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「カウンタック」より速いってホント!? F1譲りのV12を積んだ伝説のミッドシップフェラーリ「365GT/4BB」に秘められた“物語”とは

掲載 更新 49
「カウンタック」より速いってホント!? F1譲りのV12を積んだ伝説のミッドシップフェラーリ「365GT/4BB」に秘められた“物語”とは

“キング・オブ・スーパーカー”に挑んだ革新のミッドシップV12

 スーパーカーブームの時代、「カウンタックより速いフェラーリがあるらしい」と話題をさらった「365GT/4BB」。ピニンファリーナの美しいボディに、F1譲りの水平対向12気筒エンジンを積むこの伝説の一台を、いま実際に愛用するオーナーを取材しました。

【画像】少年たちが憧れた“ビービー”! 極上のフェラーリ「365GT/4BB」を写真で見る(35枚)

 この春で54歳になった筆者が「永遠のライバル」と聞いて真っ先に思い出すのは、『機動戦士ガンダム』シリーズにおけるアムロ・レイとシャア・アズナブル、ハリウッド映画界をけん引したアクションスターのシルベスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガー、そして、スーパーカーブーム全盛時に最高速度対決を繰り広げたフェラーリ365GT/4BBとランボルギーニ「カウンタックLP400」です。

 スーパーカーブームをリアルタイムで体感した、かつての少年たちにとって、カウンタックLP400の300km/hに対し、わずか2km/h差ながらも302km/hで最高速度対決を制した365GT4/BBは、ひときわスペシャルな存在でした。

 1971年に開催されたトリノ・モーターショーのピニンファリーナ・ブースでデビューした365GT/4BBは、フェラーリがそれまでに送り出してきた市販12気筒エンジン搭載車とは異なり、F1用パワーユニット直系の水平対向12気筒エンジンとトランスミッションを一体化し、それをミッドシップに搭載するという斬新なレイアウトを採用していました。

トリノ・モーターショーで披露されたコンセプトモデルは、1973年に登場した量産型とは異なり、ツイン・テールランプと2系統式のエキゾーストシステムを備えていました。この365GT/4BBの登場により、フロントエンジン車が伝統だったフェラーリのフラッグシップは新時代を迎え、“キング・オブ・スーパーカー”として名高いカウンタックLP400とのガチンコ対決が幕を開けたのです。

 ミッドシップ・スーパーカーの時代が始まったとはいえ、当時はまだフロントエンジンV12モデルである「365GTB/4デイトナ」の販売も好調だったため、しばらくの間、365GT/4BBとデイトナが併売されるという、なんとも贅沢な時期が続いていました。

 365GT/4BBが販売されていた1973年から1976年までは、第一次オイルショックによる景気後退の時期と重なっていましたが、エアコン、ラジオ、パワーウインドウなどが標準装備されており、優れた動力性能とピニンファリーナによるアグレッシブかつ美しいスタイルも相まって、トータルで387台が生産されたといわれています。

ピニンファリーナのチーフデザイナー、レオナルド・フィオラヴァンティによるエクステリアはとても斬新でした。全幅にわたる格子パターンのアルミ製ラジエターグリルがノーズ下部を覆い、その背後にドライビングライトを配置。さらに、ラジエターグリルのすぐ上からキャラクターラインがボディ全体を一周しており、ボディが上下で分離できそうな視覚的効果をもたらしていました。

“ボクサーペイント”と呼ばれた美しいディテールの数々

 365GT/4BBの標準仕様では、このラインより下の部分をラッカー塗装の完全なフラットブラック(つや消し黒)で仕上げていました。これがのちに「ボクサーペイント」と呼ばれ、フェラーリの新車でもボディ下部を半光沢ブラックで塗装するオプションが設定されるようになります。

 流麗なボディは、ホイールベースが2500mmとなるティーポF102AB100シャシ上に構築されています。ロードカー用には奇数のシャシナンバーが打刻され、フェラーリ伝統の鋼管フレーム構造に沿って造られています。縦方向に2本の鋼管が走り、それを頑丈なクロスメンバーでつなぎつつ、サブフレームがエンジンやサスペンションなどの補機類を支持する構造とされています。

 このシャシは、コクピットセクションのスチールパネルも車体構造の一部となっており、モノコックに近い強固なセンターセルを形成しています。ハンドルの位置は左右どちらでも選ぶことができましたが、北米仕様は用意されていませんでした。

 鋭く尖ったノーズの上には、フロントヒンジ式の一体型フロントリッド/フェンダーアッセンブリーがあり、そこに左右とも2灯式となるリトラクタブルヘッドライトや、角形の方向指示器、アルミ製ルーバーパネルなどが配置されています。

側面から365GT/4BBを眺めると、5ウインドウのキャビンセクションを構成するサイドウインドウが涙滴型をしていることに気づきます。リアウインドウは天地方向が短く、垂直に立つ平らなパネルとなっており、その左右をフィン状のクォーターパネルが囲んでいます。

 リアウインドウの後方には、リアヒンジ式のエンジンカバーが備わっており、ランボルギーニ「ミウラ」と同様に大きくガバッと開きます。フロントリッドとエンジンカバーを同時にフルオープンすると、“これぞ、スーパーカー!”という絵柄が完成し、いまでもそれを見るとお多くのオジサンたちが大興奮してしまうに違いありません。

 キャビンルーフの直後には、フラットブラックで塗られたエアロフォイル(翼断面)が備わっており、左右のクォーターパネルを橋渡ししています。エンジンカバーにはブラックの熱気抜きルーバーが設けられており、リアまわりにも見どころが満載です。キャブレターのエアフィルターボックスを収めるために一段高くなっている2列の角形セクションも、リアビューにおける特徴のひとつとなっています。

子どもの頃に憧れたビービーは“ベルリネッタ・ボクサー”?

 365GT/4BBに標準装備されていたホイールは、シルバー仕上げの星形5本スポークの軽合金製で、センターハブにノックオフ式スピンナーで固定されています。内側には大径のベンチレーテッド・ディスクがあり、サーボアシスト付きのブレーキは油圧回路を2系統に分けています。

 4輪独立サスペンションは、ダブルウィッシュボーン/コイルスプリング/油圧ダンパーという構成で、リアにはコイル/ダンパーユニットが1輪につき2本ずつ装備されています。さらに、前後にアンチロールバーも備わっています。

 テールライトは3連丸型ユニットが一段奥まったメッシュパネル内に配置されており、これは365GTC/4に準じた処理です。その下には、クロームメッキ仕上げの小径エキゾースト・テールパイプが左右3本ずつ配置され、独自のリアビューを形成しています。

 365GT/4BBは、フェラーリの市販車として初めてスペースセーバー・スペアタイヤを採用したモデルでもあり、収納場所はフロントリッド下のくぼみとなっています。ただし、ノーズが薄いため、タイヤを積むとラゲッジスペースはほとんど残りません。

 マテリアル面では、ドアと前後リッドパネルがアルミ製、キャビンのフレームがスチール製、ノーズ下部とテールセクションはグラスファイバー製という構成です。また、ウィンドウシールドが寝ている関係で、上端部には着色ストリップが貼られており、そこにはラジオアンテナが埋め込まれています。

 当時の子どもたちは365GT/4BBを「ビービー」と呼んで親しんでいましたが、そのモデル名はフェラーリの命名慣例に基づいています。365は1気筒あたりの排気量、4はカムシャフトの数、BBは“ベルリネッタ・ボクサー”を意味しています。

 総排気量4390ccを誇るエンジンの社内コードネームはティーポF102AB000で、各バンクあたり2基のトリプルチョーク・ウェーバー40IF3Cキャブレターが装着されていました。

 ボア×ストロークは81mm×71mmで、ベルト駆動の水平対向12気筒エンジンは、フェラーリの市販車としては初の構成でしたが、365GT/4BBのパワーユニットは180°V型と呼ぶべきピストンの動きをしていました。大人になってから分かったことですが、一説によると向かい合うピストンの動きをボクシングのパンチになぞらえてベルリネッタ・ボクサー(BB)と呼ぶのだそうです。

 エンジンは5速トランスミッションと一体で縦置きに搭載されており、潤滑方式はウェットサンプ式となっています。トランスミッションはクランクケースの下部に収まり、エンジンとギアボックスのハウジングには一部共通の鋳造パーツが使われていますが、内部のオイル回路は完全に独立しています。

 公称最高出力は380馬力とされていましたが、実際にはそこまでのパワーはなく、302km/hという最高速度もブラフだった可能性が高いといわれています。とはいえ、当時の子どもたちにとって大切だったのは実測値ではなく、「カウンタックLP400よりも速い!」とアナウンスされたことが大切だったのです。本当にイイ時代だったといえます。

 現オーナーのEさんは、高校時代は2輪(主にヤマハの2スト)に熱中していたそうです。大学に進学してからはクルマを運転するようになり、旧いオープンカーへと興味が移行。最初に検討したのは「MG B」をはじめとする英国車でしたが、結局、趣味系自動車専門誌のバザール欄で見つけた黒いアルファロメオ「スパイダー(シリーズ3)」を購入しました。

 スパイダーではキャブ調整なども楽しんでいたそうですが、故障をきっかけに手放し、次はプジョー「306」のMTを新車で購入。これもお気に入りだったそうですが、さらに刺激を求めて1999年に赤いアルファロメオ「スパイダー(シリーズ1)」へ乗り換えたそうです。

 “デュエット”の愛称で知られるこの赤いスパイダーで、当時のインポーターが主催していたムゼオ・アルファロメオ系ツーリング・イベントなどにも参加していたEさんは、デュエットに10年ほど乗り続け、40歳になる前にフェラーリ購入を決意しました。

 本当は、いきなりBBシリーズが欲しかったそうですが、最初のフェラーリとして選んだのはMT仕様の「F355ベルリネッタ」でした。F355を愛用しながらも512ではなく365にこだわってBBを探し続け、ようやく2012年に運よく極上モノの365GT/4BBと出会い、購入に至ったといいます。情熱がハンパないので、Eさんの充実したBBライフは、これからも長きにわたって続いていくことになりそうです。

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みんなのコメント

49件
  • the********
    この頃本当に速かったのは、930ターボ
  • konsuke1188z
    当時、カウンタック派。
    フェラーリ、365も512も違いはわかるけど、
    どっちがいいとかはなく、
    世間的に512のほうが人気あった記憶。
    365にこだわったあたり、
    BBのマニアかなと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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