■大型トラック高速80キロ規制の見直しを検討開始
2023年7月26日、警察庁は「高速道路における車種別の最高速度の在り方に関する有識者検討会(以下、検討会)」の第1回を開催しました。
「ヘッドライト眩しすぎ、ブレーキランプ点けすぎ」もう少しどうにかならない?モヤッとする他車の運転あるある
検討会で討議されたのは、大型トラックや車両総重量8トン以上の中型トラックなど(以下、大型トラック)の最高速度を、現行法の時速80キロから引き上げるか否か。基本的には引き上げを前提に検討しているようですが、結論はまだ出ていません。
なぜいま最高速度を見直すのか
大型トラック高速80キロ規制見直しの背景には、物流業界の「2024年問題」があります。2024年問題の要点は次のとおり。
・2024年4月から運送業務の残業時間が年960時間までに規制される
・規制によりトラックの輸送能力が不足する
・納品遅延、小売店の商品不足、ECサイトのサービス低下などが起こる
一部の運送会社では年960時間以上の時間外労働が常態化しており、昨今の人手不足もあって、2024年4月にはじまる規制により輸送能力が不足すると懸念されています。
2024年問題の解決には物流の効率化が必須。そこで対策の1つとして、大型トラック高速80キロ規制の見直しが検討されている……というわけです。
■規制見直しで問題は解決する?
大型トラックの速度規制について、全日本トラック協会では10年以上前から見直しを要望していました。
高速道路に最高速度100キロ超の区間が増えている昨今、2024問題がきっかけとはいえ、規制見直しが検討されることは時流に適っています。
ただ気になるのは、規制緩和の効果のほど。大型トラックが時速90~100キロで走れるようになったとして、2024年問題の解決にどれほど役立つのでしょうか。規制緩和による事故増加も懸念されます。
■トラックドライバーに長距離運送の現状や課題を聞いてみた
長距離運送の現状や課題について、当事者はどのように感じているのか。リアルな話を聞くために、筆者の友人でトラックドライバーのN氏に4つの質問をしてみました。N氏の回答を順番に見ていきましょう。
【Q1】大型トラックでの高速道路の走行に問題点はある?
【N氏の回答】大型トラックにはリミッターが付いているから、どの車も時速80キロで走っている。トラック同士の並走で車線を塞いでしまうことも多いから、普通車のドライバーに迷惑をかけているかもしれない。
ちなみに、ドライバーの中には何らかの方法でリミッター解除しているヤツもいる。ただ、80キロ以上で走っても、ほかのドライバーにバレて通報されるのがオチ。抜け駆けはできないね。
【Q2】80キロ規制見直しで労働環境は改善すると思う?
【N氏の回答】最高速度が上がれば到着時間が早まって助かる。関西~関東の運行なら1時間は短縮できるし、浮いた時間で休憩できるようになるな。
ただ、いまの大型トラックは現行の最高速度を前提につくられているから、スピードアップは安全面に不安を感じる。荷物満載のトラックで90~100キロ出すのはちょっと怖いな。
それと、一部の運送会社はボロボロの車両を使っているから、スピードが上がるとかなり危険だろうな。「走行中にホイールが割れた」なんて話も聞くからね。無条件に規制緩和するのはどうかと思うな。
【Q3】80キロ規制見直しで運送業務は効率化されると思う?
【N氏の回答】最高速度アップである程度の効率化はできるだろうな。ただ、効率を上げにくい部分もある。
たとえば、深夜に高速を走るときは、深夜割引き狙いで0時ジャストに料金所を通過するように時間調整している。経費節約しつつ、他社より先に配送先に着きたいからね。
そういう時間調整もあるから、車速が上がればいいってもんでもない。ちなみに、深夜のSAやPAが混んでいるのは時間調整のトラックが多いからだ。SA・PAに停められず路肩で時間調整しているヤツもいる。違法だけどね。
【Q4】運送業界の人手は不足している?
【N氏の回答】ドライバーは減っているし、特に若いヤツは少ないな。まあ、40代以上で運送業界に入ってくる新人ならいるよ。借金があるとか事業に失敗したとか、何らかの事情ありで参入する人は多いね。
ただ、そういう新人がトラックの運転に不向きで事故を起こすこともある。人手不足は深刻だけど、誰でも続けられる甘い業界でもない。そんな感じだから、これからも人材確保には悩まされるだろうな。
■物流業界の抱える問題、多すぎない?
上記のほかにも、コンビニ弁当中心の食生活になりやすい、シャワーを毎日は浴びられない、といった運送業界の問題点をN氏は語ってくれました。
こうした実情を知ると、業界が人手不足になるのも仕方ないように思えてきます。……というか、物流業界の問題ちょっと多すぎでは?
大型トラックの高速80キロ規制見直しが実現すれば、長距離ドライバーの労働環境も少しは改善されそうです。ただ、その効果は限定的で、2024年問題を含めた多数の課題解決には、より多彩な対策が必要だと考えられます。
大型トラックの走行速度や、長距離ドライバーの労働環境は、私たち消費者の暮らしと無関係ではありません。高速80キロ規制は見直されるのか、2024年問題は解決するのか、今後の展開に注目しましょう。
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みんなのコメント
ドライバーにどれだけ命を懸けて走らせているつもりなのか。そんな事よりも、給料改定させれば人手不足も解消されると思いますよ? 昔は稼げたかも知れないけど、今のトラック乗りの給料なんて時給換算すると900円にも満たないと思います。
変わりません!
何で速度規制をしたのか?ドライバーの事故が多くなったので規制したのに、何で見直すのか?
労働時間を短縮するのに速度を上げる?
馬鹿な政治家の考えですよね~専門家と言われる人達も何も思わないのですかね?
後、すべての会社が高速を利用出来るわけでないので意味が無いのです!
もっと違う観点から考えられないのですかね?
給料を上げる様に出来れば、少なくとも人員不足の解決に近付けると思います!
本当の解決策は、実際に働いているドライバーに聞くのが1番だと思います!
政治家や数年ドライバーしただけの専門家と言う人達にはわからないのです!
もっと真艫な解決方法をしないと時間が無いですよ!