クルマのデザインや雰囲気は、その時代の空気を色濃く映し出すものです。ボディカラーの配色、デザインの流儀、内装の質感に至るまで、流行や経済の変化とともにクルマも姿を変えてきました。そこで今回は、長年にわたって時代と歩んできたトヨタ・カムリを取り上げ、平成元年(1989年)と令和元年(2019年)の2つの「元年モデル」を比較しながら、日本の変化を振り返ってみたいと思います。今後逆輸入が予想されるカムリは、どのような歴史を辿ってきたのでしょうか。
文:佐々木 亘/画像:ベストカーWeb編集部、トヨタ
【画像ギャラリー】スポーティさと上質さが心地いい!! トヨタ カムリは大人なセダン!(26枚)
バブルが生んだ上質なセダン! 平成元年のカムリ
平成元年のカムリは、セリカカムリから数えて3代目にあたります。前年にマイナーチェンジを実施し、プロミネントシリーズに4ドアハードトップを追加。1.8Lエンジンのハイメカツインカム化も行われ、熟成の進んだ一台として登場しました。
当時のカムリは5ナンバーセダンで、ボディサイズは全長4520×全幅1690×全高1395、ホイールベースは2600。パワートレインは2.0Lと1.8Lのガソリンエンジン、さらに2.0Lのターボディーゼルが設定され、トランスミッションは4ATと5MTという組み合わせです。
デザイン面では、曲面を巧みに活かした柔らかな造形が印象的です。一見まっすぐに見えるボディも角は丸く処理され、パネル面にも絶妙なアールが与えられています。6ライトキャビンが高級サルーンの風格を演出し、当時としては先進的なデジタルメーターも採用されていました。
経済成長とバブル景気の真っただ中に誕生したこのカムリは、カムリ史上もっとも高級志向の強い一台だったと言えるかもしれません。時代の豊かさを反映した、おおらかで上質な雰囲気が全体に漂っています。
逆風に立ち向かうスポーティセダン! 令和元年のカムリ
一方、令和元年のカムリはセリカカムリから数えて10代目。前年に新グレード「WS(Worldwide&Sporty)」が追加され、上質感と力強さを融合させたスポーティセダンという新たな顔も持つようになりました。
ボディサイズは全長4910×全幅1840×全高1445×ホイールベース2825mmと、平成モデルと比べて大幅に拡大しています。パワートレインは2.5Lダイナミックフォースエンジンにハイブリッドシステム「THSII」を組み合わせたもので、時代の要請に応えた環境性能と走りの両立が図られました。
インテリアはもはや「運転席」ではなく「コクピット」と表現したくなるほど前衛的な造りで、高級感を維持しながらも力強い個性が際立ちます。エクステリアデザインにも優しさよりは力強さが前面に出ており、平成モデルとは明らかに異なる方向性を打ち出しているのです。
マークXが国内市場から姿を消し、日本のセダン文化を背負う立場となったカムリは、存在感を高めることで生き残りを図りました。かつて無味無臭とも言えた控えめなキャラクターが、令和では非常に濃い個性を持つモデルへと変貌を遂げたのです。
ボディカラーが物語る、時代の空気
興味深いのは、どちらの元年モデルもボディカラーのメインバリエーションが7色で、落ち着いた色調が中心である点です。しかし、赤や青の色味を見比べると、時代の違いが鮮明に浮かび上がります。
平成モデルはダークレッドマイカとブルーマイカという、深みのある落ち着いた色調。対して令和モデルはエモーショナルレッドとダークブルーマイカメタリックと、明らかに発色が良く、生き生きとした印象です。
「経済が好調な時代には落ち着いた色のクルマが売れ、世の中に元気がなくなるとビビットな色のクルマが売れる」とよく言われますが、この2台を見比べると、その言葉の意味が実感を持って理解できます。
次に生まれるカムリへの期待
平成初期、カムリのようなクルマに強烈な個性はあまり求められていませんでした。主役はあくまでユーザーであり、クルマは生活や風景に自然と溶け込む存在であることが美徳とされていた時代です。目立ちすぎず、周囲に合わせることがカムリの流儀だったのでしょう。
それが令和になると、個性こそが価値となりました。沈みゆく時代の中で、クルマには高揚感が求められたのかもしれません。
時代とともに変化を遂げてきたカムリの歩みは、日本社会の変遷そのものを映し出しています。次に日本で販売されるカムリは、逆輸入元年のモデル。セダン人気が低調な中、新しいカムリは、どのような風を日本に巻き起こしてくれるのか、非常に楽しみです。
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みんなのコメント
逆輸入されたことがあったな。