスペンションのジオメトリー変更などでパフォーマンスが向上。それらアップデートされた部分への合わせ込みを行う時間としても、第3戦後のインターバルは有益だったという。
「(Evo22パッケージで)クルマが変わって良くなったところもあったのですが、ネガも多少ありました。その部分に対しても、インターバルのときにいろいろとセッティングを変えていくなかでいいポイントが見つかりました」
第4戦以降、とくに予選Q1でのパフォーマンスがアップ。それ以降も搭載する70kgオーバーのサクセスウエイトを「まったく感じさせないくらい。むしろ、(45kgだった)第2戦・第3戦よりもパフォーマンスとしては高かった」(小林)と、息を吹き返したばかりか、Evo22の利点を最大限に活かして戦える状態にまでなった。
「ただ、(第5戦)鈴鹿では決勝でうまくタイヤをもたせられなかったり、SUGO、オートポリスではQ2でまとめきれないというのが続いてしまって。オートポリスではトラブルが出たり、ペナルティを受けてしまった結果、表彰台以外はノーポイント(※取材した最終戦前日時点)という結果になってしまっているのは事実ですね」
小林が今季の成果として強調するのは、セットアップによるパフォーマンスの上がりシロだ。それを証明する形となったのが取材後の最終戦で、ノーウエイトで予選2番手、決勝で4位フィニッシュを果たしている。
「開幕の段階では、まだセットアップを煮詰めきれていなかったなかで2位が獲れました。来年の開幕では間違いなく優勝を狙っていくべきだし、いけると僕は思っています」と小林は言う。
「去年(2021年)はようやく予選がちょっと速くなってきたけど決勝は全然駄目。今年は決勝もちょっと速くなってきたのですが、でもまだまだ『ちゃんとミスをせず、しっかりレースをして上位に行く』ていうところは足らないのかなと、すごく感じています」
ルーキーシーズンを過ごした相方・太田については「S耐で乗っているのでハコ車の走らせ方はすごく上手でしたし、3月のテストで初めて乗ったときから速く、開幕戦でも表彰台と、そういった部分ではまったく問題はありませんでした」と小林は評している。
「ただ、オートポリスでのミス(FCY時の減速違反)とか、タイヤのもたせ方とかの部分では、経験のなさが出てしまった部分はそれなりに見受けられるので、そこをしっかりと改善してくれたら、もっと良いドライバーになってくれるんじゃないかと思います」
その太田は2023年、GT500へと羽ばたいていくことが決定。小林は新たに小出峻とコンビを組むことになる。この1年をかけて磨きだしたマシンの速さを、コンビが変わるなかでどう維持していくのか。ルーキーが加入するなかで、速さと安定性をどう両立するのか。そこが2023シーズンの飛躍のカギとなりそうだ。
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