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BYDの更なる一手は欧州獲り!? ドルフィンサーフの投入で小型EVバトルはどうなる?

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BYDの更なる一手は欧州獲り!? ドルフィンサーフの投入で小型EVバトルはどうなる?

BYDのコンパクトカーが欧州で発売

BYDは、待望されていたコンパクトEV「ドルフィンサーフ」を発売しました。2万ユーロ以下というコスト競争力を実現することで、欧州でもっとも安価なEVのひとつとして欧州へのプレゼンスをさらに高めようとしています。

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まず、BYDの欧州市場における最新動向について、このグラフはBYDの2025年シーズンにおける車種別の月間登録台数の変遷を示したものです。BYDは着々と販売台数を伸ばしており、直近の4月は欧州で1.2万台超を販売。欧州全体の登録台数に占めるBYDのマーケットシェア率は1.16%と史上最高を更新しており、欧州におけるBYDのプレゼンスが高まっている状況です。

とくにBYDの需要急増にもっとも大きく貢献しているのがシールU(中国市場ではSong Plus、グローバルサウスにおいてはシーライオン6として発売)というミッドサイズSUVの存在です。シールUはBEVとともにPHEVもラインアップし、PHEVの販売台数が大半を占めています。実際に4月のシールUのPHEVバージョンの登録台数は5294台であり、これはBYDの登録台数全体のうちの42.3%に相当します。

PHEVは、BYDだけでなくその他の中国勢も欧州にこぞってラインアップを拡大中です。4月における中国勢のPHEV登録台数は9649台であり、これは前年比で546%という急成長です。これは欧州で売れたPHEVの販売総数の10%が中国製であることを意味します。

欧州は、中国製EVに対する追加関税措置を課しているものの、この対象はあくまでもBEVであり、PHEVは基本関税の10%で済むのです。よってBYDは、追加関税措置の影響による短期的な販売鈍化を回避するために、シールUを筆頭とするPHEVの販売にも同時に注力してきているわけです。

そしてBYDは、2025年末までにハンガリーの車両生産工場の稼働をスタートさせます。さらに、2026年前半にはトルコ工場の稼働もスタート予定であり、これらの欧州域内における現地工場が稼働することによって、BYDは現在PHEVに対する10%の関税、そしてBEVに対する27%の関税を回避することが可能となります。よって、その分だけ車両の値段設定を安価にすることが可能となるのです。

そして、BYDが欧州に投入した新型モデルがドルフィンサーフです。ドルフィンサーフは、中国市場でシーガル、グローバルサウスではドルフィンミニと命名されて発売中です。ドルフィンサーフは、全長3990mm、全幅1720mm、全高1590mm、ホイールベースが2500mmというコンパクトカーです。たとえば全長3950mm、全幅1965mmのトヨタ・ヤリス、全長4045mm、全幅1695mmの日産ノートと同じようなサイズ感で、日本でも扱いやすいサイズとなります。

ドルフィンサーフは2種類のバッテリー容量と2種類のモーターを組み合わせた3グレード展開です。とくにエントリーグレード「Active」は30kWhという控えめなバッテリー容量ながら、WLTPサイクルに基づくWLTCモードクラス3で220kmという航続距離を確保。中級グレードであるBoostには43.2kWhが搭載され、322kmという航続距離を実現しています。

また、充電性能について、じつは中国市場におけるシーガルでは、30.08kWhと38.88kWhという2種類の電池容量をラインアップしているものの、シーガルの30.08kWh搭載グレードは、最大30kWの急速充電にしか対応していません。ところがドルフィンサーフの30kWhでは最大65kWの急速充電に対応しており、中国仕様の倍の充電性能を実現しているのです。また、ドルフィンサーフは、11kWの普通充電とともに3.3kWのV2L機能も標準設定しており、EVの使い方を広げる優れた性能となっています。

今後どこまで値下げできるかに注目

また、最小回転半径は4.95mと小まわり性能に優れていながら、トランク容量も300リットルを超えており、4人乗りのコンパクトカーとしては必要にして十分な収納スペースも確保しています。そして肝心の値段設定について、エントリーグレードが2万2990ユーロ、日本円に換算して約373万円からという競争力のある値段を実現しました。というのも欧州市場では、2.5万ユーロ以下というのがひとつのベンチマークになっており、2.5万ユーロ以内のコンパクトEVの競合車種が増えつつあるのです。ドルフィンサーフを6月末までに注文した場合、初回限定価格として1万9990ユーロ、約324万円からという安値すら実現。BYDは欧州市場でのドルフィンサーフの月間販売目標を1万台に設定しており、その販売台数に注目です。

それでは、現在の欧州市場で急速に販売台数が上昇している2.5万ユーロ級の安価なコンパクトEVと比較して、今回のドルフィンサーフがどれほどのコスト競争力を実現しているのかを簡単に比較していきましょう。今回チョイスしているのがヒョンデ・インスター、ルノー5、そしてシトロエンe-C3です。どれも全長4000mm以下(シトロエンe-C3除く)と非常にコンパクトです。

ドルフィンサーフのみ30kWhであるものの、競合EVは40kWh級の電池を搭載して航続距離も300km以上を確保。パワーは100kW以下のモーターとやや非力でリヤサスペンションもトーションビームを採用するなど、ドルフィンサーフはエントリーグレードとしてはもっとも安価な値段設定を実現しています。

とはいうものの、バッテリー容量がドルフィンサーフの中級グレードの43.2kWhで合わせると、ドルフィンサーフは2万6990ユーロと、むしろ競合EVよりも高価となります。確かにドルフィンサーフにはV2L機能やビーガンレザーの電動シート調整機能、ヒートポンプシステム、レベル2ADASなど、装備内容が競合と比較しても充実していますが、割高に感じるユーザーも少なくないでしょう。

しかしながら、このドルフィンサーフについて押さえるべき重要な点が、27%もの関税を踏まえた値段設定であるという点です。たとえばルノー5とe-C3は欧州で生産されており関税はゼロ。インスターも韓国から輸入されており基本関税の10%で済んでいます。ドルフィンサーフは27%という高い関税率によって不利な状況に追いやられてしまっているのです。

はたして年内に稼働するハンガリー工場が稼働し始めた段階で、ドルフィンサーフをどこまで値下げすることができるのかが、このモデルの成功を占う上でもっとも重要なのです。

このようにして、現在欧州市場において急速にシェアを拡大しているBYDが、満を持して投入してきたドルフィンサーフは、充実した標準装備内容を含めたコストパフォーマンスの高さによって、これまで以上のシェアを獲得しようとしいます。ひと足早く発売したヒョンデ・インスター、ルノー5、シトロエンe-C3というコンパクトEVと競合しながら、欧州市場におけるEVシフトがさらに進んでいくことにも期待できそうです。

また、この2.5万ユーロ級のコンパクトEVのカテゴリーには、ルノー5の兄弟車である日産マイクラやトヨタ・アーバンクルーザー、スズキe VITARAなども投入される予定です。

これらの存在によって、2025年シーズン以降、踊り場を迎えていた欧州EV市場がどれほどの速度でEVシフトしていくのか。欧州の動向からも目が離せません。

文:THE EV TIMES 高橋 優

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みんなのコメント

19件
  • NAS********
    日本獲りはどうなったん?
  • h_s********
    ある意味BYDの戦略は合っていると思う。

    欧州のBEVはカンパニーカーが多い、充電量が少なくても通勤には問題ないレベルなら、安い車で良いんじゃないか?
    と、会社が考えても不思議はない。

    後は従業員がどれだけ受け入れるかだが、今の欧州はウクライナ戦争とかもあり不景気だから納得せざるを得ないんじゃないかな?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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