報道」が信頼されなくなった根因
かつては新聞やテレビ、ラジオが情報発信の中核だったが、現在はインターネットやSNSによる情報氾濫の時代となっている。自動車メディアでは業界動向や新モデルの話題が多く扱われるが、その多くは企業が発信する情報に依存し、独自の視点や批判が乏しい。
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こうした状況に対しては、内容の定性的欠如や報道構造の設計思想に根ざした問題が指摘されている。情報が飽和するなか、読者のニュースに対する動機は薄れている。これは偶然の結果ではなく、もはや必然的に生じた構造的な課題と言える。
本稿では自動車メディアの立ち位置を改めて見直し、報道が退屈かつ信頼されなくなった根本原因を掘り下げるとともに、再設計の方向性を探る。
レビューが失った感動と情熱
筆者(鳥谷定、自動車ジャーナリスト)は小学生時代から自動車雑誌を熱心に読み、父の影響で家には数多くの自動車関連書籍があった。
ある雑誌には、当時あまり目にしなかった外車や新車の詳細なレビューが載っており、その写真や文章から車内の雰囲気や乗り心地を想像する楽しみがあった。運転経験がなかったにもかかわらず、レビューを読むうちに高揚感が生まれ、実際に乗ってみたいという純粋な願望を抱いた記憶は今なお鮮明だ。
本来、試乗レビューはこうした感動や情熱を呼び起こすべきである。スペック紹介は重要だが、車の魅力を伝えることが不可欠だ。感情を引き出せなければ単なる商品説明に留まり、ネット検索で得られる情報との差別化もできない。
レビューの執筆者には、その車の特徴や開発意図を読者に届ける責任がある。こうした視点が欠落したレビューを見るたびに、かつての自動車雑誌に胸を躍らせた日々が懐かしく思い起こされる。今後のレビューには、読者の心に届く「語り」が求められている。
タイトル先行による読者離れ
ネットニュースは長文が最後まで読まれにくいため、要点を絞り簡潔にすることが求められる。しかし、その結果として内容が薄まり、形骸化する問題が生じている。
「読んでも意味がない」
「同じ内容の繰り返し」
といった批判が相次ぎ、ニュースを読む動機は失われつつある。
ネットニュースはタイトルで読者の興味を引き、本文を読ませる工夫が不可欠だが、タイトルで内容の大半を明かし、本文を読む必要性を奪う傾向が強い。これにより、読了意欲を失わせる場合も少なくない。
また、各メディアのSNSアカウントでのニュースシェアは断片的な情報提供を前提とし、文脈の理解を妨げている。
さらに、タイトルと本文の内容が噛み合わず構造的に乖離するニュースも散見される。編集意図が不明瞭なまま表層的な断片情報が流通し、視点や意見を欠いた「ニュースのようなもの」が溢れている。
このように、自動車メディアは読者との距離を生み、信頼と関心を損ねてしまったと言えるだろう。
提灯記事の蔓延と実態
多くのメディアは、企業のプレスリリースや広報資料を主要な情報源としている。それらの二次利用が、事実上の報道の主流となっているのが現状だ。現場での取材よりも、リリースや会見の書き起こしが記事の素材として優先されている。独自の視点や対立軸を欠いたまま、情報を流し続けるメディアも少なくない。
なかには、特定の権力者を持ち上げる記事を繰り返し掲載するメディアも存在する。こうした傾向に対しては、同社グループの元関係者と見られる人物からも過度な礼賛や報道の独立性の喪失を危惧する声がネット上に寄せられている。
企業が提供する情報への特権的なアクセスは、ごく一部のメディアに集中している。こうした構図は、実質的なバーター関係を生む土壌となっている。いわゆる
「提灯記事」
が生まれる背景には、こうしたアクセス依存型の編集方針がある。
特定のメディアに対しては、事前公開や独占コメントが与えられる。その見返りとして、企業側は好意的な報道を期待する。主従関係ともいえるこの構造のもとで、自動車メディアは企業情報をそのまま流す存在に堕している。
とくに電気自動車(EV)関連の報道では、この傾向が顕著だ。表向きは多くの報道が存在するように見えるが、実際の論調は均質で、異論や多様な視点はほとんど見られない。
さらに問題なのは、メディアが政策誘導に追従することである。EVがあたかも「唯一の正解」として扱われる構図が生まれつつある。異なる意見や批判的視点が排除され、読者が思考する余地を奪われるリスクが高まっている。
速報優先で失われる深掘り
ネットニュースのアクセスランキング上位には「新型車のレビュー」が多いが、多くはメーカー発表のプレスリリースを踏まえた再構成にとどまり、開発意図や製品の社会的意味には踏み込んでいない。
単にスペックや仕様を整理するだけでは、その車がなぜ今必要なのかという本質的な疑問に答えられない。社会インフラとしての自動車の位置づけや生活環境、交通政策との接続点を明らかにする役割がレビューには求められている。
しかし、多くのメディアが速報性やアクセス数重視の方針を採り、視認性の高いスペックや外観中心の内容を量産する傾向がある。これが内容の均質化を招き、「読まれても理解されない」情報の流通を常態化させている。
また、記者と企業間にある
「無言の前提」
も問題だ。企業に不利益となる論点を避ける選択的沈黙が慣習化し、露骨な迎合を避けつつも、批判的視点の後退を招いている。結果として、
「メーカー提供情報をなぞるだけの記事」
が散見され、報道の意義が後回しにされる。企業も限定的な情報提供を続け、質問や検証が制限されるため、独自の視点や問いかけが後景化している。
自動車報道に最も欠けているのは「理解の前提」である。社会的背景や制度的枠組みから切り離された製品議論は、情報の量はあっても意味を欠く。読者の関心は「何が新しいか」ではなく
「なぜ今必要なのか」
にある。ここに答えなければレビューは単なる案内に終わる。
語らぬメディアの限界
視点の明示されないニュースが氾濫することは、読者に混乱をもたらす。メディアが対象読者層を曖昧にしたままでは、
「誰にでも刺さる記事が正しい」
という幻想が続き、結果として誰にも届かない記事が大量に生まれてしまう。
本来、自動車メディアに求められるのは、自動車産業と日常生活、関連政策をつなぐ役割である。これが欠ければ、読者の「買う・使う・移動する」という立場と、企業の「生産・企画・投資」という論点は接続されない。世に流通しているのは、まだ処理されていない素材に過ぎない情報だ。
メディアへの信頼喪失は、読者不在の設計思想崩壊に起因すると考えられる。情報は本来、構造を説明する手段であるべきだ。単なる事実の羅列では届かず、因果関係や対立構造、意図や異論も求められる。
自動車メディアが再び存在感を示すには、「語る意思」を前面に打ち出し、企業側の「語らせない力」も可視化する必要がある。従来の業界慣習や黙契構造に対峙する再設計が不可欠だ。
メディア自立の喪失危機
現状、メディアでは企業側の論理に基づく「伝えたい情報」だけが流通し、メディア自身も企業提供以外の視点を持たず、「ニュースのようなもの」が溢れている。
この問題の根底にはメディアと企業の相互依存がある。片方の責任ではなく、「両者の構造的な依存と怠慢」と捉えるべきだ。相互依存から脱却し、メディアがニュースとしての自立性を確立しなければ、現状を変えることは難しい。
自動車メディアが社会的意義を再び獲得するには、自らの発信力を築くことが必要だ。その再構築なしに、読者の心に届くニュースは送り続けられない。
本稿を読む長年の自動車ファンであるあなたは、どのように感じるだろうか。(鳥谷定(自動車ジャーナリスト))
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