現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > EV祭りで盛り上がるも課題は山積み? 今後のEV普及に必要なモノとは

ここから本文です

EV祭りで盛り上がるも課題は山積み? 今後のEV普及に必要なモノとは

掲載 更新 11
EV祭りで盛り上がるも課題は山積み? 今後のEV普及に必要なモノとは

■「電動化」という言葉が示すものとは

 昨今の自動車産業は、程度の差こそあれど、電動化に向けて大きく舵を切っています。

HV車の先駆者「プリウス」次期型はある? 全固体電池に期待が掛かる次期型の未来とは

 一方、電動化の終着点ともいえる電気自動車(EV)は、普及しないという意見もまだまだ少なくありません。これからのEVに必要なものとはなんなのでしょうか。

 近年の自動車産業のトレンドは、いうまでもなく「電動化」です。1980年代にはすでにクルマは電装部品のカタマリではありましたが、もちろんここでいう電動化とはそうした意味ではなく、原動力の電動化、つまり電気自動車(EV)化という意味です。

 電動化の意味をより広くとらえるなら、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)などの動力用電気モーターを採用しているクルマ(電動車)を増やすこと、ということもできます。

 また、逆にいえば、ガソリンや軽油といった化石燃料を動力源とする内燃機関(エンジン)をもたない、あるいはそれのみを原動力とするクルマを相対的に減らしていくということも意味しています。

 ただし、電動化や電動車という言葉のなかに含まれるのが、EVだけなのか、あるいはHVなども含むのかという点については、そのときの文脈によるので注意が必要です。

 例えば、「2030年代半ばまでに乗用車の新車販売の電動車比率を100%にすることを目指す」という報道が2020年末に話題になりました。

 2020年度時点では新車販売におけるEV比率は1%未満であり、非現実的な目標であるかのように思われますが、実際にはHVなども含む、「広い意味での電動車」であり、その基準でいえば、現時点ですでに新車販売の約37%が電動車であり、決して無謀な目標ではないことがわかります。

 このように、日本をはじめとする世界各国が電動化を後押しするような政策を提言し、それに同調するように自動車メーカーも積極的に電動車の開発を進めています。

 その背景にあるのは、もちろん環境意識の高まりという側面もありますし、日本においてはエネルギー自給率を高めるといった安全保障上の問題もあります。

 さらには、電動化を標榜することで株価を押し上げる要因になるといったような、経済金融上の狙いもあると考えられます。

 このように、なぜ世界各国が、そして世界各国の自動車メーカーが電動化を推進するのかという点については非常にさまざまな視点があるため、ここでは深く述べませんが、電動化の足音は一般の人々にも確実に聞こえつつあることは間違いないでしょう。

 一方、日常生活においてみれば、クルマの電動化がまだそれほど実感の湧くものでないこともまた事実でしょう。

 今でこそHVは主流になりつつありますが、それでも「ガソリン車よりは燃費が良い」という程度の認識というのが正直なところではないでしょうか。

 実際、ほとんどのユーザーが定期的にガソリンスタンドへ行くというスタイルは、モーターリゼーションが浸透した1960年代からそれほど変わってはいません。

 クルマにまつわるライフスタイルが大きく変わるという意味では、やはり電動化の終着点ともいえるEVに乗り換えることが必要不可欠といえます。

 現在では、日産「リーフ」やテスラ「モデルS」といったEVもすでに市販されており、かつてに比べれば、都市部においてEVを見かけることも多くなりました。

 しかし、市場全体で見れば、前述の通り、新車販売台数におけるEVの割合は1%未満であり、普及しているとはいい難いのが現状です。

 では、なにがEV普及のさまたげになっているのでしょうか。

 一般の人々にとって、EV購入のさまたげになっているのは「航続距離」と「充電環境」、そして「価格」であると考えられます。

 まず「航続距離」ですが、最量販EVであるリーフの最大航続距離はWLTCモードで458km(62kWhバッテリー搭載車)となっています。

 一方、同社のHVモデルである「ノート」のWLTCモード燃費は28.4km/Lであり、36リットルというタンク容量と掛け合わせると、単純計算で1022.4kmの航続が可能です。

 実際には、乗り方によって航続距離は大きく変化するため単純には比較できませんが、HVやガソリン車に比べて航続距離が弱点であるEVは、「これまでに乗っていたクルマと同じように使えない」という点で、一般ユーザーは二の足を踏むことでしょう。

 EVの特徴である「充電」についても、ユーザーのライフスタイルによってはデメリットになってしまうのが現状です。

 EVを所有するためには、同時に充電環境を整える必要がありますが、自宅に充電器を設置するためには、賃貸契約のマンションや戸建てでは現実的に難しく、持ち家である必要があります。そのうえで、十分なスペースも求められます。

 地方部在住であれば、比較的クリアしやすいかもしれませんが、その一方で地方部では一般に一走行あたりの距離が長いため、そもそもEVが適していないという側面もあります。

 反対に、一走行あたりの距離の短い都市部では、持ち家を持つことのハードルがあがるというジレンマがあります。

 それでも、EVに関心がある人は少なくないかもしれません。しかし、もっとも現実的な問題は「価格」です。

 リーフの場合、大型の62kWhバッテリー搭載車の「X」グレードが、441万1000円、小型の40kWhバッテリー搭載車でも「X」グレードは381万9200円となっています。

 この価格差はほぼバッテリーのコストと考えて差し支えないでしょう。一方、ノートの場合は最上級グレードの「X」グレードでも218万6800円となっています。

 リーフとノートでは車格も装備も異なるため一概には比較出来ません。また、EVではより多くの補助金や税制メリットを得られる場合があり、なおかつ日々の充電コストもガソリン車の給油コストに比べれば安くなる傾向があるため、トータルコストで考えればその差はより小さくなります。

 それでも、一見したときの価格の高さや、トータルコストを計算する際の複雑さを考えると、二の足を踏んでしまうのも無理はありません。

■まだEV普及の課題はある? 寒冷地や整備などはどうなるのか?

 これら以外にも、EVは寒冷地に弱いという意見も根強くあります。2020年12月に関越道で発生した立ち往生のトラブルでは、2000台あまりのクルマが最大で2日間にわたって大雪の高速道路上で取り残されました。

 そもそも寒冷地ではバッテリーのパフォーマンスが悪くなるうえ、「電欠」を起こしてしまうとガソリン車以上に復帰が難しいなどの理由で「EVで立ち往生してしまったらどうすればよいのか」というコメントがインターネット上でも多く見られました。

 幸い、立ち往生した2000台あまりのなかにEVは皆無だったと見られますが、それは現時点で寒冷地ではEVが適していないということを物語っているといえるかもしれません。

 しかし、トヨタは2021年4月19日に新型EVとなる「bZ4X」を発表していますが、車両概要として、「回生エネルギーの活用に加え、停車中も賢く充電をおこない、EVならではの環境性能をさらに上積みする、ソーラー充電システムを採用。冬場などでもお客さまに不便を感じさせない航続距離を確保」と説明するように今後は寒冷地での課題も解決されるかもしれません。

 また、EVをはじめとする電動車は、ガソリン車以上に整備が難しいというデメリットもあります。

 モーターをはじめとする基幹部品は、正規ディーラー以外で整備をするのはほぼ不可能と考えたほうが良いでしょう。

※ ※ ※

 ここまで、一般ユーザーにとってEVが普及しない理由を述べてきました。これ以外にも、EVの普及には数え上げればキリがないほどの課題があるでしょう。

 しかし、だからといってEVが普及しないとはいえません。日本でクルマが走るようになっておよそ100年、一般の人々に普及するようになっておよそ50年、これだけの時間を経て、いまのカーライフスタイルが成立しているのです。

 環境問題やエネルギー安全保障上の問題を考えると、電動化が進んでいくことは疑いようがありません。

 航続距離や充電環境、価格といった現時点での課題は技術の革新や法整備によってゆるやかに解決していくことでしょう。

 一方、ガソリン車もある日から突然無くなるということもありません。数十年という長い時間をかけて、ゆっくりと電動化社会へとシフトしていくと考えられます。

 したがって、現時点でガソリン車を好む人はガソリン車を買えばよく、EVに関心がある、あるいはEVのほうがメリットがあるという方はEVを買えばよいでしょう。

 こうした過渡期におけるわれわれ一般ユーザーは、さまざまな選択肢があるということをむしろ喜ぶことが大切なのではないでしょうか。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

角田裕毅 初日10番手「一日のなかで状況を好転させ、方向性を見出した。Q3進出のため調整を続ける」/F1第22戦
角田裕毅 初日10番手「一日のなかで状況を好転させ、方向性を見出した。Q3進出のため調整を続ける」/F1第22戦
AUTOSPORT web
イモトアヤコ、600万円超の「“オシャ”ハイエース 」購入! 「車中泊楽しそう」「テンション上がる」反響多数のゴードンミラー「GMLVAN V-01」とは
イモトアヤコ、600万円超の「“オシャ”ハイエース 」購入! 「車中泊楽しそう」「テンション上がる」反響多数のゴードンミラー「GMLVAN V-01」とは
くるまのニュース
日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
AUTOCAR JAPAN
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
Auto Messe Web
WRCラリージャパンで発生した“一般車両コース侵入事件”、FIAは「非常に深刻な問題」として調査へ。来季大会にも暗雲
WRCラリージャパンで発生した“一般車両コース侵入事件”、FIAは「非常に深刻な問題」として調査へ。来季大会にも暗雲
motorsport.com 日本版
サンパウロGP3位の勢いそのままに……ガスリーがラスベガス予選3番手「最後のアタックはアドレナリンが溢れたよ!」
サンパウロGP3位の勢いそのままに……ガスリーがラスベガス予選3番手「最後のアタックはアドレナリンが溢れたよ!」
motorsport.com 日本版
【旧車高騰の背景を見たり?】足を運んだファンは過去最大の1万2500人! 全米最大のJDMイベント
【旧車高騰の背景を見たり?】足を運んだファンは過去最大の1万2500人! 全米最大のJDMイベント
AUTOCAR JAPAN
アルピーヌ、東京オートサロン2025に『A110 Rチュリニ』など出展へ。山野哲也のトークショーも実施
アルピーヌ、東京オートサロン2025に『A110 Rチュリニ』など出展へ。山野哲也のトークショーも実施
AUTOSPORT web
12月1日は岡山国際でドラテク磨き! 初心者向け「カルガモクラス」もある「TOYO TIRES PROXES DRIVING PLEASURE」は要チェックです
12月1日は岡山国際でドラテク磨き! 初心者向け「カルガモクラス」もある「TOYO TIRES PROXES DRIVING PLEASURE」は要チェックです
Auto Messe Web
F1第22戦水曜会見:レースディレクター交代は「知らなかった」と驚くラッセル。一方で対話を続ける意思も明かす
F1第22戦水曜会見:レースディレクター交代は「知らなかった」と驚くラッセル。一方で対話を続ける意思も明かす
AUTOSPORT web
いすゞ新型「FRマシン」発表! 斬新「スポーティ顔」採用&四駆設定あり! “新開発エンジン”と8速AT搭載の「D-MAX」「MU-X」タイで発売!
いすゞ新型「FRマシン」発表! 斬新「スポーティ顔」採用&四駆設定あり! “新開発エンジン”と8速AT搭載の「D-MAX」「MU-X」タイで発売!
くるまのニュース
大人気の輸入車コンパクトSUVが進化! VW改良新型「Tクロス」はどう変わった? 乗って思った「これでいいんだよ」感とは
大人気の輸入車コンパクトSUVが進化! VW改良新型「Tクロス」はどう変わった? 乗って思った「これでいいんだよ」感とは
VAGUE
トラックの頭と積荷が載ったトレーラーの知られざる接続部! 最後のロックはあえて「手動」にしていた
トラックの頭と積荷が載ったトレーラーの知られざる接続部! 最後のロックはあえて「手動」にしていた
WEB CARTOP
いよいよラリージャパン最終日。勝田貴元の“全開プッシュ”は見られるか?「難しい1年を支えてくれたチームのために仕事をしたい」
いよいよラリージャパン最終日。勝田貴元の“全開プッシュ”は見られるか?「難しい1年を支えてくれたチームのために仕事をしたい」
motorsport.com 日本版
伝説のジャガーXJSが現代に蘇る、660馬力V12スーパーチャージャー搭載『スーパーキャット』誕生
伝説のジャガーXJSが現代に蘇る、660馬力V12スーパーチャージャー搭載『スーパーキャット』誕生
レスポンス
ヒョンデのタナクが総合首位をキープ。トヨタのエバンスとオジェが続く……勝田貴元5番手|WRCラリージャパンDAY3午後
ヒョンデのタナクが総合首位をキープ。トヨタのエバンスとオジェが続く……勝田貴元5番手|WRCラリージャパンDAY3午後
motorsport.com 日本版
岩佐歩夢の気になる去就。「F1に向いているハイブリッド思考」担当の小池エンジニアが話すローソンとの比較
岩佐歩夢の気になる去就。「F1に向いているハイブリッド思考」担当の小池エンジニアが話すローソンとの比較
AUTOSPORT web
F1ラスベガスGP FP2:好調メルセデスのハミルトンが最速。角田は初日10番手、アルピーヌやハースもトップ10入り
F1ラスベガスGP FP2:好調メルセデスのハミルトンが最速。角田は初日10番手、アルピーヌやハースもトップ10入り
AUTOSPORT web

みんなのコメント

11件
  • ガソリンエンジンより電気モーターの方が部品が少なく構造も簡単で圧倒的に整備が容易だ。
  • 日本国内だけの話だねこの記事は
    トヨタ次第でBEVは世界基準に追い付けるんだがHVまだ推してるしFCVの乗用車売りたがってるから日本のガラパゴス化は進むばかり
    VWに至っては2割程度がBEVの販売になってる
    0.1割の日本と比べるとその差歴然
    大昔電気から内燃に変わってその逆が起ころうとしてる
    一歩遅れればどんだけ失うか過去を見れば分かるんだが日本は動くの遅いよね
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

144.8268.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1.0335.0万円

中古車を検索
ノートの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

144.8268.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1.0335.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村