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【ヒットの法則99】初代ケイマンSはボクスター以上の人車一体感と911以上の軽快な身のこなし

2005年のフランクフルト・モーターショーでついにその姿を現したケイマン。ミッドシップスポーツカーの走りはどういうものか。ボクスター、911とはどう違うのか。大きな注目が集まる中、デビュー早々にイタリアで国際試乗会が行われている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年11月号より)

大いなる魅力を放つクーペならではの美姿
待ちに待ったポルシェケイマンSの国際試乗会。それは、このモデルが初めて一般に公開されたフランクフルトモーターショーのまだ会期中というタイミングに、イタリアはシエナでの開催となった。最寄りのフィレンツェ空港からアウトストラーダを送迎シャトルに揺られること1時間と少し。中世の小さな村をそっくりリファインした、この地方の歴史を感じさせるリゾートホテルが今回の試乗会の拠点であった。

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レセプションでキーを受け取り、自らの部屋へと一歩足を踏み入れるとテーブルの上には何と全長50cmほどの可愛いワニのぬいぐるみが! ちなみに、中南米産のワニを示す「cayman」というこの綴りを、ポルシェ本社のスタッフたちは自国(ドイツ)語モードの会話では「カイマン」と発音する。もっとも、マーケティング上は全世界の市場で『ケイマン』で統一することになるという。「小型で俊敏な動きをするところが、このクルマのキャラクターにぴったり」と、その名の由来をポルシェ本社のPRスタッフは教えてくれた。

フランクフルトのショー会場では、メルセデス・ベンツの新型SクラスやアウディQ7などとともにショーの主役の1台となったケイマン。そんなショーモデルの印象に比べると、ホテルの敷地内にある広場で再度の対面となった自然光の下でのこのクルマは、ぼくには多少印象が異なって見えた。

中でも、リアのフェンダー上部から「120km/hになると80mmほど上方に伸びる」という可動ロジックを備えるダックテール調リアスポイラー部分へと続くパネルのうねりの具合は、ショー会場で目にしたそれよりもグンとシャープでメリハリが効いた印象。そんな雰囲気の違いは、様々な方向からのライティングで陰影が消されがちなショー会場の展示に対し、太陽という天然の照明によって照らされるところにも起因しているのかも知れない。ボクスターと基本デザインを共有するもう見慣れたフロントセクションよりも、ぼくはそんなこのクルマのリアセクションの造形により大きな魅力を感じることになった。

インテリアのデザインは、基本的にはやはりボクスターのそれと共通だ。メーターフード上に新たな金属メッシュが採用されるといったディテールの違いは存在するものの、ドライバーズシートに収まり前方に目を向ける限り、そこに広がる風景は「ボクスターと同様」ということになる。ちなみに、ルームミラーを通しての後方視界も含め、前後左右への視界の広がりは十分に大きい。同じクーペとは言え、例えばアウディTTのそれなどより遥かに開放的なのがこのクルマのキャビンの印象。

当然ながらそのドライビングポジションもボクスターと同様だ。テレスコピックに加えてチルト調節機能も加わったステリアングコラムの採用により、体型にかかわらず誰もが簡単に理想のポジションを見つけ出せるというのも、ボクスターと同じコメントになる。

ところで、ケイマンのラゲッジスペースの充実ぶりは、他の2シーターモデルの追随を許さない。ボクスター/911と同じ150Lの容量のフロントトランクに加え、巨大なハッチゲートの下には上下ステップ状にトータル260Lのスペースを用意。すなわち合計では410Lというちょっとしたセダン並の空間を得ることができるという計算だ。

実際、これらのスペースを使いこなせば、ミドルクラスのスーツケースを前後にひとつずつ楽に収容可能。個人的な経験からすると「2人が乗り込みさらにその2人分の海外旅行用の荷物を積み込む」というのは、大半の2シーターモデルにとっては相当に厳しいタスクであるもの。しかし、エンジン部分の日常的なメンテナンスは床下側から行うデザインとし、いわゆるエンジンルームを封印してしまうことでこうしたユーティリティ性を実現させたケイマンのレイアウトは、実はそれ自体が「画期的」と表現できるほどに興味深いものだ。

ボクスターと911とケイマンとの境界線
今回発表されたケイマンは「S」グレードのみ。ただし、ポルシェ本社主催の国際試乗会での通例として、用意をされていたテストモデルたちには車両ごとに様々なオプションアイテムが装着されていた。

インテリアのトリムレベルやオーディオ、シート表皮の違いなど、さしあたりは走りに直接の影響を及ぼさない部分の話題はここでは割愛するとして、走りの印象記はそれら装着オプションの走りへの影響も適宜織り込みつつ、報告して行くことにしよう。

低い雲がたち込める曇り空の1日目にテストドライブを行ったのは、スポーツクロノパッケージ(PASMを含む)とPCBというオプション付きモデル1台に限られた。

1.3トン台の車両重量に3.4Lエンジンという組み合わせもあり、スタートの瞬間からさすがに太く、力強いトルク感が印象的。特に急ぐのでなければ、市街地モードでは1→3→5速といったズボラな操作でも周囲の流れには十分乗れる。

シフトフィールはもちろんボクスター同様の秀逸さ。ちなみに、アイシン製の6速MTを用いる911に対し、こちらはボクスターと同じゲトラグ製。こうしてサプライヤーを分けた理由を、パワートレーン担当エンジニア氏は「よりトルクの大きなエンジンへの対応を踏まえて歯幅などを決定したアイシン製をケイマンにも積むことは、重量などの点で得策ではないため」と回答してくれた。

アクセルペダルをさらに踏み加えてみる。と、当初は「ボクスターの、それも2.7Lバージョンの方とほぼ同じだナ」と思えていたサウンドがグンと力強く、しかも官能的な音色へと変化して行くことに気づく。特に、5200rpm付近からレッドラインの引かれた7200rpmにかけては、そのボリューム感もかなりのもの。背後から身体を包み込む力強いボクサーサウンドは、スポーツ派ドライバーには間違いなく歓迎されるに違いない。

「ボクスターS用に対して、1速2速の減速比をやや大きめへとリファインした」というトランスミッションは、1速で70km/h弱、2速で125km/hプラス、3速で160km/h……といった各ギア最高速をマーク。ちなみに6速での100km/h巡航時のエンジン回転数はおよそ2600rpm。この状態からダウンシフトを行うと5速が3000rpm、4速が3600rpm、3速が4500rpm……といったデータになる。

いずれにしても、各ギア間のつながり感はバツグン。実は今回、AT仕様に乗る機会には最後まで恵まれなかったが、前述のような秀逸なMTフィールを投げうってまで、あえてAT仕様に乗りたいという思いは、ぼくには全く浮かばなかった……。

ところで絶対的には「文句ナシ!」と評することのできるイマンSの動力性能だが、そこにはどこかに「兄貴分である911に遠慮した」という空気が感じられたのもまた事実だった。

もちろん、ケイマンSの速さは文句なしだ。エンジン回転の高まりに対してのパワーの盛り上がり感なども含め、フィーリング的にも前述のように非常に優れているのは間違いない。けれども、それでもそのような演出ぶりというのは、もしも911という兄貴分がいなければさらにシャープで派手なものになったのではないか?という思いも残る。

具体的には、3.4Lにして295psという最高出力の値は、明らかに同じ3.4Lという排気量であった996時代の911が発表していた300psという数字を意識してのものであるようにぼくには思える。

ハードウエア的にはオーバー300psを達成するのはまったくわけのないことだろう。仮に1L当たり出力を現在よりも3psほど高めた90psとすれば、この心臓が発する最高出力はおよそ305psに……。ポルシェがケイマンのリリースに際して最も恐れるのは、「911との食い合い」という現象であろう。実際、今回のケイマンSのリリースによって、これまで911に興味を示してきた顧客のいくばくかの目が、こちらに向いてしまうことは避けられないはずだ。そこで、911とケイマンの間に明確な線引きを行いたいポルシェとしては「ケイマンには300psという記号は与えない」という決断を下したのではないだろうか。事実、前出のパワートレーン担当エンジニア氏は、そんなぼくの推測に対して「確かに、295psという数字にはある程度政策的な意味が込められている」とこっそり打ち明けてくれた。

抜群のボディ剛性感と優れた乗り心地
ところで、そんなケイマンSの走りで印象的な部分。それはそのボディが生み出す剛性感の高さにもあった。

「曲げ剛性値はボクスターの2倍以上、ねじり剛性値は911のクーペに迫るレベル」と発表されたこのクルマのボディは、久々に「メタルの塊を繰り抜いてできたような」といった比喩を使いたくなる、すこぶる高い剛性感の持ち主。それゆえに、振動減衰能力の高さが優れた乗り心地を味わわせてくれることもある程度は予想がついたものの、このテスト車の場合はオプションのPCCB採用によるばね下重量の小ささとPASMによる電子制御のダンパーコントロールがそれを一層引き立ててくれた印象だ。

ちなみに、これが同じ18インチタイヤ(今回のテスト車両装着タイヤはすべてミシュランのパイロットスポーツ2)を履く仕様であっても、PCCBなし/PASMなしという組み合わせになると、やはり特に60km/h程度までの速度でのしなやかさが若干低下することを、翌日のテストドライブで知った。

一方、オプション設定19インチタイヤをチョイスすると、PASMの有無による乗り味の差は18インチの場合よりもさらに明確だ。PASM付きだと「50km/hくらいまでがちょいカタい」という感触で、PASMなしでは、それがばね下重量軽減に貢献するPCCBとの組み合わせであっても「60km/h程度までは揺すられ感が強く現れる」とそんな表現を使いたくなるものだった。

おそらくはコーナリングの絶対的な限界では19インチタイヤに軍配が上がるとは思う。が、ケイマンSとの全体的なマッチングという観点からすれば、18インチタイヤの方が総合バランスは上を行くという評価を与えたい。

ケイマンSが最も得意とするのはその自在なハンドリングの感覚だ。今回のシエナ近郊をベースとしたテストルートは、その多くの部分が日本の山岳路ともイメージがラップする、2速ギアが主体となる比較的タイトなコーナーの連続。しかもテスト2日目は朝のスタート時からヘビーウエットというコンディションだった。

しかし、そんな状況の中をケイマンSは、まさに「水を得た魚」のごとく自在に駆け回ってくれた。ミッドシップレイアウトの持ち主らしいしっかりとしたトラクション能力を基本とした上で、それにプラスされる軽快なノーズの動きの感覚は、やはりボクスターとの走りのDNAの共有をイメージさせるもの。

ただし「サスペンションのセッティングも全面的に見直した」というケイマンSのハンドリングは、ボクスターSに比べると「より低重心感が強く、路面とのコンタクト感もさらに濃厚で人車一体感がワンランク以上は上」とそんな表現をしたくなるものでもあった。

前述のようなコース設定ゆえ、今回のコーナリングスピードはせいぜい100km/h程度までの範囲に限定された。その中でいえば、いわゆるハンドリングの特性というのは「あくまでもニュートラルな感覚」。が、そうした上で意識的なアクセルワークによって積極的なコーナリングフォームを作り出して行ける懐の広さを感じさせてくれるのもこのクルマの特徴。例えばPSM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメントシステム)をオフし、アクセルワークによって車体のスリップアングルを果敢にコントロールしていくといった操作に対しても、それにしっかりと応えてくれる。

確かに、兄貴分である911(特に3.8Lモデル)に対しては、絶対的な加速力ではまだ明らかなビハインドを持ってはいる。すこぶる高いと思えるボディの剛性も、「絶対的にはまだ911クーペの方が上」というのが開発陣のコメントでもある。

しかし、このクルマには911よりも明らかに数段上と思える軽快な身のこなしという能力が備わり、ボクスターとは一線を画す走り全体の剛性感と低重心感が認められる。

あくまでも個人的な見解ではあるが、ケイマンSを食してしまった今、「自分はもうボクスターには戻れない」と、ぼくはそんな印象をハッキリ感じてしまうことになった……。(文:河村康彦/Motor Magazine 2005年11月号より)



ポルシェ ケイマンS(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4341×1801×1305mm
●ホイールベース:2415mm
●車両重量:1340kg
●エンジン:水平対向6DOHC
●排気量:3864cc
●最高出力:295ps/6250rpm
●最大トルク:340Nm/4400-6000rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:MR
※欧州仕様

[ アルバム : ポルシェ ケイマンS(2005年) はオリジナルサイトでご覧ください ]

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