現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「水素を燃やして走る“フェリー”」2026年完成へ 浮かぶ水素ステーションも!? ここまで進んだ“海の水素社会”

ここから本文です

「水素を燃やして走る“フェリー”」2026年完成へ 浮かぶ水素ステーションも!? ここまで進んだ“海の水素社会”

掲載 更新 4
「水素を燃やして走る“フェリー”」2026年完成へ 浮かぶ水素ステーションも!? ここまで進んだ“海の水素社会”

やっぱエンジン! 水素燃料の“現実的な”普及プラン

 水素で動くフェリーが国内で実現しようとしています。ジャパンハイドロ、ダイハツインフィニアース(旧ダイハツディーゼル)、ミズノマリン、ベルギーのBeHydroの4社は2025年6月6日、水素を燃料として使用する舶用エンジンの導入を日本市場で進めるため、販売などの協力に向けた基本合意書をベルギー大使館で締結しました。

【おおお!】これが「水素燃料フェリー」です(写真)

 この水素エンジンは内航船や作業船の主機として供給することを想定しており、課題となっている内航分野のゼロエミッション化を促します。水素“混焼”エンジンを搭載したタグボートは今年7月に、“専焼”エンジンを搭載したフェリーは2026年末に竣工する予定です。いずれも建造ヤードは常石造船となっています。

 式典には、来日していたベルギーのアストリッド王女とローレンツ王子も参加。4社は今回結んだ業務提携に基づき、BeHydroが製造する中速水素エンジンを、日本へ輸入し、国内で販売、保守を行います。

 常石グループ2社(神原汽船、ツネイシクラフト&ファシリティーズ)とベルギーの海運大手CMBグループによる合弁会社であるジャパンハイドロの神原満夫社長は「水素エンジンはポジティブ、ネガティブたくさんあると思う。当社は、水素燃料機関を採用できるのではないかという話があれば、リスク評価も含めて協力することができる」と話します。

 BeHydroはベルギー船社のCMBテックとエンジンメーカーのアングロ・ベルギー・コーポレーション(ABC)が共同で設立した合弁会社で、ディーゼル燃料と水素の両方を使用できる「水素混焼エンジン」と、水素のみを使用する「水素専焼エンジン」の2種類を開発しています。日本での販売に当たっては、新ブランド「BEH2YDRO INFINEARTH」シリーズとして展開していく予定で、ラインナップは、日本の非常用発電機で一般的なサイズの直列6気筒から、内航船の主機にもなるV型16気筒まで幅広く揃えるそうです。

水素フェリーは6気筒エンジン×3機

 ジャパンハイドロの神原満夫社長は「常石造船の構内に水素を燃料として動かすことができるテストベンチ『水素エンジンR&Dセンター』を設けた」といいます。今回の協業の中で担うのは、我々のテストベンチで認証に必要なエンジンを動かして、排ガスや出力といった能力の確認チェックを行うことがメイン」と説明し、水素燃料エンジンの信頼性を高めるサポート体制が国内で構築していることを強調しました。

 同社の青沼 裕CEO(最高経営責任者)も「今回の4社協業の枠組みは新しいエンジンを開発したり、新技術を育てたりする側面より、水素社会が待ったなしという状況で、いかに早く社会実装を進め、開発済みの製品を広めていくというところが大きなポイント」だと説明します。

 BeHydroの水素混焼エンジンに関しては、ベルギーのアントワープ・ブルージュ港で2023年11月から就航しているタグボート「Hydrotug 1」に搭載されています。混焼タイプの最大の特長は「運用上の柔軟性」で、水素の供給が受けられない場合でも、従来のディーゼル燃料のみで航行を継続できるため、水素インフラが未整備な過渡期の日本では現実的な選択肢となるでしょう。

 また、水素の混焼率は操船者が手動で設定するのではなく、エンジンが運転状況に応じて自動で最適化するとのこと。

 日本では今年3月に常石造船常石工場で混焼タイプV型12気筒2基を搭載したタグボート「天歐」が進水しており、7月に竣工する予定です。

 もう一つは水素専焼エンジンを搭載する船としては、日本財団のゼロエミッション船プロジェクトの一環として、ジャパンハイドロが建造を計画しているフェリーがあります。

 同船には専焼タイプ直列6気筒エンジン3基の採用が決まっており、常石造船で2026年末に竣工する見通しです。具体的な船体規模や就航地などは「まだ明かせない」(青沼CEO)とのこと。

 また、ジャパンハイドロはすでに水素混焼エンジンを搭載する小型旅客船「ハイドロびんご(Hydro BINGO)」(19総トン)を就航させており、タグボート「天歐」とフェリーが完成すれば同社の水素燃料船は計3隻となります。

「水素エンジンはありがたいことに、非常に多くの問い合わせをいただいている。ただ、輸入エンジンという所で顧客から保守面での不安の声があった。4社の枠組みとして実際に水素エンジンを使った船が作られ、それを支援する体制が出来たということを踏まえ、営業をかけていく」(青沼CEO)

 こうした水素燃料船に加えてジャパンハイドロは移動可能な洋上水素ステーションの開発を行っており、水素エンジン導入に向けた課題の解決を図ろうとしています。(深水千翔(海事ライター))

文:乗りものニュース 深水千翔(海事ライター)

関連タグ

【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

「そんなものを“船”にするんですか!?」な“世界初”のプロジェクト始動 船に船で電力供給 商船三井
「そんなものを“船”にするんですか!?」な“世界初”のプロジェクト始動 船に船で電力供給 商船三井
乗りものニュース
NATOがバルト海で「無人艦隊」編制!? きっかけは”海底パイプラインの破壊工作” 気になる今後の動向とは
NATOがバルト海で「無人艦隊」編制!? きっかけは”海底パイプラインの破壊工作” 気になる今後の動向とは
乗りものニュース
戦闘機の名門が「船」自衛隊に提案中!? 日本にピッタリかもしれない北欧サーブの高速戦闘艇とは 「日本で作って輸出」もアリ?
戦闘機の名門が「船」自衛隊に提案中!? 日本にピッタリかもしれない北欧サーブの高速戦闘艇とは 「日本で作って輸出」もアリ?
乗りものニュース
歌にもなった無人攻撃機「バイラクタル」最新型は空母向け! 開発の裏には「アメリカとの亀裂」いったい何が?
歌にもなった無人攻撃機「バイラクタル」最新型は空母向け! 開発の裏には「アメリカとの亀裂」いったい何が?
乗りものニュース
「飛鳥III」ついに公開! 34年ぶりのクルーズ船“新・日本代表” 入魂の“お風呂”も客室もぜんぶ豪華!!
「飛鳥III」ついに公開! 34年ぶりのクルーズ船“新・日本代表” 入魂の“お風呂”も客室もぜんぶ豪華!!
乗りものニュース
8輪駆動で重装甲!ドイツのMANトラックベースに“新型軍用仕様”が公開される モジュール式で様々な状況に対応
8輪駆動で重装甲!ドイツのMANトラックベースに“新型軍用仕様”が公開される モジュール式で様々な状況に対応
乗りものニュース
「ブルーインパルス」T-4後継機に“異色コンセプトの航空機”来るか!? そのスゴイ設計とは 海外で報じられる”可能性”
「ブルーインパルス」T-4後継機に“異色コンセプトの航空機”来るか!? そのスゴイ設計とは 海外で報じられる”可能性”
乗りものニュース
海自「最古のイージス艦」いよいよ後継艦を本格検討へ 今や“先代の戦艦”を上回るベテランに
海自「最古のイージス艦」いよいよ後継艦を本格検討へ 今や“先代の戦艦”を上回るベテランに
乗りものニュース
まさか自社の“伏線”!? 「隣の鉄道会社の甲種輸送」動画でバズった私鉄、「御社もですよね…?」 車両置き換え計画を聞いた
まさか自社の“伏線”!? 「隣の鉄道会社の甲種輸送」動画でバズった私鉄、「御社もですよね…?」 車両置き換え計画を聞いた
乗りものニュース
400mの直線に怒涛の「止まれ」標識…なぜ? 常識覆す“北関東の奇道”が生まれたワケ
400mの直線に怒涛の「止まれ」標識…なぜ? 常識覆す“北関東の奇道”が生まれたワケ
乗りものニュース
三胴船「ピエール」引き渡し完了 近未来デザインの“問題児”インディペンデンス級 最後の姉妹艦
三胴船「ピエール」引き渡し完了 近未来デザインの“問題児”インディペンデンス級 最後の姉妹艦
乗りものニュース
旧海軍の本格的な激レア4発爆撃機「連山」の“風防ガラス”を実見 場所は“群馬”…なぜ?
旧海軍の本格的な激レア4発爆撃機「連山」の“風防ガラス”を実見 場所は“群馬”…なぜ?
乗りものニュース
原子力潜水艦「アスチュート」“史上最長”の初期配備を終え改修へ 15年は異例の長さ? 素直に喜べないワケとは
原子力潜水艦「アスチュート」“史上最長”の初期配備を終え改修へ 15年は異例の長さ? 素直に喜べないワケとは
乗りものニュース
陸自の「無人車両」今から“開発”するの!? 迫るタイムリミット 技術的にも“海外製をそのまま導入”がベストなワケ
陸自の「無人車両」今から“開発”するの!? 迫るタイムリミット 技術的にも“海外製をそのまま導入”がベストなワケ
乗りものニュース
海自史上「空前絶後の巨大戦闘艦」のレーダー納入完了! 日本への搬入前に性能試験実施へ 肝心の性能は?
海自史上「空前絶後の巨大戦闘艦」のレーダー納入完了! 日本への搬入前に性能試験実施へ 肝心の性能は?
乗りものニュース
是が非でも性能アップだ!「心臓」変えて名機になった日独の戦闘機たち
是が非でも性能アップだ!「心臓」変えて名機になった日独の戦闘機たち
乗りものニュース
「”トンデモない飛び方”する破壊的設計の超巨大飛行艇」その驚愕の全貌って? 開発終了が発表…幻に終わったそのコンセプトとは
「”トンデモない飛び方”する破壊的設計の超巨大飛行艇」その驚愕の全貌って? 開発終了が発表…幻に終わったそのコンセプトとは
乗りものニュース
ご近所さん乗ってた!「レトロ自動車」なぜ消えた? バブル崩壊後に大ブーム きっかけは“巨大テーマパーク”の作業用
ご近所さん乗ってた!「レトロ自動車」なぜ消えた? バブル崩壊後に大ブーム きっかけは“巨大テーマパーク”の作業用
乗りものニュース

みんなのコメント

4件
  • kqv********
    ハイドロビンゴは昨年春に横浜で遊覧船やっていたけど注意書きとしては水素燃料では動いていませんときたもんだ。
    まあ水素ステーションも補給もできない状況でなぜ横浜まで持ってきたのか不思議だが。
    つまり通常の油を使ってエンジンを動かしていたって事だ。
    混焼だから水素0でも普通に動く。
    はっきり言ってこの手の水素エンジンのフェリーは流行らない。
    あまりにも水素が高すぎて混焼すら難しい。技術的問題より経済的問題が解決しない。
    それと水素でエンジンを動かすと猛烈にNOxを排出する。
    このハイドロビンゴの場合、ほぼエンジン室と同じくらいの体積の触媒コンバータを必要としている。これは非常に高価なものだ。
    水素も高価、水素タンクも高価、その他船内外の付帯設備も高価と来ては船代が通常の2,3倍になっても不思議ではない。
    エンジンだけは比較的安く作れるが単にそれだけのこと。
    これで流行ると思うほうがどうかしている。
  • tak********
    WIND HUNTERとかああいった水素つくっちゃうぞ船とセットで動かすんだろうなぁ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村