フランツ・トストが今季限りでアルファタウリのチーム代表を辞し、現在フェラーリでスポーティング・ディレクターを務めるローレン・メキーズがその後任となることが明らかにされた。このことは、同じイタリアに拠点を置くフェラーリを、大いに悩ませることになりそうだ。
トストは、レッドブルがミナルディを買収したことで誕生したトロロッソのチーム代表を2006年から務め、チームの名称がアルファタウリと変わった後も、同職を務めてきた。しかし今シーズンの同チームは大不振に陥っており、厳しい立場に立たされていた。今回の退任劇は、チームの不調とは無関係ではないだろう。
■アルファタウリF1、フランツ・トストの今季限りでの代表退任を発表。後任にはフェラーリからローレン・メキーズ
そのトストの後任として、チームの立て直しを任される形となったのがメキーズだ。メキーズは現在フェラーリのスポーティング・ディレクターを務めているが、それ以前はFIAのF1副レースディレクターを務め、さらにそれ以前はトロロッソに在籍し、レースエンジニアなどを歴任してきた人物である。
メキーズのチーム代表就任により、アルファタウリとしては新しい時代を迎えることになる。しかしこの人事は、アルファタウリよりもフェラーリの方に大きな影響を与える可能性がある。
フェラーリは今季、レッドブルに負け続けている状況。ここから立ち直るためには、メキーズの存在は大変重要だったはずだ。そんな中で重要な人物を失ったことは、理想とは程遠い。フェラーリは、今年はじめに経験豊富なエンジニアであるデビッド・サンチェスを失ったばかり。今季からチーム代表になったフレデリック・バスールとしては、頭を悩ませる日々が続いている。
多くの重要人物が離脱しているフェラーリ。たとえサンチェスとメキーズの離脱が無関係だったとしても、印象は非常に悪い。今季開幕から好調な走りを見せ、さらにチーム力を強化しようと人員を集めているアストンマーチンとは対照的である。
メキーズのフェラーリ離脱の噂は、ほんの数週間前に持ち上がったばかり。当時バスールは、メキーズは重要な右腕であることを次のように強調していた。確かに、メキーズがそのままフェラーリに残っていれば、将来のチーム代表を務める有力候補になっていただろう。ただメキーズやサンチェス以外のスタッフの間にも、不満が渦巻いているという話がある。
「不満に思っている人がいる時、それはふたつの異なることがある。期待した結果が得られなかった時に、不満に思うのはごく普通のことだと思う。そして、私は不満を抱えている」
「しかし最も重要なことは、グループとして働くこと、チームとして働くこと、そしてそれを最大限に活用して改善を試みることだ。会社を辞めるというのは、また別の話なんだ」
「ローランについて聞きたいのなら、私は彼に何が起きたのかは知らない。しかし、私は彼のことを25年も前から知っている。彼が学生だった時からだ」
「私は彼のことを大いに信頼している。非常に良い協力関係を築いていると思うし、彼は将来、この会社の柱のひとつになるだろう」
離脱が続いていることは、フェラーリにとって悪いニュースであることは間違いない。しかし同様に、このことがフェラーリに致命的な打撃を及ぼすと考えるのは間違っているとも言える。
先に離脱したサンチェスは、前チーム代表のマッティア・ビノットに非常に近い人物であった。しかも、レッドブルに全く太刀打ちできないSF-23を作り出したひとり。メキーズの離脱とは状況が大きく異なるわけだ。
しかしそれでも、チーム代表としてのバスールの資質が試されるのは、重要人物の流出を、メキーズを最後に食い止めることができるかどうかという点にあるだろう。そしてこれまでの自身の経験を活かし、チームの全員が正しい方向を向くようにする……それがバスールに求められることだ。
バスール代表のことをよく知る人物は、彼は熱意を失っておらず、状況を好転させるために必要な行動を取る手段を持っているはずだと言う。
もちろん、そのために重要なのはコース上でのパフォーマンスだ。シャルル・ルクレールとカルロス・サインツJr.の順位に進歩の兆しが見られれば、それがチームの流れを変える最大の要因となろう。
SF-23は、ここまではうまくいっていないものの、決して酷いマシンではない。予選パフォーマンスではレッドブルに近づいており、オーストラリアででのレースペースも、いくらか励みになるものだった。バスールはチームをまとめ上げるためにも、自身の信念が正しいと証明するために、さらに飛躍する必要がある。
そういう結果が出てくれば、雑音は一気に消えてなくなるはずだ。
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スポーティングデレクター・・・w