現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 原因知ってる? 絶対に避けたいブレーキのトラブル! 危険を回避するにはどうしたら?

ここから本文です

原因知ってる? 絶対に避けたいブレーキのトラブル! 危険を回避するにはどうしたら?

掲載 15
原因知ってる? 絶対に避けたいブレーキのトラブル! 危険を回避するにはどうしたら?

そもそも、ブレーキの仕組みとは?

 エンジンがかからなかったら走れないので困りますが、もし走行中にブレーキが効かなくなったら、困るでは済まず非常に危険です。そして明らかな整備不良やパーツの破損、故障が無くても、ブレーキが効かなくなる「フェード」や「ベーパーロック」が発生する可能性があります。それらはブレーキの構造やトラブルの仕組みを知っていれば、回避するための運転方法や予防措置も行えるのです。

【画像】突然起きたら超焦る! ブレーキが効かなくなる仕組みを見る

 まずブレーキの構造ですが、近年のスポーツバイクの多くが前後ブレーキともに装備している「油圧式ディスクブレーキ」は、マスターシリンダーで発生した油圧がブレーキホースを経てブレーキキャリパーに伝わり、ブレーキピストンがブレーキパッドをディスクローターに押し付け、その摩擦力で制動力を生み出します。

 また小排気量モデルのリアブレーキや、50ccクラスの原付だと前後に「機械式ドラムブレーキ」を装備しているモデルもあります。これはブレーキレバーやペダルから伸びる金属製のケーブル等でブレーキアームを引き、アームと同軸のカムでブレーキシューを開いてホイールのハブ(=ドラム)に押し付けて摩擦力を発生させています。

 構造は異なりますが、油圧式ディスクも機械式ドラムも、摩擦材を貼ったパッドやシューをディスクやドラムに押し付けて摩擦力=制動力を生む仕組みは同じです。そしてブレーキを操作して摩擦力を生むと、ディスクやドラムが「発熱」するということを覚えておきましょう。

「ガス膜」がブレーキを効かなくする「フェード」

 まず「フェード」ですが、これはブレーキのディスクやドラムが過剰に発熱することで、ブレーキパッドやブレーキシューの摩擦材を構成する樹脂などが耐熱温度を超えて、分解したりガス化する現象です。

 ブレーキパッドとディスクの間(ブレーキシューとドラムの間)にガス膜ができるため摩擦力が急激に低下してしまい、ブレーキを強く操作しても効きが悪い状態になります。

 ちなみに剥き出しのディスクブレーキよりも、構造的に囲われたドラムブレーキの方が熱がこもりやすいため、フェード現象が起こりやすいと言われます。

油圧が伝わらなくなる「ベーパーロック」

「ベーパーロック」も「フェード」と同様に、ディスクローターが過剰に発熱した時に起こる現象です。こちらはディスクの発熱がブレーキパッドやブレーキキャリパーのピストンを介して、ブレーキフルードにまで伝わることで、ブレーキフルードが沸騰してフルード内に気泡が発生します。

 こうなるとブレーキレバーやペダルを操作しても、マスターシリンダーで生み出した油圧は気泡を潰すだけでピストンに伝わらず、ブレーキが効かなくなります。

 フェードするとブレーキレバーを強く握ってもブレーキがズルズル滑る感じで効きが悪くなります。対してベーパーロックを起こすとブレーキレバーがフニャフニャに柔らかくなったり(「スポンジー」と表現)、ともすれば抵抗なくスカッと根元まで握れてしまい、効きが悪いというより、ほとんど効かなくなることもあります。

 お気づきかもしれませんが、フェードは油圧式ディスクでも機械式ドラムでも起こりますが、ベーパーロックは油圧式ディスクでしか起こりません。そして油圧式ディスクは最初にフェード現象が起こり、続いてベーパーロックが発生する場合もあります。

フェードの兆候があったら、すぐに停まる!

 フェードもベーパーロックも、ブレーキの過剰な発熱によって起こります。具体的には峠路の長い下り坂などでブレーキを多用した時などでしょう。

 とはいえ近年のスポーツバイクは、サーキット走行でかなり強いブレーキングを繰り返しても滅多にフェードしたりしません。それなのに速度の低い公道の峠の下り坂でフェードする場合は、ずっと弱いブレーキをかけ続ける「だらだらブレーキ」が原因だったりします。

 カーブの前など減速すべきポイントではしっかりブレーキをかけ、それ以外はキチンとブレーキを離せばその間に冷却されるので過剰に発熱しません。しかし弱くてもずっとかけ続けていると冷却されずに熱がどんどん溜まり、フェードやベーパーロックが起こります。

 とはいえ公道だとサーキット走行のようなメリハリつけた運転は難しいかもしれません。そのため教習所では「長い下り坂ではエンジンブレーキを使う」と習うワケです。

 そしてもし「ブレーキの効きが悪くなってきたかも……」と感じたら、可能な限り早く安全な場所に停まりましょう。そのまま走り続けると症状が悪化し、ベーパーロックを起こす危険が高まります。

 そしてディスクやドラム(ホイールのハブの部分)が十分に冷えるまで待ちます(停止直後は猛烈に熱いのでヤケドに注意)。ちなみに水をかけて急冷するのは絶対にNG! 歪んだり亀裂が入って本格的に破損する危険「大」なので、自然に冷えるのを待ちます。

 そしてブレーキまわりが十分に冷えたら、まずは停止した状態でブレーキレバーやペダルを操作して、握ったり踏んだ時のフィーリングが正常か確認し、問題が無ければ周囲の安全に注意しつつ、すぐに止まれる低速で走ってブレーキが正しく効くか確認しましょう。

 もし停止状態で普段よりブレーキレバーやペダルがフニャフニャしたり、ゆっくり試走してブレーキの効きが悪いようなら、それ以上走らずにレッカーサービスを呼びましょう。

 また、問題なく走れた場合でも、そのままで良しとせずに早急にバイクショップで点検してもらいましょう。

早めの交換でトラブルを回避!

 バイクはトラブルが起こる前に(起こらないように)メンテナンスを行うのが基本です。フェードに対しては、ブレーキパッドやブレーキシューが摩耗しているほどディスクやドラムから熱が伝わりやすくなる(フェードしやすくなる)ので、残量をチェックします。

 ブレーキパッドの使用限界はおおむね1mmほど(メーカーや車種によって異なる)ですが、マージンを考えると残量2mmくらいで交換するのがオススメです。

 そしてベーパーロックの原因はブレーキフルードの沸騰ですが、そもそもブレーキフルードは沸点が高い(沸騰しにくい)素材で作られています。しかしブレーキフルードの素材(主にポリエチレングリコールモノエーテル)は水溶性のため、時間が経つと吸湿し、徐々に沸点が下っていきます。すると当然ながら、ベーパーロックを起こしやすくなります。

 そこで多くのバイクメーカーが、ブレーキフルードは「2年毎に交換」を推奨しています。バイクショップで毎年の法定点検や車検時にブレーキフルード交換を促されるのはそのためです。

 冒頭でも触れましたが、ブレーキのトラブルは生命にかかわる一大事な上に、フェードやベーパーロックはブレーキシステムがあきらかに故障していなくても起こり得ます。

 どんな時に起こるのか、起きてしまったらどうするのかを正しく理解して、ブレーキパッドやブレーキフルードなどの消耗品を、マージンを待って交換することが重要です。

関連タグ

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

カッコよく見えるけど実は危険信号!? バイクのマフラーから異様な音と熱が発生する「アフターファイヤー」の原因と対処法
カッコよく見えるけど実は危険信号!? バイクのマフラーから異様な音と熱が発生する「アフターファイヤー」の原因と対処法
バイクのニュース
合言葉は「ブタと燃料」!? やらなきゃダメな理由を教えて! バイクに乗る際の日常点検と定期点検
合言葉は「ブタと燃料」!? やらなきゃダメな理由を教えて! バイクに乗る際の日常点検と定期点検
バイクのニュース
スリップサインでは遅すぎる! ウエット性能が落ちる“意外なタイミング” ~Weeklyメンテナンス~
スリップサインでは遅すぎる! ウエット性能が落ちる“意外なタイミング” ~Weeklyメンテナンス~
レスポンス
走行中にタイヤが壊れる「謎の現象」なぜ起きる? 危険な「セパレーション」発生したら4本全部交換しないとダメ? トラブルを未然に防ぐ“カンタンな”方法とは?
走行中にタイヤが壊れる「謎の現象」なぜ起きる? 危険な「セパレーション」発生したら4本全部交換しないとダメ? トラブルを未然に防ぐ“カンタンな”方法とは?
くるまのニュース
「やらかしてない!?」クルマの寿命を縮めるうっかりNG行為 ちょっとした気遣いでクルマは長持ちする!!!
「やらかしてない!?」クルマの寿命を縮めるうっかりNG行為 ちょっとした気遣いでクルマは長持ちする!!!
ベストカーWeb
ヒヤッ!! とする前に…梅雨時の愛車をサクッとチェック! 押さえておくべき7つの項目
ヒヤッ!! とする前に…梅雨時の愛車をサクッとチェック! 押さえておくべき7つの項目
ベストカーWeb
たかがプラグ、されど激変。交換だけでエンジンはここまで変わる!~カスタムHOW TO~
たかがプラグ、されど激変。交換だけでエンジンはここまで変わる!~カスタムHOW TO~
レスポンス
よかれと思った行為が実は逆効果!!! 愛車の寿命を短くしていた! やりがちNGなカーケア行為5選
よかれと思った行為が実は逆効果!!! 愛車の寿命を短くしていた! やりがちNGなカーケア行為5選
ベストカーWeb
多い方がエラかった!? 一体どうやって決まる? カッコ良さだけじゃないマフラーの数とは
多い方がエラかった!? 一体どうやって決まる? カッコ良さだけじゃないマフラーの数とは
バイクのニュース
カワサキ「初代空冷Z系エンジン」組み上げ バルブタイミング「28ピン」の誤解釈には要注意!! 最悪の場合はエンジンブローの恐れも ~日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承~Vol.36
カワサキ「初代空冷Z系エンジン」組み上げ バルブタイミング「28ピン」の誤解釈には要注意!! 最悪の場合はエンジンブローの恐れも ~日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承~Vol.36
バイクのニュース
エンジンオイル エアコン スリップ…… ジメジメ 滑る 梅雨の時期こそ気をつけたい! やるべきメンテとは
エンジンオイル エアコン スリップ…… ジメジメ 滑る 梅雨の時期こそ気をつけたい! やるべきメンテとは
ベストカーWeb
「山間部」の運転は注意! 実は「あなたの運転」間違いかも!? 実際「安全な運転」はどうすればいいのか
「山間部」の運転は注意! 実は「あなたの運転」間違いかも!? 実際「安全な運転」はどうすればいいのか
くるまのニュース
梅雨シーズンはとくに思う「本当はガレージが欲しい!!」けど……バイクのカバーはいつかける?
梅雨シーズンはとくに思う「本当はガレージが欲しい!!」けど……バイクのカバーはいつかける?
バイクのニュース
それ違反かも!? 信号が青に変わった瞬間にバイクで急発進する行為
それ違反かも!? 信号が青に変わった瞬間にバイクで急発進する行為
バイクのニュース
電サス導入!! オルベアから「下り系」最強レベルのスペックを誇る「Rallon(ラヨーン)」エンデューロ仕様が登場
電サス導入!! オルベアから「下り系」最強レベルのスペックを誇る「Rallon(ラヨーン)」エンデューロ仕様が登場
バイクのニュース
「自動車のタイヤ」って、洗う意味あるの? JAF出動45万件が示す「見えない劣化」の恐怖とは
「自動車のタイヤ」って、洗う意味あるの? JAF出動45万件が示す「見えない劣化」の恐怖とは
Merkmal
ヒントは馬!! バイクで二人乗り走行する行為が、なぜ「タンデム」と呼ばれているのか知ってる?
ヒントは馬!! バイクで二人乗り走行する行為が、なぜ「タンデム」と呼ばれているのか知ってる?
バイクのニュース
【2025年夏版】ヘッドライトの黄ばみ なぜ起きる? 車検もNG!? 原因と対策 おススメのクリーナーは?
【2025年夏版】ヘッドライトの黄ばみ なぜ起きる? 車検もNG!? 原因と対策 おススメのクリーナーは?
ベストカーWeb

みんなのコメント

15件
  • moo********
    今の日本製バイクで「正常」に整備されてればブレーキトラブルはほぼ無い。あるとしたら変なブレーキのかけ方とか。あるいは人間のブレーキのほうが壊れてる。
  • tor********
    リザーバタンクの液面が下がっているので、”減っている”と安易に補充するのは考えもの。
    ディスクブレーキの場合、レバーをリリースしてマスターシリンダーから油圧を抜くと、キャリパーのピストンシール(図ではオイルシール)の弾性でピストンが戻る(ロールバック)ことで、ディスクローターとパッドのクリアランスを保持しているが、パッドのライニングが減ると、シールの弾性限界を超えて減った分だけピストンがズルッと進み、クリアランスを調整している。つまり液面が下がった分だけ、リザーバタンクからブレーキラインにフルードが補充されている⇒パッドのライニングが減っている。もし、足してしまうと、ライニングの減った目安が分からなくなる。もしパッドを点検して減りが少ないにもかかわらず、液面が下がるようならシール、ブリーダー、バンジョーボルト等からの漏れが無いか点検したほうがイイ。足すのはそれから。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村