現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > えっ「戦車」じゃないんですか!? 装甲ボディ+大型砲塔でも “対空砲” 一体ナニが違うのか?

ここから本文です

えっ「戦車」じゃないんですか!? 装甲ボディ+大型砲塔でも “対空砲” 一体ナニが違うのか?

掲載 45
えっ「戦車」じゃないんですか!? 装甲ボディ+大型砲塔でも “対空砲”  一体ナニが違うのか?

そもそも戦車ってどういう車両?

 陸上自衛隊をはじめとして、陸軍や海兵隊などが使用する戦闘車両には様々な種類があります。なかには、戦車と見紛うほど大型の砲塔を搭載しているものの、単なる装甲車だったりする車両もあり、知識がないと見分けがつきにくいのも事実です。戦闘車両や装甲戦闘車両、そして戦車とはどういう基準で区分けされているのか、改めて見てみましょう。

【え、大型砲塔あるのに!?】米陸軍の「戦車」もどきの「戦闘車」(写真)

 戦車が初めて戦場に姿を現したのは、いまから110年ほど前の第一次世界大戦です。その役割は、相手の戦車や機関銃、砲などを撃破し、歩兵の進撃をお膳立てする、いわば「露払い」といった立ち位置でした。

 こうした任務に対応するため、相手からの反撃に耐えられるような装甲で車体を包み、塹壕など様々な地面の状況に対応できるよう、履帯(キャタピラ)で走行するようになっているのが外見上の特徴となっています。

 武装については、主砲は比較的近距離(およそ2km~3km程度)の目標を直接狙うため、砲身をあまり上まで向けられる仕組みにはなっておらず、射撃は水平に近い角度で行うのが特徴です。補助的な武装となっている機関銃は、至近距離に接近してきた兵士や、低空を飛ぶヘリコプターなどに対処するためのものです。

 陸上自衛隊の16式機動戦闘車など、いわゆる「装輪戦車」と呼ばれるような車両は、履帯ではなくタイヤ(車輪)で走行する仕組みになっているので、狭義の「戦車」には当てはまりません。これらは比較的整地された路面を高速で走れるため、高速道路や幹線道路などを使って素早く機動的に必要な場所へ展開することは可能ですが、一方で戦車のように泥濘や積雪をものともせず踏破するようなことはできません。

 また、車重も戦車ほど重くできないため、装甲防御力は大口径機関砲に耐えられる程度で、これまた戦車ほど優れていません。そのため、あくまでも戦車を補完する存在だといえます。

様々な種類がある装甲戦闘車両

 そもそも、戦車など相手の攻撃から乗員を保護する装甲で車体を覆っている戦闘車両のことを「装甲戦闘車両」といいます。英語の「Armored Fighting Vehicle」の頭文字をとって「AFV」という略称で呼ばれることもあります。

 装甲の程度は車両によって様々で、戦車のように相手の戦車砲からの防御を考慮したものから、小銃や小口径の機関銃による攻撃に耐えられる程度の装甲しか持たないものまであります。一般に、装甲の厚みが増す(防御力が増す)と車重も増し、機動力が損なわれるので、目的に応じて装甲の程度と機動力のバランスが考えられています。

 装甲戦闘車両のうち、戦車と見分けがつきにくいものの代表ともいえるのが、大きな砲を装備した自走砲でしょう。これは大砲(野砲)を牽引車なしでも移動できるよう機動性を高めたものです。戦車と比べて長距離(20km~40km程度)の目標を狙うため、山なりの弾道で射撃できるよう、砲身をかなり上の方まで向けられるところが戦車との相違点です。相手との距離も離れているので、装甲防御力も戦車ほど高くありません。

 自走砲の中には、機関砲で航空機を撃墜する目的で作られた対空自走砲というものもあります。陸上自衛隊の87式自走高射機関砲や、ドイツのゲパルト自走対空砲が代表的です。なお、後者はドイツからウクライナに供与され、ドローンや巡航ミサイルの迎撃で効果を発揮しているといいます。

 また、相手陣地まで接近し、時には軽く攻撃して反撃の状況で相手の戦力を分析する「強行偵察」や「威力偵察」と呼ばれる任務に使われる車両も、戦車に似た外観をしています。これは陸上自衛隊の87式偵察警戒車のように、主武装が大口径砲ではなく機関砲だったりしますが、車体が装甲に覆われ全周旋回が可能な砲塔を備えていたりします。

 なお砲塔に装備するのが機関砲ではなく、フランスのAMX-10RCやイタリアのチェンタウロのように戦車並みの105mm砲である場合もあります。

装甲のない戦闘車両もあるの?

 地上での戦闘に使用される車両は、装甲が施されている車両ばかりではありません。ミサイルのように有効射程が長く、反撃を受ける可能性が少ない場面で使用される兵器の場合、装甲車ではない一般の軍用車両にミサイルランチャーを架装したものもあります。

 陸上自衛隊で運用している中距離多目的誘導弾や98式多目的誘導弾システム、また航空自衛隊が運用する基地防空用地対空誘導弾の場合、装甲車ではないピックアップトラックのような汎用車両、「高機動車」にランチャーが架装されています。

 トラックなどの大型車両にミサイルランチャーが架装されるケースもあり、陸上自衛隊の03式中距離地対空誘導弾や12式地対艦誘導弾では「重装輪車両」と呼ばれる8輪駆動の大型車に、11式短距離地対空誘導弾では3 1/2tトラックにランチャーが架装されています。

 近年、飛んでくる砲弾を検知するレーダーや偵察ドローンといった観測装置の発達で、砲撃の発射位置が短時間で特定できるようになったため、自走砲もさらなる機動力が重視されるようになりました。そこで大型トラックに砲を装備するタイプの自走砲も登場しています。代表的なのは陸上自衛隊の19式装輪自走155mmりゅう弾砲やスウェーデンのアーチャー、フランスのカエサルなどです。

 ここまで挙げた各種車両を俯瞰して見てみると、軍用車両>戦闘車両>装甲戦闘車両という流れで、その装甲戦闘車両の一種として戦車が存在します。見た目が似ていても、任務によって装甲の程度や武装が異なっているので、よく注意して見分けるとよいでしょう。(咲村珠樹(ライター・カメラマン))

文:乗りものニュース 咲村珠樹(ライター・カメラマン)
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

化け物みたいな巨砲を積む「動く要塞」ドイツが生んだ“モンスタータンク” どう使った?
化け物みたいな巨砲を積む「動く要塞」ドイツが生んだ“モンスタータンク” どう使った?
乗りものニュース
ロシア軍がアメリカの戦闘車を“謎カスタム” しかも性能ダウン!? なぜ機関砲を大きくしたのか
ロシア軍がアメリカの戦闘車を“謎カスタム” しかも性能ダウン!? なぜ機関砲を大きくしたのか
乗りものニュース
ズドドドド!「無人武器システムの射撃」海上自衛隊がムービーで公開 将来護衛艦では必須の装備かも
ズドドドド!「無人武器システムの射撃」海上自衛隊がムービーで公開 将来護衛艦では必須の装備かも
乗りものニュース
「F-35ってF-22の劣化版でしょ」←違うから!「ハイローミックス」ではないF-35の真骨頂とは
「F-35ってF-22の劣化版でしょ」←違うから!「ハイローミックス」ではないF-35の真骨頂とは
乗りものニュース
ウクライナで「ドイツ製新防空システム」が火を噴き次々ドローンを撃墜 ミサイルよりはるかに経済的
ウクライナで「ドイツ製新防空システム」が火を噴き次々ドローンを撃墜 ミサイルよりはるかに経済的
乗りものニュース
ロシア軍の「強力な新兵器」が空中で木っ端みじんに “複数の刺客”に攻撃される
ロシア軍の「強力な新兵器」が空中で木っ端みじんに “複数の刺客”に攻撃される
乗りものニュース
是が非でも性能アップだ!「心臓」変えて名機になった日独の戦闘機たち
是が非でも性能アップだ!「心臓」変えて名機になった日独の戦闘機たち
乗りものニュース
戦闘機の名門が「船」自衛隊に提案中!? 日本にピッタリかもしれない北欧サーブの高速戦闘艇とは 「日本で作って輸出」もアリ?
戦闘機の名門が「船」自衛隊に提案中!? 日本にピッタリかもしれない北欧サーブの高速戦闘艇とは 「日本で作って輸出」もアリ?
乗りものニュース
ざっと1人30億円!「戦闘機で最も高価な構成品」とは? 維持費だけでも年間6億円「手塩にかけていますから」
ざっと1人30億円!「戦闘機で最も高価な構成品」とは? 維持費だけでも年間6億円「手塩にかけていますから」
乗りものニュース
日米の「最新ステルス艦」が横須賀で顔を合わせた!“ピラミッドみたいな外観”の2隻が揃う
日米の「最新ステルス艦」が横須賀で顔を合わせた!“ピラミッドみたいな外観”の2隻が揃う
乗りものニュース
ロシア軍の最新兵器 地雷発射車両「ゼムレデリエ」波状攻撃受け炎上 ウクライナ軍ドローンに追跡される
ロシア軍の最新兵器 地雷発射車両「ゼムレデリエ」波状攻撃受け炎上 ウクライナ軍ドローンに追跡される
乗りものニュース
ロシア軍の「重火炎放射システム」攻撃を受け“大爆発”する映像を公開 非人道兵器として国際社会で批判される自走ロケット
ロシア軍の「重火炎放射システム」攻撃を受け“大爆発”する映像を公開 非人道兵器として国際社会で批判される自走ロケット
乗りものニュース
「空港用消防車」街の消防車とどう違う? 見た目は巨大! 操縦者に聞く“乗り心地”とは
「空港用消防車」街の消防車とどう違う? 見た目は巨大! 操縦者に聞く“乗り心地”とは
乗りものニュース
三胴船「ピエール」引き渡し完了 近未来デザインの“問題児”インディペンデンス級 最後の姉妹艦
三胴船「ピエール」引き渡し完了 近未来デザインの“問題児”インディペンデンス級 最後の姉妹艦
乗りものニュース
陸自の「無人車両」今から“開発”するの!? 迫るタイムリミット 技術的にも“海外製をそのまま導入”がベストなワケ
陸自の「無人車両」今から“開発”するの!? 迫るタイムリミット 技術的にも“海外製をそのまま導入”がベストなワケ
乗りものニュース
国内に1機だけ!日本海軍「最強戦闘機」が“重要航空遺産”に認定へ 46年前に海底から引き揚げられた機体
国内に1機だけ!日本海軍「最強戦闘機」が“重要航空遺産”に認定へ 46年前に海底から引き揚げられた機体
乗りものニュース
現役空母がなぜ「年中無休の観光地」に!?  SNSでその影響力を誇示 ロシアだけじゃない“長年任務に出ない空母”
現役空母がなぜ「年中無休の観光地」に!? SNSでその影響力を誇示 ロシアだけじゃない“長年任務に出ない空母”
乗りものニュース
護衛艦に搭載する「超スゴい兵器」いよいよ試作へ 弾薬の補給も必要ない“ゲーム・チェンジャー”!?
護衛艦に搭載する「超スゴい兵器」いよいよ試作へ 弾薬の補給も必要ない“ゲーム・チェンジャー”!?
乗りものニュース

みんなのコメント

45件
  • NAS********
    でもサムネは戦車
    M1エイブラムスかな
  • yom********
    戦車と間違えそうになる“対空砲”搭載の戦闘車両…なんやねんそれ

    という疑問を抱いて記事を読んでみりゃただのゲパルト話

    ほんと最近の乗りものニュースは姑息卑怯阿漕だよな
    マジで運営方針、以前と完全に変えてきているだろ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村