そもそも、ブレーキの仕組みとは?
エンジンがかからなかったら走れないので困りますが、もし走行中にブレーキが効かなくなったら、困るでは済まず非常に危険です。そして明らかな整備不良やパーツの破損、故障が無くても、ブレーキが効かなくなる「フェード」や「ベーパーロック」が発生する可能性があります。それらはブレーキの構造やトラブルの仕組みを知っていれば、回避するための運転方法や予防措置も行えるのです。
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まずブレーキの構造ですが、近年のスポーツバイクの多くが前後ブレーキともに装備している「油圧式ディスクブレーキ」は、マスターシリンダーで発生した油圧がブレーキホースを経てブレーキキャリパーに伝わり、ブレーキピストンがブレーキパッドをディスクローターに押し付け、その摩擦力で制動力を生み出します。
また小排気量モデルのリアブレーキや、50ccクラスの原付だと前後に「機械式ドラムブレーキ」を装備しているモデルもあります。これはブレーキレバーやペダルから伸びる金属製のケーブル等でブレーキアームを引き、アームと同軸のカムでブレーキシューを開いてホイールのハブ(=ドラム)に押し付けて摩擦力を発生させています。
構造は異なりますが、油圧式ディスクも機械式ドラムも、摩擦材を貼ったパッドやシューをディスクやドラムに押し付けて摩擦力=制動力を生む仕組みは同じです。そしてブレーキを操作して摩擦力を生むと、ディスクやドラムが「発熱」するということを覚えておきましょう。
「ガス膜」がブレーキを効かなくする「フェード」
まず「フェード」ですが、これはブレーキのディスクやドラムが過剰に発熱することで、ブレーキパッドやブレーキシューの摩擦材を構成する樹脂などが耐熱温度を超えて、分解したりガス化する現象です。
ブレーキパッドとディスクの間(ブレーキシューとドラムの間)にガス膜ができるため摩擦力が急激に低下してしまい、ブレーキを強く操作しても効きが悪い状態になります。
ちなみに剥き出しのディスクブレーキよりも、構造的に囲われたドラムブレーキの方が熱がこもりやすいため、フェード現象が起こりやすいと言われます。
油圧が伝わらなくなる「ベーパーロック」
「ベーパーロック」も「フェード」と同様に、ディスクローターが過剰に発熱した時に起こる現象です。こちらはディスクの発熱がブレーキパッドやブレーキキャリパーのピストンを介して、ブレーキフルードにまで伝わることで、ブレーキフルードが沸騰してフルード内に気泡が発生します。
こうなるとブレーキレバーやペダルを操作しても、マスターシリンダーで生み出した油圧は気泡を潰すだけでピストンに伝わらず、ブレーキが効かなくなります。
フェードするとブレーキレバーを強く握ってもブレーキがズルズル滑る感じで効きが悪くなります。対してベーパーロックを起こすとブレーキレバーがフニャフニャに柔らかくなったり(「スポンジー」と表現)、ともすれば抵抗なくスカッと根元まで握れてしまい、効きが悪いというより、ほとんど効かなくなることもあります。
お気づきかもしれませんが、フェードは油圧式ディスクでも機械式ドラムでも起こりますが、ベーパーロックは油圧式ディスクでしか起こりません。そして油圧式ディスクは最初にフェード現象が起こり、続いてベーパーロックが発生する場合もあります。
フェードの兆候があったら、すぐに停まる!
フェードもベーパーロックも、ブレーキの過剰な発熱によって起こります。具体的には峠路の長い下り坂などでブレーキを多用した時などでしょう。
とはいえ近年のスポーツバイクは、サーキット走行でかなり強いブレーキングを繰り返しても滅多にフェードしたりしません。それなのに速度の低い公道の峠の下り坂でフェードする場合は、ずっと弱いブレーキをかけ続ける「だらだらブレーキ」が原因だったりします。
カーブの前など減速すべきポイントではしっかりブレーキをかけ、それ以外はキチンとブレーキを離せばその間に冷却されるので過剰に発熱しません。しかし弱くてもずっとかけ続けていると冷却されずに熱がどんどん溜まり、フェードやベーパーロックが起こります。
とはいえ公道だとサーキット走行のようなメリハリつけた運転は難しいかもしれません。そのため教習所では「長い下り坂ではエンジンブレーキを使う」と習うワケです。
そしてもし「ブレーキの効きが悪くなってきたかも……」と感じたら、可能な限り早く安全な場所に停まりましょう。そのまま走り続けると症状が悪化し、ベーパーロックを起こす危険が高まります。
そしてディスクやドラム(ホイールのハブの部分)が十分に冷えるまで待ちます(停止直後は猛烈に熱いのでヤケドに注意)。ちなみに水をかけて急冷するのは絶対にNG! 歪んだり亀裂が入って本格的に破損する危険「大」なので、自然に冷えるのを待ちます。
そしてブレーキまわりが十分に冷えたら、まずは停止した状態でブレーキレバーやペダルを操作して、握ったり踏んだ時のフィーリングが正常か確認し、問題が無ければ周囲の安全に注意しつつ、すぐに止まれる低速で走ってブレーキが正しく効くか確認しましょう。
もし停止状態で普段よりブレーキレバーやペダルがフニャフニャしたり、ゆっくり試走してブレーキの効きが悪いようなら、それ以上走らずにレッカーサービスを呼びましょう。
また、問題なく走れた場合でも、そのままで良しとせずに早急にバイクショップで点検してもらいましょう。
早めの交換でトラブルを回避!
バイクはトラブルが起こる前に(起こらないように)メンテナンスを行うのが基本です。フェードに対しては、ブレーキパッドやブレーキシューが摩耗しているほどディスクやドラムから熱が伝わりやすくなる(フェードしやすくなる)ので、残量をチェックします。
ブレーキパッドの使用限界はおおむね1mmほど(メーカーや車種によって異なる)ですが、マージンを考えると残量2mmくらいで交換するのがオススメです。
そしてベーパーロックの原因はブレーキフルードの沸騰ですが、そもそもブレーキフルードは沸点が高い(沸騰しにくい)素材で作られています。しかしブレーキフルードの素材(主にポリエチレングリコールモノエーテル)は水溶性のため、時間が経つと吸湿し、徐々に沸点が下っていきます。すると当然ながら、ベーパーロックを起こしやすくなります。
そこで多くのバイクメーカーが、ブレーキフルードは「2年毎に交換」を推奨しています。バイクショップで毎年の法定点検や車検時にブレーキフルード交換を促されるのはそのためです。
冒頭でも触れましたが、ブレーキのトラブルは生命にかかわる一大事な上に、フェードやベーパーロックはブレーキシステムがあきらかに故障していなくても起こり得ます。
どんな時に起こるのか、起きてしまったらどうするのかを正しく理解して、ブレーキパッドやブレーキフルードなどの消耗品を、マージンを待って交換することが重要です。
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みんなのコメント
ディスクブレーキの場合、レバーをリリースしてマスターシリンダーから油圧を抜くと、キャリパーのピストンシール(図ではオイルシール)の弾性でピストンが戻る(ロールバック)ことで、ディスクローターとパッドのクリアランスを保持しているが、パッドのライニングが減ると、シールの弾性限界を超えて減った分だけピストンがズルッと進み、クリアランスを調整している。つまり液面が下がった分だけ、リザーバタンクからブレーキラインにフルードが補充されている⇒パッドのライニングが減っている。もし、足してしまうと、ライニングの減った目安が分からなくなる。もしパッドを点検して減りが少ないにもかかわらず、液面が下がるようならシール、ブリーダー、バンジョーボルト等からの漏れが無いか点検したほうがイイ。足すのはそれから。